第5話

 なるほど。

 俺は透視を使って真南が今どういう状況にいるかを確認した。

 周りのやつらに何かを取られている状況だった。真南の必死さからよほど大事なものだと推測できる。

 だんだんと状況が深刻になっていたのでそっちへ向かう足を少し速める。

 

『こんなのいらないよね』

『やめて!返してよっ!』

『窓の外に投げちゃおうよ』

『そうだね。あはははは』

『返してっ!!』


 …ちっ。追いつきそうにないな。

 瞬間移動を使って現場のすぐそこまで行く。

 ゆっくりといじめっ子たちの方へ歩いていく。

 いじめっ子たちは3人か。

 うわぁ。モブモブしすぎる。顔も名前も覚えられそうにないな。


「君たち何やってんの?」

「え…?」


 3人組のリーダーっぽい人が目を丸くする。

 俺に見惚れていたのかそれとも人が来ると思っていなかったのか知らないが一泊置いてから真南を指さしながらこう答えた。


「こいつが生意気だったから懲らしめてるんです」


 なぜか敬語だったがこの学校で真南がいじめられてるのは全員が知っている。そしてそれを誰も咎めない。

 だから、俺がこいつらの仲間だと勝手に勘違いしたんだろう。

 だが、それは大きな間違いだ。

 俺は真南を一瞥すると3人組にこう問いかける。


「そこの人が何したの?」

「え?いや。私たちに口答えしてきたから…」


 一瞬きょとんとしたが気を取り直してそう答えた。


「それはお前らが悪いんじゃねぇの」


 「君たち」から「お前ら」に呼び方を変えて俺がそれなりに怒ってることをアピールする。


「口答えしただけでそこまでするか?」


 俺は真南を見ながら問い詰める。


「…はぁっ!?あんた、こいつの肩を持つの!?」

「ああ、そうだ。俺は理不尽が嫌いだからな」

「何言ってんの?意味わかんない」

「もういいや、行こ」


 怒りで顔を赤くした3人組が去っていこうとする。

 真南から奪ったもの手に持ったまま。


「返せ。そのネックレスを返せよ」


 思い出したように3人組のリーダーが手元を確認するとそこには高級そうなネックレスがあった。


「………」


 無言でそのネックレスを思い切り投げてきた。それはもしキャッチするのに失敗すればそのネックレスが壊れてしまうくらい強く。


「あっ!!」


 真南が慌ててそのネックレスを捕ろうとするがそんな必要はない。

 俺は足に力を入れて一気にネックレスとの差を縮めた。そして掌で軽くネックレスを捕まえる。

 

「ほらよ」


 俺は床に座っている真南にそのネックレスを渡した。


「あ…」

「これに懲りたらもうそれは奪われないようにしておけ」


 これでいい。

 俺はただ、この学校に復讐するついでに同じく被害者である彼女を救っただけだ。

 また彼女がピンチになっていたらいじめっ子たちを懲らしめるついでに救うだろう。


「あ、ありがとうございます」

「おう」


 そっけない返事を返す。

 さて、邪魔が入ってしまったな。

 これからの計画を実行するか。


 

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