第15話「アイスで稼ぎまくる?」
「ところで、伊東屋さん。ゴブリンの件ですけどぉ」
シスター、フランの言葉にエリックは耳を傾ける。
「自衛隊はきちんと出動することになりましたが、装備を整えたりするのに、1週間ほど掛かるみたいですよ~。ロック鳥の研究結果も見てから対策を立てるといっていましたから、もしかするともう少し時間が掛かるかもしれないですねぇ」
「なるほど。と、なると、先に吸血鬼を探すことになるのかな?」
「ええ、そのつもりで私たちは今日、こうして出歩いていたのよ~」
しかし、そういうフランの手にはショッパーの袋がいくつも握られ、充実した買い物をしてきたことが伺えた。
「あっ、伊東エリック。あんたさっき財布貰ってたでしょ。アタシに千円ちょうだい」
「咎めないのかっ!? まぁ、お前のおかげが大きいから千円くらい良いけど」
エリックは不良共から貰った財布から千円をホリィへと渡す。
「そりゃあ、咎めないわよ。だいたい、あいつら、アタシのアイスクリーム3段重ねを落としたのよ! コーンはカントリちゃんにあげる予定だったのにっ! 財布くらい正当な要求だわっ!」
「食べ物を粗末にするとか、そりゃあ、万死に値するなっ!!」
エリックはさらに千円を追加で渡し、「3段どころか、5段でも6段でも買って来いっ!!」
「あんた、吸血鬼のくせに、なかなか話が分かるわねっ!」
ぐっと親指を立ててホリィはほほ笑んだ。
そのまま、子供のようにアイスを求めて走り去っていく。
「すみません。あんなでも、鋭いところがあって、なんとなくでモンスターを見つけられるのよ」
フランはまるでお母さんのように頭を軽く下げる。
ホリィの勘はすさまじいことはすでにエリックも体験済で、初対面のエリックを吸血鬼であると断じた。
その力があれば、街にいるモンスターを炙り出すのは、そう難しくないだろう。
今は、その力がグレイや他の知り合いに及ばないことを祈るしかない。幸いにも吸血鬼にしかその興味はないようで、自分さえ矢面に立てばなんとかなるかもしれないとエリックは考えていた。
「で、話を戻すと、グレイからの調査で進展は?」
「それが、まだみたいねぇ。こっちでも調査はしているのだけど、どうやら、あの吸血鬼は狡猾みたいで、尻尾を掴ませないのよねぇ。聖子ちゃんにも捉えられないっていうことは何かあるのかしら?」
「もし、何か紛れる方法があるなら、それはうちのグレイの方が適任かもしれないですね。お互い、もう少し様子を見ましょうか。この様子だとゴブリン攻略と10F攻略の方が早いかもしれないな」
「そうね~。とりあえず、動きがあり次第、随時行動ってことでいきましょ」
そうして、エリックは聖女たちと別れる。
無理矢理運動させられた嫌な疲れもあり、エリックは早々に帰宅すると、グレイに呼び止められる。
「エリックさま、こちらを」
手渡されたのは紙の資料。
普段ならば、グレイは紙代が勿体ないとiPadで見せてくるのだが。
不審に思いつつ、その資料に目を通していくと、
――ぐしゃり!
紙の資料は丸く潰された。
iPadなら確実に壊れていたであろう。
「ダンジョンの吸血鬼がここまで俺をコケにしてくるとはっ! これは聖女たちに任せる訳にはいかないね。なぁ、グレイもそう思うだろ?」
「ええ、我らだけでケリをつけてもよろしい案件かと」
ゴミと化した、書類の一部には、『伊東屋を語り、女性を襲っている可能性が大』と書かれていた。
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