第6話 そんな情報知りとうなかった・・・!

 前回のあらすじを三行で。


 渡された指輪でファンタジー童貞卒業

 異世界への移動が車庫から秒で完了した

 気づいたら横に知らん美人が鎮座してた


 完璧過ぎる。完璧すぎるが故に最後の一行が意味☆不明。




「出発前に言っただろう? 目的地に到着したら私たちの秘密を教えてあげるって」


 声も綺麗とかチートやチーターやこんなん!といい感じに混乱していたけど、『出発前に言った』ってのがもう混乱に拍車をかけるよね。


「・・・こんな見た目だけど私は間違いなく、日本では東條司と呼ばれているヒトだよ。まぁ、性別は見た通り違うんだけどね」

「はっ・・・えぇ・・・?」


 東條司と呼ばれているヒト、という事は・・・




「・・・父さんんんんん?!」

「はーい、お父さんですよー」

「嘘だッッッッ!!」

「えぇ・・・?」




 もう指輪が縮むとかいうファンタジーが矮小過ぎて草生い茂るわこんなん。

 それじゃあ何か?俺は実は紅一点の逆バージョンな家族で生活しとったんか?

 いやいや待て待て、普通に小学生ぐらいの時に一緒に風呂入って男のシンボルぶらんぶらんさせてたの見てるやん。あれも幻想やったって言うんかアァン?


「そうだね、幻想といえば幻想だね」

「貴様ッ、心を読んだなッ?!」

「声に出てるんだよねぇ・・・」


 あわや読心術とかいうファンタジー攻撃をまた食らうところだったZE・・・!


「…まぁそうやってたのも色々と事情があってね。とにかく家族として生活するにあたって、流石に夫婦でないと色々と困る事も多くなるだろうって事で、私が夫役を引き受けていたって事なんだ」

「いや…まぁ…親が両方とも女性だと確かに色々おかしいだろうけど…」

「ま、細やかな事は追々話すとしよう。なんせ時間はたっぷりあるわけだし」


 そう言うと父さん…いや女性の親だし母さん…もいるしややこしいな…!

 とにかくその女性は立ち上がって通路側に向かおうと俺の前を横切ろうとした。が。


「おぶふっ!?」

「おや、ごめんね。ちょっと距離感を間違えていたみたいだ。まぁ女性のお尻だ、悪い気はしないだろう?」


 無駄にスタイルがいいせいで、ケツが横っ面をボフッとはたいていった。あとニヤニヤすんな、なんか腹立つから。


「あと、流石にこの外見で父さんは私も龍希も混乱するから、私の事はアルさんと呼ぶといい。アルトリアという名前なのでね」

「アルさん…アルトリア、ねぇ…? 私のマスターかとか言いそう」

「…あれを十八禁から健全ゲーにするのにどれだけ時間をかけたか…」

「え?」


 …小声だったけど、なんか物凄い爆弾発言みたいなのを残しながら出口に向かって行ったな…。これは聞かなかった事にした方がいいのかもしれん。


「ほら龍希? 早く席を立って降りないと、お姉ちゃんもヒップアタックするわよ?」

「もうホントお兄ちゃんってマジお兄ちゃんだね!」


 思考の海に沈みかけた時、通路を挟んだ反対側から姉さんと菫の声が聞こえた。

 のでそっちを見たんだけど…


 …なんか角生えた姉さんみたいな人と妹みたいな人おりゅ~。


「ほ~ら三人とも止まってないで早く行きなさ~い?」


 そして俺の後ろの席から母さんの声も聞こえる。

 聞こえるが…振り向くのが怖い。怒られるとかそういうのじゃなくて、主に見た目の変化的な意味合いで。


「「は~い」」


 姉らしき人と妹らしき人が返事をして出口に向かうと、俺の視界の端からこれまた見た事のあるようなないような綺麗な女性がスーッと出口へ向かって行った。


 …なんかうっすい緑色のオーラみたいなの纏ってたんですけど?!

 なんなの超野菜人かなにかなの?! 俺もう既にバス降りる前からファンタジーお腹いっぱいなんですけど?!

 あとなんで妙に心落ち着く残り香が漂ってるんですかね…? いや急に心穏やかになれてありがたいはありがたいんだけども。


 …とにかく冷静になれた事だし、一旦考えるのは諦めてバスから降りよう。うん、俺にはまだファンタジーレベルがアップするだけの経験値が貯まってないんだきっと。

 貯まってもキャパが足りない気はするけど。




 そしてきっとバスを降りた後でも俺のレベルはきっとアップしないとも思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る