第5話 シノとアルベルト
「んー・・・・・・・・」
六花はベッドの中で寝言のような声を上げていた。ちょうど手頃な大きさの抱き枕のようなものを抱えた彼女は、顔を一際柔らかなその部位に押し当てる。
「むふー・・・・・・くさいよぉ、くさくていいにおいだよぉ・・・・・・・・」
鼻をくすぐる香ばしいかおりに、思わず笑みをこぼす六花。彼女にとって癖になる臭いが鼻腔を刺激しているのだ。鼻を包み込む柔らかな感触、その二つのものの間に溜まり込んだ汗の薫り、その中に感じる微かな石けんの匂い、そして有無を言わせず脳を痺れさせる何か・・・・・
「・・・・・・・ふぇ?」
と、ここまで脳が知覚したところで六花は意識が覚醒し始めた。抱き枕にしては抱き心地にむらがあるし、こんなに生暖かい訳がない。それにこんなに生々しい汗の臭いなんかするはずが無い。そして目を開けると・・・・・・むにゅっとした巨大なおっぱいが目の前に飛び込んで来た。
「ふぇ、ふぇええええええええ!?」
「・・・・・・っはぁ、やっと離してくれた」
飛び起きた六花が叫び声を上げながら思いっきり後ずさりすると、ベッドの上には六花以外にももう一人の人物がいた。
あどけない顔立ちに眠たげな目、つややかな黒髪をポニーテールに結わえた彼女。その肢体は豊満であった。黒のセーラー服に白のマフラー、そして黒のミニスカートに引き締まった脚をタイツが包んでいる。さらにそのセーラー服を内側から大きく押し上げている凄まじいバストに、きゅっとくびれたウエスト、一転してはち切れんばかりにプリッと丸く大きなヒップ。特に大きくたわわに揺れる二つの大きな山は白いマフラーと黒いセーラー服の襟の間からチラリと見え、深々と刻まれた谷間を強調して見せていた。
彼女の名は「シノ・アルルシャール」。同じく「転生者殺し」の第三作戦部隊の隊長を務めている。余りにもその扇情的な容姿故に、男共はおろか女性であっても思わず見とれてしまうほどだった。恐ろしいことに、これでまだ13歳である。早熟なのか、まだ限界を知らないのか。
そして彼女は顔を真っ赤にして、豊満な胸をかばっていた。
「・・・・・・びっくりした。もうちょっとで会議の時間だったから起こしに来たんだけど、寝ぼけた六花ちゃんに引きずり込まれたの。ずーーーーーーっと匂いかがれて、気が狂うかと思った」
「ごめん!完全に寝ぼけてた!!」
六花はどうやら無意識のうちにシノの豊満な乳房に顔を埋め、その谷間に充満した臭いを堪能していたらしい。少々控え目な性格のシノのことなので、起こすに起こせなかったのだろう。
「はーやばい、余りに疲れてたから思いっきり寝込んじゃった」
「・・・・・・確かベニダイショウの卵を解凍してたんだっけ、なんでそんな事をしてたの?」
「それは今日の会議で伝えるわ」
六花はシノのおっぱいにむしゃぶりつきたい衝動を抑えながら、机の上に散乱した資料をまとめた。
「おまたせ、それじゃあ行くわよ!」
「・・・・・・うん」
こうして乙女二人は部屋を後にした。
二人が会議室に脚を踏み入れると、すぐさまとんでもない大音声が二人を襲いかかった。
「二人とも、遅かったでは無いか!!」
「「!!」」
声がしたのは扉を開けたすぐ先の、なぜか足下からだった。見ると170センチを超える長身の少年がやたら爽やかな笑顔で寝っ転がっているのだ。
「全く、シノ君が起こしに行かなければ起きなかっただろう?ならばその罰として、ぼくの顔にお尻をのせげぶんちょ!?」
「乗せるわけ無いでしょ!!この変態が!!」
六花は顔を真っ赤にして少年の顔を思いっきり踏んづけた。
「第二作戦部隊隊長殿、もう少し立場をわきまえて行動しろよ。うちのロゼのパンツも覗こうとしやがって。」
「ぱんつのぞくなんて、最低です・・・・・・・」
「ぬぅっ!!何という辛辣な評価!!だがしかし、それも致し方ない!!ぼくは紳士だ!!その言葉を甘んじて受け入れよう!!」
「(・・・・・・・・・本当にうるさいわね)」
六花は既に頭が痛くなっていた。
少年の名はアルベルト・ゼッケンドルフ。「対転生者特別防衛機関 本部」の総帥エミリアと「対転生者特別防衛機関 総合研究所」の所長ネロの息子だ。
端整な顔立ちに赤みがかった癖のあるブロンドをなでつけている。特徴的なのはその体格で、年齢は六花の2つ下の12歳なのだが、既に身長は170センチもある。甲冑の分も考えると「大柄」と言うより「長身」と表現する方が適切なのだが、それでも体格に優れているのは間違いない。総じて大変容姿に恵まれていると言って良い。
・・・・・・・なのだが、ご覧の通り非常に性格に難のある人物なのである。兎に角自分の性欲に従順で、今のように女の子のパンツを覗こうとするのは日常茶飯事、さらには何かにつけて更衣室や風呂に同行したがり「ぼくもいいかな!?」と聞くのはもはや定番である。
幸い「やあ!!下から失礼するよ!!」と言って毎回腕組みした状態で仰向けにいるので大変わかりやすく、しかも女の子にあくまで「同行したがる」というスタンスのおかげで、被害自体は全く出ていない。要するに言動がアレなだけで実行に移さないところは妙に紳士的なのだ。
「まあ、そろそろ本題に入るわよ。待たせちゃってごめんね」
そして一同は会議室の席に着き、壁に貼られたガラス板に目を向けた。そこには
「ネオジム樹海 アルゴン川の水抜き事件について」と表示されていた。
「これより、表題の件について会議を始めるわ」
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