第13話 



「お前らー。席に着けー」

「う…。くっ」

「ちょっ、まっ」

「席に着け、皆川」


 口論を続けようとする皆川を制す。


「じゃあ、ホームルームを始めるぞ。今日は――」


 まったく、面白すぎる。

 思い出しただけで笑い出しそうだ。

 皆川はもちろん川内とのことなんて覚えてなんかいない。

 彼女の中では本当に起きたかとがない出来事なのだ。

 しかし、川内にとっては実際に起きた出来事。 

 必死に否定し合う2人。

 面白すぎる。


 □


 学校が終わると、皆川から逃げるように川内が学校を出ていった。

 休み時間中もこの二人は口論を続けた。

 煩わしかったの朝の時のことは忘れてもらった。もちろん口論を見ていたクラスメートも。

 さて、帰るか。

 席を立つと皆川が近寄ってきた。


「一緒に帰ろ」

「今日は用事があるんだ」

「何の?」

「それは言えない」

「えー。余計気になるんだけど」

「いいから帰れ」


 強めに言う。

 すると、目からハイライトが消えた皆川が口を開いた。


「わかった。今日は一人で帰るよ」

「わかってくれればいいんだ」


 てくてくと機械的に教室から出ていく。

 その後、俺も教室を出ていく。


 □


 帰路、俺は今日の学校を思い出していた。

 さすがに一日経つと俺のことが噂になっていた。

 悪評だらけだった俺もだいぶ印象が良くなったようだ。主に女子からの。男子からは相変わらず憎まれている。

 別に女子からは憎まれていないとかではなく、印象が良くなっただけだ。

 もちろん誰も口にしていない。俺が勝手に頭を覗いただけだ。




 まったく、そいつもこいつも。俺に、勝てるわけ無いだろッ!!




「しねぇえやぁあ!!」


 後ろから変な仮面をかぶった3人組が俺を襲ってくる。

 この仮面は超能力の対策がされているみたいだ。透視できない。

 この二日で十六夜みたいな貧弱超能力者が俺を襲うことがあるのだ。

 いつ?

 トイレにいるとき、お風呂、etc。とにかく一人の時はほぼ必ず誰かが俺を襲ってくる。

 

「うるせぇな。俺は今日大事な用事があるんだよ」


 用事とはもちろん復讐のことである。

 もしかしたら今は襲ってこないかもしれないなんて甘い考えだったか。

 そう言いながら振り向き顔を確認して、頭の中を覗き、能力を確認する。

 振り向く際、自分の顔が見えないように霧で覆う。

 右の男が超パワーと体を大きくしたり小さくしたりする能力。真ん中の女は妨害経か?確認できない危ないな。お、でも具合がよさそうだ。左は男で時間を遅くする能力だ。

 そして、こいつらは精神的につながっている。 

 つまり、能力を共有している。もちろん元の所有者が使うときの方が強いが他人の能力を使用することが出来るのだ。大幅にパワーアップできる。

 まず最初に、右の男の前に瞬間移動し、頭を握りつぶす。

 本来ならもっと残酷に復讐するが今は時間がないんだ。

 それに唯一反応できた左の男の前に移動して腹に風穴を開ける。

 これで0.001秒。

 人間の限界は0.1秒。男は能力を使って俺に反応することが出来たのだ。

 女は何にも気づかずに俺がさっきまでいたところにナイフを突き出して突っ込んでいく。


「うわぁぁああ!」


 その攻撃なむなしく地面に当たってナイフが折れ曲がる。その0.2秒後、それに気づき後ろ向く。

 そこには仲間の遺体に座っているナイフに突き刺さるはずだった男が座っている。


「え……」

 

 その瞬間俺はその女の仮面を引っぺがす。


「きゃっ」


 その衝撃で突き飛ばされた彼女が後ろに飛んでいく。

 仮面で見れなかった女の顔を見てみると、


「明菜?」

「だ、誰!?近寄らないで!」


 そうだ、こいつらには俺の顔は見えないのか。

 俺は超能力を得てから人間に感情移入をしなくなった。

 家族が死のうとどうなろうと割とどうでもいいのだ。

 むやみには殺さないが、殺そうとしてくるなら別だ。

 それにしても驚いた。明菜が超能力者だったとは。彼女の超能力は身体強化と超能力妨害だ。

 超能力妨害とは俺みたいに誰かの超能力を見分けられる能力持ちの人対策で汎用性が非常に低いが役に立つ能力だ。

 動揺してくれているおかげでうまく超能力が発動していない。

 

「非常に残念だ」


 まったくだ。かわいいブラコンな妹だと思っていたのにな。

 こうなったらヤるしかねぇじゃねぇか。もう、妹として見れない、復讐相手としか見れない。


「やめて、来ないで…。お願い、お願いだって。お願いって言ってるでしょ!」

「攻撃してきたお前が悪い」

「ん…。な、なに、それ」

「なぁーに、ただの気持ちよくなる液体さ」

「ひっ…。う、うわぁあん」


 彼女の装備を破り捨てる。


 □


「思ったよりよかったぜ」


 意識を失った明菜に言う。

 髪をもって持ち上げて近くのゴミ捨て場に裸のままおいていく。


「今何時だ?…ちっ。あいつが思ったよりも耐えるからなぁ。12時、か。深夜から始めるのもまた、いいかもしれないな」


 俺は次に復讐相手の家に足を向けた。

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クズが超能力を使ってこの世界に復讐する話 いくら @atsukinho

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