第4話
「ま、さき……?」
「そうだ。俺が、渡辺正輝だ」
ざわざわとクラスメートたちが騒ぎ出す。
一泊置くと険しい顔をして川内が口を開く。俺に向けて言っているのかそれとも独り言なのか俺には分からない。
「…嘘だろ」
俺に言ってるのかなんて関係ない。今の俺の目的はできるだけ川内と俺のクラスメートたちをイラつかせることにある。
だから、俺はニヤニヤしながらこう答える。
「お前らが能力を妬んでいじめ始めた正輝だ。お前らが努力もしないで、自分が勝手に下だと認めた正輝だよ」
俺の復讐はこの学校のやつらのプライドも、すべてをたたき割るまで終わらない。
こいつらが俺にしてきた仕打ちよりも数倍苦しんでもらわないといけない。
最初は精神、プライドからだ。
肉体的に痛めつけるのは後だ。一番手っ取り早いのは肉体的に痛めつけて同時に相手のすべてを壊すことだが、それだと楽しくない。
この復讐は俺が楽しくないと意味がないからな。
「んだと?今なんつったよ、ああん?」
お前昔のヤンキーかよと、思ってしまったがこれがこの学校でのリア充なのだからどうしようもない。
「なにか間違ったことでも言ったかな」
俺がこう言うと川内の顔は一気に怒りに染まっていく。
「いつもみたいに暴力は振るわないの?」
生意気な声で川内の怒りを頂点まで登るように声を出した。
これで、川内はもう我慢しないだろう。
「…ごちゃごちゃうるせんだよ!少し話を聞いてみれば…!」
俺の胸倉をつかみ壁の方へと投げ飛ばそうとする。いつもなら簡単に吹き飛んでいたが、俺はもう我慢しない。
こいつが唯一俺に勝つかもしれないのが殴り合いだ。
俺は殴り合いなんてしたことがなかったし、それなりにいい体つきだったが川内ほどではない。
―――でも、今の俺は、世界の誰よりも強くて、誰にも負けない能力を持っている
「あ?なんだ…。なんで投げ飛ばせねぇんだ」
「お前が弱すぎるからだろ」
俺は自分の体重を一気に重くした。それはもう、1トンくらいに。床が敗れる?大丈夫、だってそれも超能力で補助してるから。
一般人なら今の川内の力だけで投げ飛ばされていただろう。でも、そんなんじゃ俺には勝てない。
今、川内をぼこぼこにすることは容易い。でも今日俺がやることはこいつのプライドに傷をつけることだ。
それ以上はしない。
胸倉を掴んでいる川内の手の手首を握り離させる。何一つ表情を変えないで。
この俺の行動で一瞬何が起きてるのか理解できていなかった。だが、その一秒後には自分の手を凝視しながらよろよろとしていると後ろの机にぶつかった。
「………」
川内をあざ笑うような表情を作り上げ、見下す。そのままその場を離れ、教室内の様子を透視で確認する。
「…何あいつ。うざくない?」
「そうだね…。気にすることないよ純君」
「……そうだな」
明らかにぎこちない。川内の正妻の小桜杏奈と妾A,Bが川内を励ましている。
これで、結構彼女たちの川内への好感度は下がっただろう。
俺のはどうだろう。もう一度あいつらに目を向ける。好感度は…平均で10、くらいか。でも、あいつらからの評価なんてどうでもいい。
強いて言うなら好感度が高い方がいろいろなことがやりやすいくらいか。
ちなみに、たいてい好きな人への好感度は70、なにも思ってない人は40くらい。10はとんでもなく嫌われている。
トイレに足を向けて歩きはじめる。
すると遠くから誰かが誰かをいじめてる声が聞こえる。
『なにぃ?真南のくせに生意気なんですけどぉ~』
『…か、返してよ』
…。一つ訂正する。
俺はこの学校の真南理奈以外に復讐をする。
同じくこの学校の被害者である彼女ももちろんその過程で救いながら。
足をトイレから声がする方へ向きを変えながら俺はそう思った。
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