第一章 鋼沢哲也「鍜治屋転生 ~スキル”鍜治屋”の俺は貴族を追放されたが、別に問題は無いのでスローライフを送ることにしました~」
第1話 任務開始!
この世界には人類が治める「天界」と魔族が治める「魔界」の二つの領土で分かれている。
天界は太陽の光が差し、穏やかな気候が目立つのが特徴で、人間にとっては非常に生きやすい環境である。逆に魔界は極端な気候が多く、極寒の土地の隣に灼熱の土地があることなどざらで、人間には非常に生きにくい環境である。
そんな天界の中でも最も大きな国家、それがナーリャガーリ大帝国だ。この王国には様々な「世界最大級」が集まっており、「天界で最も繁栄している国」という事実を裏付けている。
その「世界最大級」の一つに、冒険者ギルド「エンデ」がある。この世界にある無数の冒険者ギルドの総本山であり、最も権力を持つ拠点になっている。有事の際には迅速に人員の手配を行ったり、無用な殺生を避けようとするなど、モンスターと人類の繋がりをコントロールする重要な役割を担っている。
そしてそんなギルドの本拠地である「エンデ」。その一角に「対転生者特別防衛機関」、通称「転生者殺し」が設けられているのだ。
「エミリア総帥、お呼びでしょうか」
「ああ、良く来てくれた」
厳かな雰囲気でエミリアは立花に告げる。エミリアはこの「対転生者特別防衛機関」の総帥を務めている。右目を覆う眼帯と右半身を中心に広がる薄紅色の特徴的な模様が彼女の力強さを感じさせる。しかし驚きなのが、これで子持ちなのだ。齢35の彼女だが、経産婦であることを感じさせない。
父親の話を聞く限り、エミリアの右目は世界の崩壊「ラグナロク」が引き起こされた際に、その元凶となった異世界人にやられたのだという。本来なら「転生者殺し」の保有するテクノロジーで義眼を付けることが出来るのだが、どうやら彼女は敢えてそれをしないらしい。なんでも「自前以外の感覚神経をつなぐと、神経操作系やジャミング系の相手をしたときに大変なことになるから」「そもそも自分の能力と相性が悪い」らしい。
「今回の任務だが、“バイメタル地方”一帯に起きている災害について調査を行って欲しい」
「“災害”?」
六花はその言葉に首をかしげる。
「そうだ。この地域一帯に流れる川の水量が減り、これによって作物の育成に影響が出ている。このままでは食糧難に見舞われる可能性が高く、大規模な被害に発展する恐れがある。よってこの件について調査を行い、解決へと導いてくれ」
「水量の減少・・・・・それって、原因はわかっていないんですか?」
「ああ。その原因究明のためなんだが・・・・・その水源があるはずの森林地帯で“ベニダイショウ”が目撃されている。それも沼地から離れた場所でな」
「ベニダイショウ!!」
ベニダイショウとは紅い鱗を持つ大蛇で、その長さは成体で数十メートルに及ぶとされている。その巨体に似合わず非常に瞬発力に優れ、下手な冒険者では一瞬でディナーになってしまうと言われている。
そしてそれは大型の魔獣相手であっても容赦なく牙を剥く。その筋肉の塊である長い肢体を相手に巻き付け、容赦なく締め上げるのだ。そうして獲物を窒息死、時には締め上げたときの圧力で圧死させた後おいしくいただくのだ。牙にも熱毒をもっており、噛まれれば負傷箇所から全身に燃えるような痛みが広がり、数時間もしないうちに死んでしまうと言う。
その頂点捕食者として遜色ない実力故、「紅大将」と呼ばれている。
「あんなものが解き放たれているなんて、何があったのかしら・・・・・・」
「そうだな。恐らくその辺りがこの事件の鍵になると思われる。調査してきてくれ」
「わかりました。はあ、これは骨が折れそうですね・・・・・・・」
深くため息を吐いた六花。しかしすぐに姿勢と表情を正し、びしーっと敬礼する。
「かしこまりました。対転生者特別防衛機関 第一作戦部隊隊長、“六花・アイ・インフィニアート”!!これより任務を遂行します!!」
可愛らしくも凜とした声で高らかに告げた。
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