日本生まれの異世界人、故郷に帰る

@lily_3

第0話 まず始めに

 皆は「異世界」と言われてまず何を思い浮かべるだろうか?


 剣と魔法のファンタジーだったり、エルフやドワーフと呼ばれる別人種だったり、世界を支配せんとする魔王やその配下、凶悪な魔物と呼ばれる存在だったり、十人十色なのは間違いないだろう。


 ・・・そうだろうそうだろう、そういう「空想上の物語」を誰しもが想像するだろう?


 誰しもが傘で必殺技を繰り出し、ゲームやアニメに出てくる魔法を唱え、ベルトやアイテムを用いて変身をしようとしたりしただろう?

 腕に意味もなく包帯を巻いたり、急に右目が疼き出して裏人格が出てこようとしたり、薄暗い路地に入っては「そこにいるんだろ・・・?」とさも尾行に気づいてました的な雰囲気を出してみたりしただろう?

 所謂大学ノートと呼ばれるノートに自作の小説を書き殴り、オリジナル呪文だったり最強の剣だったりを模索して書いたりしただろう?


 ・・・後半はやってない? 中盤も厨二病特有の症状でファンタジー関係無いだろ?


 まぁいい、とにかく皆が思う「異世界」というのは、極論で言うと「非現実の塊」だという結論に至るだろう。


 現実世界では決して出来ない事をやっている、そういう面が非常に大きいという感想が出てくるものだと思う。




 ・・・まかり間違っても、決して「隣人としては存在し得ない」ポジションにいるはずだ。




 近所でも美形夫婦と名高い高得たかとくさんご夫妻、体格はゴツいのに腰はいつも低いし奥さんにも頭が上がらないで評判の大國博史おおくにひろしさん、筋骨隆々なのに好きなのは自転車弄り、それを仕事にして毎日ウッキウキな大河原頼三おおがわららいぞうさん・・・

 ご近所でも犬好きで評判の犬塚理音いぬづかりおんさん、猫好きでこちらも評判の新海蹴人しんかいしゅうとさんカップル、花屋の看板娘でハーフの帝渡ていとアニアさん、金物屋の五代目店主にして、有名な包丁ブランド「槌乃輪つちのわ」を立ち上げたやり手の社長である土輪斧太郎つちわおのたろうさん・・・


 他にも「快速の情報屋」という二つ名を何故か持っている商店街で井戸端会議しているおばちゃん達、父親が十種競技の日本代表でその能力を如何なく引き継いでいる、通称「陸上競技荒らしの新田あらた」と呼ばれる、一流商社に勤めるサラリーマン、日本でもトップクラスに有名な、流行の最先端を作ると言われている女子高生の黒井さんなどなど・・・


 なんかこう・・・この都市って色々不思議な人が多くね?とは思っていたのも事実ではあるが、どれもこれも結果として知ってしまえば「あぁ・・・まぁそうなるよなぁ・・・」となるのも納得であった。




 この物語は、そんな「なんかメンツが濃くね?」な都市に唯一当てはまらない、すべてが平凡極まりない青年が主役の物語である。




 そしてその平凡極まりない青年が、おそらくはこの物語の中で「一番ぶっ飛んでいる存在」なのである。

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