第3話 新しい世界の見方

 はぁ……。結局全然眠れなかったな。

 別に今の俺には睡眠は必要ない。

 今の俺は人間かだどうかすら怪しい。でも、そんなの些細なことだ。今まで俺が自殺してこなかっことを褒ためてくれてもいいくらいに頑張ってきた。

 もし、この超能力に何かしらの代償がいるなら好きなだけ持って行け。俺は、別に死ぬのが怖いわけでもない。ただ、あいつらに一矢報いてやりたいだけなんだ。

 まず、俺の超能力の把握をするが、簡単に言うと何でもできる。

 とにかく何でもできる。

 多分、やりたければ世界だって崩壊させることが出来るし、どこぞのスライム魔王にだって勝てるだろう。

 いや、それはないか。

 ただ、二つだけ。未来は見えないし、過去にも戻れない。それ以外はなんでもできる。

 未来なんて知る必要もないし、過去に戻る必要もない。俺は、今の自分も過去の自分も肯定するし、もしそれを否定するなら容赦なく潰す。

 今日は、化粧をしないで、俺のイケメンな顔をそのままで学校に行くか。

 一応もう一度言うが俺はナルシストではない。

 実は、入学初日も、つまりいじめが始まる前も化粧をつけて学校に行っていた。俺の中の「青春」は恋愛もそのうちに入るし、俺は決して軽い恋愛なんてしたくない。 

 だから、俺の内面を好きになってくれた人と恋愛をしたいのだ。

 つまり、中学生の時にイケメンだからって理由で告白してきた人たちがそれなりに いて鬱陶しかったわけだ。

 だから俺の素顔を知るやつはあの学校にはいない。

 俺の中学は公立でみんな高校に行くか行かないかくらいのところだった。

 もちろんこのような高校に行けたのだって俺だけだ。

 

「おはよう」


 自分の部屋を出てリビングに入り挨拶をする。

 目に入ってきたのは妹が朝食を作っている姿だ。パジャマ姿にエプロンをつけて台所に立っている。

 

「あ、おはようお兄ちゃん」

「…せめて私服か制服に着替えろよ」

「えー…。だって、パジャマの方が着心地がいいもん」


 パジャマ姿で料理をしているのが俺の妹で、名前は渡辺 明菜あきなだ。我ながら可愛い妹だと思う。

 家族だけが俺の心の支えだったものだからシスコンになっていても仕方がないのだ。多分。

 机に置いてあるコーヒーを手に取って一杯飲む。

 砂糖たっぷりで実にいい。

 俺の好きな名言トップ5に入る名言、「人生は苦いから、コーヒーくらいは甘くていい」をならい俺は甘いコーヒーを飲むようになった。俺はこの人を神とあがめて生活している。

 名前はヒッキーだったりする。まあ、あだ名だけど。本名はヒキタニ八幡だったり。違うね。ヒキガエル、じゃなくて、引き出物、じゃなくて、ひきがや菌でもなく……もういいや。

 まあ、とにかく甘いコーヒーはいいということを言いたかったんだ。

 ちょうどいい甘みだ。さすが我が妹。

 そのコーヒーを手に取ったまま、自分の部屋に向かう。

 別にちょうどいい甘さのコーヒーなんて何もないところから作ることは可能だけど、妹が作るからいいのだ。

 コーヒーを自分の机に置いて床に座る。 

 よし、筋トレ始めるか。

 ……あれ?

 筋トレする必要なくね……

 …よしやめよう。

 



「あれ?お兄ちゃん今日は化粧しないの?」


 少し驚いた感じで明菜が聞いてくる。


「ああ。もう、化粧するのがめんどくさくなってきてな」

「……そ、そうなん、だ」

「そういうことなんで。行ってきまーす」

「…い、いってらっしゃい」


 家の奥の方から親の「いってらっしゃーい」という声が聞こえる。

 いつもより軽い足取りで学校に向かう。 

 化粧をつけてない俺を見つけられるのは何人かなゲーム。

 周りの学生たちの頭を少しのぞいてみるか。

 今思い出したのだが、人の気持ち聞こえるじゃん。斉木〇雄みたいじゃなく、普通に自分の意志で聞き取れるのがいい。

 すると聞こえてくるのは


(何あの人…。超イケメンじゃん。てか、あれ。うちらの学校の制服じゃん。あんな人学校にいたっけ)

(…新しい転校生かな?)


 という心の声だ。

 普通の会話でも俺の話題になっている。


「なにあの人?」

「あんな人いたっけ」


 ふっ。例えこそこそ話しても俺は聞こえてしまうんだ。

 まるで俺の体が自分の体じゃないみたいだ。すべてを自分の意志で調整できる。筋力も、耳の良さも、視力も。

 自分の意識がロボットに乗ってるような感覚。

 実に面白い。

 学校に何事もなくついた……

 あれ?あれれ?

 今日は背中をたたかれなかったな―。おっかしいなぁ。

 ついこのことが面白くて面白くて笑ってしまう。

 教室のドアを開けると奇異の視線を向けられる。

 数秒後にこそこそと「あんな人いたっけ」「あんな人知らない」みたいな会話をしている。

 俺が自分の席に向かい始めると川内が話しかけてきた。


「………転校生か?」

「え?違うけど。俺はね、君たちのよく知る渡辺正輝だよ」


 俺は川内の問いかけに不敵な笑みを浮かべながら答えた。



 

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