25,クロコロ
放課後、私はいつもの通り、魔法研究室に向かった。特待生に推薦されることになったことをアキコさんにも報告しなければ。それに、これからも、もっと魔法のことを教えてもらいたいし……。
研究室のドアを開ける。
期待通り、そこにはアキコさんの姿があった。
「アキコさん、私、特待生に推薦されました! 次のテストで算数を60点取ることができれば、これからも魔法を続けられそうです!」
「うん。私もさっきトノザキ君から聞いたところよ。よかったわね」
「これも、魔法を教えてくれたアキコさんのおかげです。これからも私にたくさん魔法を教えて下さい」
「ほんとアオイちゃんは、魔法が好きなんだね。だけど、特訓は今日で終わりにしましょう」
「えっ、終わりですか?」
「そう。私もそろそろ本業に戻らないといけないから」
本業?
そういえば聞いていなかった。
アキコさんは何をやっている人なんだろう?
四聖の一人だと言っていた生徒もいたけど……。
「アキコさんの本業って何なんですか?」
「うん、地球に結界が必要なのは知っているわね」
「はい。結界のおかげで魔界から魔物が入ってこられないんですよね」
「そう。その結界をはるお仕事のお手伝いをさせてもらっているのよ」
「結界をはるお手伝い……」
結界って確か、四聖が力を合わせてはっていると聞いたことがある。
じゃあ、やっぱり……。
「結界をはるって、やっぱりアキコさんは四聖の一人なのですか。四聖のアキ様なんですか?」
「またその話ね。違うわよ。私、四聖のそっくりさんだからよく見間違われるの」
そう言うと、アキコさんはすぐに話題を変えてきた。
「でもね、最近その結界を抜けてくるのか、クロコロがよく現れているのよね」
クロコロ、もちろん知っている。
人間の形をした真っ黒い魔物で、大きさは子犬くらい。見た目は可愛いんだけどけっこうどう猛で、鋭いキバを隠し持っている。そのキバで噛まれると大けがをするし、中には命を失う人もいるくらい危険な生き物。
「クロコロに出会ったらとにかく逃げるのよ」
「はい」
「けれど、逃げきれずに、もしクロコロが襲ってきたら、その時はもう追い払うしかないから」
「追い払う?」
魔法学校でもクロコロのことはよく聞かされている。先生たちからはとにかく逃げろとしか言われていない。追い払う方法なんて聞かされていないけど。
「クロコロを追い払う方法なんてあるのですか?」
「うん、クロコロは雷が苦手なの」
それは聞いたことがある。
雷の鳴る日は、絶対にクロコロは現れない。ということは……。
「そうよ。クロコロには雷魔法が有効なのよ。クロコロが襲ってきたら、雷魔法をあててやるといいのよ。そうすると、そのクロコロはびっくりして魔界まで逃げ帰っていくから」
雷魔法をあてる……。
「でも私、そんなにすばやく雷魔法を打つことなんてできません。クロコロが襲ってきている間に、すばやく雷魔法なんて使えません」
「そうよね。だから基本は逃げること。でもね、それでもクロコロが襲ってきたら、まず氷魔法でクロコロの動きを止めなさい」
「氷魔法で動きを?」
「そうよ、少しの間なら氷魔法でクロコロの動きは止まるの。その間にもう一度雷魔法でクロコロを打てばいいのよ」
そんな難しいこと出来っこない。
超難度の氷と雷を一人で連続で打つなんて。そんなこと、私にできるわけない。
もしクロコロに出会ったら、やっぱり襲われないように逃げるしかないわ。
私はそう思ったのだった。
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