39,やり直しのクラス投票日
四聖によって教室にできた魔界ホールが閉じられた翌日、延期されていたクラス投票が行われることとなった。
投票日の昼休み、私は隣の席に座るマリにこんなお願いをした。
「マリ、私のために票を合わせるの、やめてほしいの」
「どういうこと?」
マリは、予想外の私の言葉に驚いた様子だ。
「私、別にムラタ君に特別な感情はないの」
「前回、ムラタ君に投票したのに?」
「うん。あれは、レン君が一位にならなければいいなと思って投票しただけ」
「ふーん」
マリは何かを考えている様子だった。しばらくして目を輝かせてこう言った。
「つまり、ムラタ君に入れたのは、レン君とミチカが一緒になるのを阻止したかったというわけね!」
「……」
「そうなんだ。やっぱりそうなんだ。なるほど、アオイはやっぱりレン君のことを……」
「もう、変な勘ぐりはやめてね」
私は照れかくしにそんなことを言う。
「だから、もう、票を集めるようなことは止めてほしいの」
「わかったわ」
マリは楽しそうにこう付け加えた。
「わかったから、あとは私にまかせておきなさい」
「まかせるって、どういうこと? 票合わせなんか良くないし、そんなことを止めてもらいたいんだけど」
「わかったから、まかせておきなさい!」
マリはそう繰り返すと、こんなことを言ってきた。
「でもね、そうなると男子選びは簡単だけど、女子の方は難しいわよ」
いったいマリは何を言っているのだろうか。
私はぽかんとしながら彼女の言葉を聞いていた。
「女子はどっちが選ばれるか、私でもつかみきれていないのよ。アオイかミチカか、どっちも人気なのよね」
私が……、人気? 学校で一番美人で勉強のできるミチカとはりあっているというの? まさか、そんなことあるはずがない。
まあ、確かに雷魔法でみんなを驚かせたけど、それだけで票が集まるなんて思えない。今回も、レンとミチカが一位で決まりのはずよ。
そんなことを考えていると時間はあっという間に過ぎ、クラス投票の行われる放課後はすぐにやってきた。
今回票をまとめるムラタが教壇にのぼる。
「さあ、今から投票用紙を配りますね」
ムラタはそう言うと、手際よく用紙を前列の席の生徒に渡していく。受け取った生徒が用紙を後ろへと回していく。
「今さら必要ないかもわかりませんが、一応ルールの確認を」
ムラタはそう言うと、生徒たちを見渡した。
「男子は自分の一番好きな女子の名前を一名だけ書いてください。女子はその逆で、好きな男子の名前を書いてください。今回の男女一位は、魔法のじゅうたんに乗り、みんなの前で浮遊術を使って飛んでもらいます」
ムラタの説明を聞き、生徒たちがざわつく。
「さあ、ここから私語は禁止です。名前を書き終わった人から投票箱に用紙を入れてください」
教室が静まり、生徒たちが用紙に名前を記入しはじめた。
私も机の上に用紙を置き、シャーペンを握った。
誰の名前を書くかはもう決めている。
そっと離れた席に目を向ける。
そこには右腕に包帯を巻いたレンが座っている。
昨日、私を助けようとしてくれたレン。
別にミチカが一位になってもいい。
私は、素直に自分の一番好きな男の子の名前を書くだけよ。
自分の筆跡で、用紙に『レン』と記入する。そしてその用紙をきれいに二つに折り曲げた。
席を立った私は、迷うことなくその用紙を投票箱に入れたのだった。
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