第1話 市民の日は全部休み・・・・・・全部?!

 その日はとにかく朝から静かだった。

 音が無い、と言うと語弊がありまくりだけど、とにかく日常的に聞こえてくる喧騒が一切聞こえないというのは、目が覚めた時からとにかく不思議だった。


(・・・車のエンジン音すら聞こえねぇのは・・・何故?)


 とはいえ今日は週の半ばの水曜日、とりあえず仕事に行く為にスーツを着込み、朝飯を食う為に一階のリビングに降りる。


「おはよー・・・。 今日なんかめっちゃ静かじゃね?」


 いつも通り挨拶をし、妙に静かな事について家族に尋ねてみた。それぐらい不思議な事だったんだけど、挨拶をしようと振り返った家族の面々は、俺の服装の方が不思議だったようだ。


「おはy・・・えっ、なんでスーツなんて着てるんだい?」

「スーツ? 龍希たつきあなた今日が何の日がカレンダー見たのかしら?」

「ぶふっ!! お兄ちゃんマジお兄ちゃん!!」

「あらあら・・・、とりあえず今日は『市民の日』でお仕事はお休みよ~?」


「え?」


 そりゃあもうすんごい勢いでカレンダー見たよね。そしたらばっちり今日が真っ赤になってたよね。というか県民の日ならいざ知らず、市民の日が祝日として扱われてるのにも不思議さを感じるよね、今なら。


「ま、まぁとりあえずスーツは脱いできなさい。 そしてその様子だと『準備』は一切してないね?」


 そう言ってきたのは我が家の大黒柱、少なくとも御年四十は超えてるはずなのにここ十数年一切老化のろの字すらない父親、東條司とうじょうつかさ

 ちなみに何故年齢がはっきりしないのかと言うと、その老化が一切見られない状況にちょっとした恐怖を感じたからだ。美魔女とかよくテレビに出てたりするけど、アレの上位互換みたいなのを目の前で見ると中々に恐ろしいぞ?


「まったく・・・いくつになっても龍希は龍希ねぇ・・・。ほら、お姉ちゃんが準備手伝ってあげるからさっさと部屋に行きなさい」


 頼りになる年上のような綺麗事を言っているけど、目がなんかちょっとキラッキラしてるこの女性が俺の姉、東條桜とうじょうさくら

 見た目はバリバリに仕事ができるキャリアウーマンの美人なのに、こと俺の事となるとブラコン全開になる変態だ。ちなみに今年に入って(今が七月の半ば)既に洗濯済みの俺の洋服や肌着、下着は十数着持ってかれている。その分という事なんだろうけど、買った時の数倍の金を置かれるのも怖い。なんでそこらの量産品が万単位になるんですかねぇ・・・(恐怖)


「ホントお兄ちゃんってばマジお兄ちゃんだねぇ! あ、一応スポドリとかは余分に買ってきてるから持ってっていーよー!」


 口癖が「お兄ちゃんってマジお兄ちゃん」のこの女性は、俺の妹の東條菫とうじょうすみれ

 お兄ちゃんってマジお兄ちゃんの意味を一度聞いてみた事があるけど、帰ってきた答えは「え、マジお兄ちゃんだよねーって意味だよ?」だそうです。意味☆不明!

 こちらも容姿は本当に美人で、今巷では『伊勢会津の撃墜皇女』として男性をバッサバッサお振りなされているご様子。何故撃墜女王でないのかの答えは、「うちの母親が撃墜女王だったから」というシンプルながら何この家族こっわwwwと草も生えてしまうような回答でした。


「お財布とスマホは忘れちゃダメよ~? お着替えは『あっち』で用意してもらえるからボディバッグぐらいでいいわよ~」


 そしてこちらが我が母にして伝説の『伊勢会津の撃墜女王』の東條華とうじょうはな

 その名に恥じない美女にして、父親と同じで十数年前から老化が一切見えない美魔女様だ。

 というかこの一家、異常に顔面偏差値が高過ぎて泣けてくる。おとんもおかんもおねえもいもうともみんな顔綺麗なんはなんやねんオラァ!!


「財布とスマホね、分かっ・・・・・・Oh、財布に金あんま入ってねぇな。祝日なら銀行は開いてねぇから・・・・・・コンビニで下ろしてくっかなぁ」

「今日はコンビニも休みだよ? というか今日はどこの店も会社も営業してないよ?」


「え?」


 トリに紹介しますは、コンビニすら今日の祝日の前には無力というのを当日に聞かされ、へそくりを引っ張り出すしかねぇと心の中で思っている俺こと東條龍希とうじょうたつきくん、御年二十歳の社会人です。

 ちなみに実家暮らしの社会人が何故にへそくりをしてんだっていう質問が飛んできそうですが、ドラマとかを見て『図鑑の中くりぬいて金貯めるとかマジ面白そう!』って思った社会人成りたての頃の俺に聞いてください。今はただ習慣化してて良かった~ぐらいしか感想は出てこないです、ハイ。




 ・・・容姿? 平の凡ですが何か?(全ギレ)

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