第13話
篠宮はパン派らしい。彼女は寝ぼけ眼を擦りながらトースターでパンを焼き、畑野の分も含めて二枚の皿に二枚ずつパンを乗せて、ジャムとマーガリンのディスペンパックと併せてテーブルに並べて置く。そうして、講義の無い休日の朝が始まった。
熱い珈琲と共に朝食を食べ終える頃には二人とも目が覚め、朝の支度をする。特に何か用事が入っている訳でもないが、自宅でもなし、篠宮の家に入り浸るのもよろしくない。昨晩のように彼女から誘われたら、今度は誘惑に負けてしまうかもしれないのだ。
昨晩の内に浴室乾燥を済ませておいた私服に袖を通した畑野は、脱衣所から出る。すると、同様に着替えを済ませた篠宮と対面した。そして、彼女にしては珍しく露出が少ない、ベーシックカラーが多めのコーディネートに「む」と驚く。白いシャツと紺のベストに、丈の長いゆとりのある黒いパンツ。黒いゴムでポニーテールに髪を纏めたボーイッシュな姿に、優れた絵画を見た時のような感嘆の吐息が漏れ出た。改めて見れば、やはり容姿は整っている――そんな失礼なことを考えながら、畑野は彼女の隣に座した。
「珍しいわね、そういう恰好するの。初めて見たかも」
「オフの日はこんな感じですよ。肌を出した方が男の人のウケがいいですけど、そういう予定が無い日とかは大体こんな感じです。何だかんだ、見られる恰好は疲れますから」
彼女は小さく欠伸をしながら、リモコンでテレビを点ける。ニュース番組を見ながら珈琲に手を伸ばす様は絵画のようで、腹立たしいくらい様になっていた。彼女も、楼海もそうだが、特徴のある性格や言動が印象的なだけで、容姿は非常に優れている。篠宮家とは美形揃いなのだろうか、羨ましい限りである。
篠宮はテレビに向けていた瞳を畑野に投げ、その瞳に高揚感を宿す。
「今日、先輩も講義入れてないですよね? この後どうします?」
つい先刻までどうしようかと考えていた畑野は、微かに唸る。
「んー、特にやりたいことも無いし、帰って小説でも書こうと思ってるけど」
新人賞の期日はもう少し先であり、進捗を加味すると余裕はある。どころか、二作品目にも着手できるような状況だったが、そうやって先延ばしして完結が間に合わない、などという事態に陥っては目も当てられない。書ける内に書いておくべきだろうと考えた。
しかし、篠宮は途端に不貞腐れたような表情を見せる。
「……帰るんですか」
あざとく不満を主張してくる篠宮を尻目に、「そんなこと言ったってね」とマグカップを掴む。ぬるくなった珈琲を口に含みながら、思案した。
彼女の言いたいことは理解をしている。デートをしろということだろう。それは特別に不本意な要求というわけではなく、畑野としてもそれを受理することに異議は無い。しかし、今の関係性は別に恋人という訳ではなく、畑野としても、この関係を進展させるのはもう少し先であるべきだと考えている。
昨日の出来事で薄々と感じつつあったが、今の篠宮は畑野に依存をしている。
絵から逃げて、誰かに認められることを求めて――今まではその容姿を使って劣情や嫉妬を買っていたものが、今度は無条件に畑野から与えられるようになっただけだ。だからきっと、畑野が消えればその安寧は霧散して、今まで通りに戻るだろう。
畑野は自分が何をするべきか、どうしたいかを理解できずに迷い続けていたが、少なくとも、そちらに進み続けるべきでないことは確信を持って理解できた。もしもこの休日を彼女と共に過ごすなら、その時間は彼女の心の深淵に触れるものでなければならない。
「どうしたもんか……」
ぼんやりと呟きながら、足を組んで朝のニュースを眺める。
番組では全国の美術館特集をやっていた。この冬は世界各地の絵画や彫刻、美術品に触れようと綺麗なアナウンサーが告げ、つい先日のバラエティ番組で芸術品なんか知るかと吐き捨てていた芸人が賛同の意を示している。
いっそのこと、楼海の画集を買い集めて彼女に差し出せば、劣等感がオーバーフローして自尊心の塊になるのではないだろうか。考えすぎて迷走し始めた畑野は、危うく彼女の心を完全に折ってしまいそうになりながら、それでも熟考をする。
何かいい切っ掛けは無いかと、畑野は篠宮の家をぐるりと見回す。
以前までの人に媚びるような生き方からは想像もつかないような、質素で寂しい部屋。家具も必要最小限で、ミニマリストという訳ではないのだろうが、この空間で豊かな生活を送ろうという意思が感じられなかった。
この家で見かけた生活必需でないものといえば、珈琲メーカーと画材くらいだろうか。
画材――昨晩、押し入れで目撃した筆やキャンバス達。生活に不要なものを置いていない彼女が、それらを家に置き続けている。それはきっと、心がそれを拒みつつも尚、断ち切れぬ未練があるからなのだろう。
そんなことを考えながら部屋を見回していた畑野は、ふと、普段遣いらしき参考書やノートが敷き詰められた小さな書架に目を止める。書架、詰められた本に追いやられるように、その端に無造作に差し込まれている、日焼けした画用紙が目に留まった。
