死は思いがけないものでは決してない。人々の間に、この死を予見しないものはいない、死は必然であるから。死は外界から侵入してくるものでは決してない。死はわが内界に宿るものである。だからいつ死ぬかはいつまでも解らない、と唱える人は、どこまでも外周にみずからをつなぎ止めて、そこに自分を閉じ込めて、自分の内界を知ろうとしないのである。

 死は、それが異常なものであれば、我々はいつまでも死ぬことはなかっただろう。死はつねに平凡で、よく私たちことを知っていて、それでいて純粋で罪のない存在だ。

 死はどこまでも普通な存在であって、私たちの身の回りどころか、ひとしきり私たちの内面に、それこそ唯一の幼なじみとして住み着いているものだ。だから人間は、最後は自分のアイデンティティを死に求めることができるんだな。

 平和平和と名号でもないのに空しく唱えるけれども、真の平和というのは死を離れては存在できぬ。自分の内面から逃げ出したなら、そこに平和は無い。

 死を疎外し、異質なものとして見ることがすべての誤謬のはじまりかもしれない。そこに平和はなく、こういう人々を、ただ争いが笑い飛ばしているだけである。

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