吸血鬼商人は突然現れた異界のダンジョンを足がかりに稼ぎまくる! ~目指せタワマンオーナー! のはずが、凶悪聖女のモンスター退治に巻き込まれて先に墓標を立てる羽目になりそうです!?~
第25話「クイーンワイバーンで稼ぎまくる?」
第25話「クイーンワイバーンで稼ぎまくる?」
自衛隊はゴブリンを再び半殺しにし、その後のワイバーンも殺し切ると、ホリィとエリックに合流する。
「お二人ともご無事でしたか」
峰岡少尉は民間人を守れたことにホッと胸を撫でおろす。
「それでは、ここから撤退し、人質の安全を確保させてもらいます」
峰岡少尉が敬礼をした瞬間、
「がぁああああああああああっ!!」
咆哮が木霊する。
その圧は、今し方倒したワイバーンの比ではなく、強大なものとしか言いようがない、何かであった。
「ふ~ん、やっぱりまだ何か居たのね。でなきゃ、伊東エリックがあんなに慌てて逃げるはずがないものね」
ホリィはハンマーを肩に掛けると、くるりと180度回転し、峰岡少尉に背を向ける。
「ほら、自衛隊は自衛隊の仕事をしてよ。アタシは聖女の仕事をするからさ」
「いえ、聖女さまを見捨てるなんて出来かねます!」
「アタシは命の価値ってやつは皆等しく同じだと思っているのよね。アタシの命ひとつも峰岡少尉の命も、それに人質になっていた人たちの命も等しいのよ。なら、少しでも多くの命が残る選択を取るのが聖女じゃないかしら?」
その瞳には覚悟の光。
その光に真っすぐ見つめられた峰岡少尉は再び敬礼してから、「ご武運を」と述べてから、撤退の準備に入った。
「いや、ちょっと、待って! なんで、俺のこと掴んでんの。離す気ないよね!! 俺を巻き込まないでくれっ!! 俺も撤退するんだよっ!!」
「伊東エリックあんたはアタシと来なさい。肉の壁くらいにはなりそうだし」
「命の価値は等しいんじゃなかったのかよっ!! はなせー」
「モンスターの命の価値は別でしょ?」
「真顔で言うな! マジみたいで傷つくだろっ!!」
何を言っているの? 冗談なんか言っていないのに? とでも言うように、小首を傾げる。
しかし、その手はエリックを離すことなく、そのままズルズルと引きずっていった。
「くそっ! 離せっ!! 何がなんでも逃げてやるっ!!」
吸血鬼の膂力を持ってしてもホリィの拘束から逃れることはできない。
単純な力だけなら確実に優っているにも関わらず、その力の方向を上手くいなされ、その場でごろごろ、じたばたと転がるだけで終わってしまう。
純然たる技術の差で負けていた。
「くそーー」
もはや諦め半分にぐったりとしているエリックを荷物が軽くなったな。くらいの気持ちで持ち直してから、階段があった祭壇へ向かう。
そこに目的があると分かったのはエリックと飛竜が現れたポイントであったから。
そうでなければ、ここを自力で探し出すことはホリィには出来なかったであろう。
そんな敗北感に内心軽く、ほんの少しだけ苛立ちながら、まるでその怒りをぶつけるようにハンマーを振り上げ、祭壇の瓦礫を叩く。
祭壇の瓦礫をハンマーで砕き階段を掘り起こすと、ホリィとエリックは10階へと足を踏み入れた。
※
「ぐるるるるうるるうるっ」
怒り狂っているのか、はたまた腹を減らしているのか?
そんな呻き声が10階に上がるなり聞こえてくる。
ホリィははるか先でも見える巨大なワイバーンを目にすると、フッと笑みを浮かべた。
「そんなところに鎮座して、ずいぶん大物気取りね。でも、あんたの仲間は全員死んだわよ。もうあんたを祀り上げるやつなんていないけど」
意味が理解できるかはさておき、ワイバーンに空中から攻撃されるのが一番厄介。愚直に向かって来てくれれば勝機はあると踏み、あえて、挑発するようなセリフを述べる。
その瞬間、巨大なワイバーンはまるで女王のように、見下したような冷徹な瞳を向ける。
次の瞬間、一陣の風が吹いたと思ったら、ホリィが掴んでいたはずのエリックが、襟元の衣服とわずかな血痕を残して消え去った。
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