第3話 雨と泉

※泉達が中学時代のお話です


☆登場人物☆

雨宮泉

 中学二年生。穏やかだが,しっかりしている。

和泉馨

 中学二年生。芸能活動をしている。出演した映画がヒットし,テレビにも出演するようになった。イメージカラーは紫。

真宮千影

 中学二年生。芸能活動をしている。出演した映画がヒットし,テレビにも出演するようになった。イメージカラーは緋色。


(本編)

「泉,一緒に帰ろう」

そう言ってくれるのは幼馴染の和泉馨。

「嬉しいんだけど,ごめん。他にも馨と帰りたがってるファンがいるんだから,たまにはその人達と帰ってもいいんじゃないの?それに今日は委員会あるし。」

「え,待つけど?」

「私の事はいいから。」

こんなに馨は優しいんだから,その優しさを他の人に分けてあげてほしい。

私ばかりが貰ってちゃ,馨が損だよ。

きっと,みんなが喜ぶから。


「いーちゃん,馨どこ行った?」

委員会に向かうため,廊下を歩いているともう一人の幼馴染の真宮千影君に会った。

「馨なら,ファンの子たちと一緒に帰ったよ?」

「へぇ~,あの馨が!さすが,いーちゃんだね。」

千影君はありがとう,と一言お礼を言って去っていった。


委員会でのこと。急に3年生の先輩たちに話しかけられた。

「あんた,馨君と千影君と仲いいんでしょ?サイン貰ってきてよ!」

またこれだ。

「ごめんなさい,二人からいけないと言われているので…。」

断るのは何回目だろう。

「は?あんた,あの二人と仲いいからって調子乗ってんの?」

「そういうわけじゃ…。」

「ふーん,あっそ。…覚悟しとけよ?」

覚悟って何?


次の日。

「…なにこれ。」

靴箱にあったのはびしょびしょになった上靴と破かれたノート。

それと…

「雨宮泉ってあの子じゃない?」

「うわ,あの子マジ最低」

ネットで悪口を呟かれていたようです。

私はその場から逃げるように立ち去った。

もう学校はいいや。行きたくない。

やっぱり,私みたいな普通の子が馨や千影君と仲良くしてるのがいけないんだ。

嫌いだなぁ,自分が。

私がもう少し顔が良くて勉強が今よりももっとできるようになって,もっと明るくて,もっと運動が出来たら,きっと皆も認めてくれるはずなのに。


(馨side)

あれ,変だな。泉がまだ来てない。

「千影,泉見てない?」

隣にいた千影に聞く。

「え,来てないの?僕たちよりも先家出てたよね?」

おかしいなぁ。

「靴箱見てくるわ。」

そして,泉の靴箱を見て俺は顔面蒼白になった。

「馨,遅い…って,なに,これ。」

なんで,こんなことになってるんだ?

泉がいじめられてる?

「馨君と千影君!サイン貰っていい?」

あ,こいつらだ。泉いじめたの。

感はいい方だから,なんかわかる。この笑顔の裏に含まれた闇。

「…泉をいじめたのは貴方達ですか?」

「ひどいなぁ。いじめたわけじゃないよぉ?あの子に手出したわけじゃないし。」

は?こいつら何言ってんの?

「…ネットによるいじめ,これ犯罪ですね。スクショしたので提出しましょうか?高校入試,どうなるか分かりませんけどw」

千影がめったに見せない黒い笑みを見せる。

「分かった!全部消す!だからそれだけは!」

絶望して焦る姿をみて,俺もふっと笑った。…泉をいじめた罰だ。

「言っときますけど,あんた達の誹謗中傷は一生あいつの中に残りますよ。どうしてくれるんすか?」

さっきの笑みから一転,真顔で問う。

「…まあ,これ以上,事を大きくするつもりはありません。ネットに呟かれたのが深夜だったのであまり人が見ていないというのが幸いでした。」

泉はこの問題を大きくすることを望まないだろうし,俺たちも大きくなれば面倒くさい話になる。

「…じゃあ,失礼します。次やったら,その時は…わかってますよね?」

奴らは走ってその場を立ち去って行った。

「じゃあ俺帰るわ,今日来たの教科書取りに来ただけだし。」

今夜はホールでコンサートがある。それに泉を探しに行きたい。

「え,馨帰るの?じゃあ俺も帰るわ。いーちゃんに会いたい。」

千影ならそういうと思った。


(泉side)

家に帰るとママに心配されるから,人の少ない川のベンチに座った。

今日帰るまでどうしようかな,と考えていると。

「泉!」

遠くから全速力で走ってくる馨と千影君が見えた。

「二人とも何してるの⁉学校は?」

「何言ってんの,学校より泉が大切だから。」

「え,それはだめなんじゃない?まだ中学生だから学校だよ。」

それもあるけど今日仕事あるから,と付け足した千影君。

「泉,もう大丈夫だから。あいつら,もう明日から何もしないように言ってきた。」

馨と千影君が二人で…。

「二人とも変な笑み浮かべて無かったよね?」

「「うっ…。」」

二人の変な笑みは本当に怖いから!

「もちろん,あの人達も悪いと思うけど,やっぱり,一番悪いのは私だから。私がもう少し…」

ここまで言うと馨に止められた。

「泉はさ,もうちょっと自分のこと考えたら?一に他人,二に自分っていうのはいいことだと思うんだけどね」

「…ごめん。もうちょっと自分を大切にするよ。」

馨に言われたら何も言い返せないなぁ。

「いーちゃん,明日から学校来れそう…?」

「うん。二人のおかげで大丈夫そうだよ。」

今の私ならきっと大丈夫。

「今日これからどうする?」

「「コンサートの練習,付き合ってよ。」」

二人とも,行きぴったりだなぁ。


『一に他人,二に自分』じゃなくて,『一に他人,一に自分』。

今までずっと二人に助けられてきたけど,ずっと一緒にいられるわけじゃないから,一人でも大丈夫なように強くなりたいと思う。


次の日からの学校は今までよりも強い私でいられたような気がする。

                          (完)
























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Revolution Sonata @Nocturne92

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