第19話「自衛隊の技術で稼ぎまくる」
後ろに下がっていて良いとは言われたが、モンスターを感知できるエリックは3Fでは指示を出そうと思っていた。
「あっ、ここは俺が――」
しかし、エリックの申し出は峰岡少尉に制止される。
「大丈夫です。この階のモンスターの波長は計測済ですので」
先頭の隊員が何やら計器を出すと、その計器の画面にモンスターの位置が点で映る。
「これは?」
「ソナーです。ソナーとは音波によって物体を探知する装置のことです。それで木々とモンスターを見分けています」
「あ、ああ、なるほどね」
エリックの判別方法も同じであり、なんとなくお株を奪われたような気分になる。
これにより、難なく3Fを超え、4Fへ。
実はエリックはここが一番心配していた。
いままでも、ダンジョンに軍隊が参加することはあったが、ここの4Fで音を出さずに進軍することができず、いつの間にか、ダンジョンは少数精鋭が基本となっていた。
しかし、日本の自衛隊はそれすら苦にせず、
「皆さんは少し下がっていてください」
三名の隊員が一歩前へ出る。
その背中にはボンベのようなものが担がれており、手にはそのボンベに繋がったホース。
そして、そのボンベの中身を噴霧した。
白い煙が立ったかと思うと、泥で満たされた地面が凍っていた。
「もしかして、中身は」
「はい。液体窒素です。泥の中を進み、泥で攻撃するのならば、そもそもその泥自体を無くしてしまえばいいと言うのが、我々の出した答えです」
液体窒素を噴霧しながら、自衛隊は事も無げに進んで行く。
あっという間に5Fへとたどり着き、爆殺されるオーガを尻目にどんどんと進む。
6Fで休憩し、さらに7Fも問題なく進む。
そして、ついに8Fであった。
全滅させたと思っていても、なぜか次に入るとモンスターは復活している。8Fのロック鳥もその例に漏れず、最初にエリックたちが訪れたときよりは少ない数だが、それでも宙を自由自在に飛び回る怪鳥が数羽見える。
さすがにここはホリィの出番かと思っていると、やはり峰岡少尉に手で制止され、その後に黄色のビニールを渡される。
「そちらを被ってください。ロック鳥の死体から、その視界がカラスに近いことが分かりました。カラスは紫外線で物を見るので、紫外線を遮断する成分が多い黄色を視認することが出来ないので、ゴミ袋を黄色にする自治体があるのはご存じですか? ロック鳥にもそれが応用できるのではないかと。まだ理論上だけでしか安全が認められていませんので、我々が先行します。もしもの場合のみ、聖女様、援護をよろしくお願いします」
数名ずつ、ロック鳥が飛び交う中進んでいくが、誰に対してもロック鳥が気づくことはなく、難なく進んで行く。
「あ~、マジか……。人間凄すぎだろ」
後進のため、色々と試し、その結果羽根が有効打になるところまで突き止め、てっきり対応策も羽根を使った武器になると思っていたのに、さらにその上の対応策を打ち出してくる人間に、素直に驚嘆の声をあげる。
(いち早く帰って、黄色のビニールをロック鳥対策として売り出せば儲けられそうだよね。やっぱ人間は敵に回すより、共存した方が賢い選択だな)
エリックはダンジョン吸血鬼の顔を思い出し、自身の選択は間違っていなかったと、満足そうにニヤリと悪魔のような笑みを浮かべた。
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