月と待つ

かつどん

月と待つ

ちょっと寒いな。


夜桜が綺麗な夜、ベランダで月を眺めていた。


今日は三日月、すごく素敵だと思った。


もうすぐ23時になる、彼はまだ帰って来ない。


彼は仕事が忙しそうで帰ってくるのが遅い。


「今日は早めに帰ってくる。」


朝、彼はそう言って出ていった。


私は「うん」って返事をして、んって行ってらっしゃいのキスした。


その時にはもう、帰りが遅くなるのは分かってた。


それはすごく寂しいくて、苦しくて。


でもキスだけで胸が暖かく、いっぱいになる私は悲しいくらいに、単純に恋をしてしまったんだなと思う。


ガチャ


ふと玄関のドアが開く音がした。


「ただいま」


お疲れ様おかえり。


私は少し冷えた体で彼の元へ駆け寄った。




夜桜の散る夜、やっぱまだ寒いな。


今日は満月、ただ会いたかった。


彼はやっぱり遅くなるみたい。


私は月を見ながらコーヒーを飲んでいた。


コーヒーはいい。美味しいし、眠くならなくていいから。


でもホットはダメ、あれは熱くて飲みにくい。


代わりにお酒も考えた。確かにあれは体も暖まるし、気持ちいいけどやっぱりダメだ。


私が求めてる熱とか暖かさとか気持ちいいは、そうゆうのじゃないから。


ガチャ


私は冷やした体で彼の元へ駆け寄る。


この体なら、彼の熱、暖かさを、もっともっと感じられる。


「寒くなかった?」


彼が耳元でささやく。


気持ちいい、心地いい、胸いっぱいの感情が零れて溢れてしまう。


ダメなのは多分、私自身かも。




もう5月の夜、暖かくなってきた。


今日は新月、離れたくないと思った。


私は見えない月を見ていた。


見えなくても、見える気がしてしまった。


彼は、いつも通りだ。


もう体は冷えない、でも胸が冷たくて、苦しくて・・・


会いたい、好き。


ただそれだけが募ってしょうがない。


だから、私は彼を待つ。


もっと彼を、もっと、ちゃんと、感じたいから。

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月と待つ かつどん @katsudon39

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