吸血鬼商人は突然現れた異界のダンジョンを足がかりに稼ぎまくる! ~目指せタワマンオーナー! のはずが、凶悪聖女のモンスター退治に巻き込まれて先に墓標を立てる羽目になりそうです!?~
第47話「おまけ スタミナ弁当で稼ぎまくる」
第47話「おまけ スタミナ弁当で稼ぎまくる」
テレッテテテ♪ テレッテテテ♪
3分で料理が出来そうなメロディが流れる。
「はいっ! 伊東屋店主の伊東エリックと――」
にこやかな表情のイケメン。日本人離れした英国的な顔立ちからは想像できないほど流暢な日本語で挨拶する。
「アシスタントの黒須
正反対に純日本人的な顔立ちの美少女はむすっとした表情で、まるで嫌々行っているかのような面持ちであった。
「さて、本日は伊東屋特性、スタミナ豚キムチ弁当を作っていきたいと思います。用意する材料はこちら」
豚バラ肉(1パック)、キムチ(豚肉と同量)、玉ねぎ(1/4)、にんにく(適量)、それから調味料(塩、砂糖、ごま油、マヨネーズ)。
「それから、伊東屋のスタミナ弁当は、煮卵と漬物それからナムルがつきます。ご飯はもちろん大盛です! 本日は豚キムチの作り方だけ説明させていただきますね」
「煮卵と漬物、ナムルは出来たものがこちらです」
テーブルの上に、トントントンとすでに出来上がった三品が置かれていく。
「さて、ここから豚キムチを作っていきましょう」
「まずは豚肉に下味で塩を振ります。全体にしっかりと味をつけてください。
次に、玉ねぎを1㎝くらいに切ります。これは俺の好みなんですが、玉ねぎはシャキシャキよりしっとりしている方が好きなので、電子レンジにかけちゃいます」
「はい、そうしたものがこちらになります。アタシはシャキシャキの方が好きなのでモンスターの趣味は理解できないわね」
ホリィはしぶしぶ電子レンジにかけられた玉ねぎをテーブルに置く。
「それでは、豚肉を焼いていきます。あまり動かさないで焼き目をつけていきますね。そして玉ねぎを投入。本来は玉ねぎに火が通るまで炒めていきますが、先に電子レンジで柔らかくしているので、軽く炒めるだけでオーケーです。さて、豚肉、玉ねぎ共に焼き目がついたら、キムチを投入! このキムチは伊東屋特性のものですが、ご家庭で行う際には甘めの国産キムチをオススメします」
エリックはこなれた手つきで全体を絡めていく。
「さらにここに、さらに甘みを加える為に砂糖を一匙。それとおろしにんにくを入れます。半欠け程度でも充分ですが、スタミナ弁当を売りにしているうちではたっぷり入れます」
「ずっと気になっていたけど吸血鬼なのに、にんにくが好きってどういうことなの?」
「ん? ああ、にんにくが苦手っていうのは、吸血鬼は鋭敏な五感を持っているから、たまたま伝承に残ったのが嗅覚特化だったんでしょ。そういう点で言えば、俺はぶつぶつと読まれるお経みたいのは眠くなって苦手だけど」
「そう。次の戦いでは試すわね」
「やめれっ!」
「ほら、伊東屋さん、お肉を見てなくていいのかしら?」
「あっとと、ここで隠し味にマヨネーズを入れて、汁気がほんの少し残る程度になったら火を止めます。これを盛り付けて完成っ!」
「さて、それでは実食。アシスタントのホリィさん食レポお願いします。俺は洗い物もしておきます」
「洗い物? あとでいいんじゃないの?」
「いやいや、料理は片付けまで含めて料理だからねっ。美味しい料理を作っても台所がぐちゃぐちゃの状態じゃ、家なら食欲無くすでしょ!」
「まぁ、一理あるわね。じゃ、アタシは遠慮なく食べさせてもらうわ」
ホリィはお皿に盛られた豚キムチと白米。
それぞれの香りが鼻孔をくすぐる。
「う~ん。キムチとにんにくの香りもいいけど、白米のなんとも言えないほんのり甘みを感じる匂いもいいわね」
「さすがホリィ、お目が高い。この白米は亡鋳半島で作られた長狭米! こしひかりの品種改良されたお米で、心地よい噛み心地と適度な粘り。そして素晴らしい香りが特徴なんだ。さらに冷めてもおいしいという正にお弁当向きの素晴らしい品種なんだ」
「急に宣伝になったけど、大丈夫なわけ?」
「ん? 規約とか?」
「いや、頭とか」
「そこは大丈夫だよっ! 仮に頭が大丈夫じゃなかったらほぼホリィの所為だからなっ! 思いっきりぶん殴りやがって!」
「アタシは過去のことは振り返らないわ!」
「めちゃくちゃ、リベンジしようとしていたよねっ!」
「それより、冷めても美味しいかもしれないけど、温かいうちに食べたいのだけど」
「くっ、ド正論だ。どうぞ召し上がってください」
「いただきます」
ホリィは豚キムチを一口。
「こ、これはっ!! 辛すぎないキムチ、それどころか甘みが引き立ってコクを強く感じるわ。美味しいけれど、これは脇役! あくまで白米を引き立たせる脇役に徹している!! まるで、アタシと伊東エリックのようねっ!!」
しっかりと感想を言ってから白米を掻き込む。
「くっ、今まで、吸血鬼の店だから不買運動してたけど、これは考えを改める必要がありそうね」
あっという間にホリィは完食する。
「ふぅ、満足。満足。ごちそうさま」
「おそまつさまでした」
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