「ん」
思わず声と腰を上げた畑野は、テレビの脇にあるその書架に歩み寄る。
そして、微かな埃と共に書架に挟まっていた画用紙を抜き取った。「あっ」と声を上げる篠宮を背に、舞う埃を空いた手で払いながらその画用紙を見る。
そして、思わず目を大きく見開いた。
それは、楼海のスマートフォンの壁紙として目にした、幼き日の篠宮が描いたフグの水彩画だ。紙のふちに埃を帯びて、日焼けで色褪せて。それでも損なわれない美しさを持つ、幼少の少女が描いたとは思えないほど写実的で鮮やかな色遣いの一枚に目を止め、同時に、美術館で大きく心を震わせてきた楼海との決定的な差に気付く。
先日、楼海と言葉を交わした晩に彼女から告げられた、篠宮という画家の評価を思い出しながら、畑野は篠宮に悟られぬ様に驚きを表情から消す。
楼海と接点の無い畑野が、この絵に見覚えがあってはいけないのだ。
「これは――」
白々しい顔で篠宮を見れば、彼女は辛酸を嘗めるように顔を歪め、微かに下唇を噛む。顔を俯かせて固唾を飲んだかと思えば、すぐに、その整った容姿に笑みを浮かべた。注視しなくても分かるような、強張った笑みだ。
「……捨て忘れたゴミですね。なんでこんな場所にあるんだろ」
彼女も同様に白々しく笑って、畑野から画用紙を取り返す。
誰の目にも明らかに捨てきれずにいた、思い出の一枚。彼女は微かに震える手でそれを掴んで眺めていたかと思うと、思い切るように瞳を瞑って嘆息をする。
そして、次の瞬間――彼女は紙の上端中央を両手で掴み、一息に千切り捨てようとした。その手に力がこもった瞬間、畑野は目を見開いて反射的に彼女の腕を掴む。細く柔らかい彼女の腕を握るように掴めば、彼女も驚いたように動きを止めて畑野を見る。
「綺麗に描けてるのに、捨てるなんて勿体ない」
そう窘めると、彼女は顔を歪めて瞳を伏せた。
「私が描いたものを、どう扱おうが勝手じゃないですか」
「分かってる。でも、捨てるくらいなら私が貰いたい」
これは、この絵は彼女にとっての土俵際のようなものだ。この絵や画材が彼女の家に置き続けられていることこそが、彼女がまだ絵を捨てきれず、未練を宿していることの証左だ。同時に、それらを手離した瞬間に、彼女はきっと本当の意味で絵を捨てる。
もしもそうでなかったとしても、己の絵を破り捨てたら、それはきっと、いつか握るかもしれない彼女の筆を重くするだろう。
説教や同情ではない、理想や信念に従って真剣な表情で見つめてくる畑野を見て、篠宮は光から遠ざかろうとする影のように、顔を逸らす。畑野が握っていた彼女の腕を離せば、その手をだらんと落として、空いた手で己の額を押さえた。
苦しそうな彼女の瞳が、幼少期の自身が描いた一枚の水彩画を見詰める。
「……白状します。『捨て忘れた』ゴミじゃなくて、『捨てられなかった』ゴミです。何度も――破り捨てようとして、未練が邪魔をしてきました」
彼女は内に溜まった毒を吐き出したように、ほんの少しだけ楽になった様子で肩の力を抜く。弱々しく笑って画用紙の中のフグを見詰め、悲しそうな瞳で唇を噛む。楼海の撮った写真では、誇るように、楽しそうに満面の笑みを浮かべて絵を掲げていた彼女は、今はもう、これをゴミと呼び捨てる以外のことはできなかった。
「この頃は、楽しかった」
小さな声で絞り出された篠宮の言葉が、脳の奥の方で楼海のそれと重なる。
何もかもに背を向けて逃げ出した彼女は、綺麗なものばかりではない思い出の中で、それでも輝きを損なわない一枚の絵を見詰めた。そんな様を痛ましく眺め、畑野は彼女に届かない程度の小さな溜息をこぼし、ソファの肘掛けに腰を置く。
絵に未練を抱き続ける様が痛ましく見えた。だが、それは同時に希望でもあった。愛想を尽かしたのならばきっと、彼女が筆を握ることは無かっただろう。けれども、絵を諦めきれずに居るのなら、いつかまた、筆を握るかもしれない。
そんなことを考えた畑野は、思わず口を開いた。
「もう、絵を描く気は無いの?」
静かな問い掛けに、篠宮は目を丸くして畑野を見詰め返した。
それから、ほんの少しだけ憂いを帯びた表情でフグを見詰め、次に、過去の己を探すように、窓の外の果てしない蒼穹を一瞥した。「――どうでしょう」と、まるで自分に尋ねるような調子で、彼女はそっと呟いた。
古びたデニムのエプロンを着けた篠宮は、言葉も無く、一つ一つの動作を思い出し懐かしむように画材を準備した。
リビングに使い古されたシートを敷き、噛み締めるような表情でイーゼルを立て、随分と昔に開封してそのままだった、状態の悪いキャンバスをそれに置いて挟む。小さな組み立て式の木製椅子に座って、赤背景に白数字の箱から数本のチューブを取り出した篠宮は、キャスター付きの棚に置いていたパレットに絵の具を出そうとして、止めた。
パレットの小さな仕切りには、既に絵の具が乾いてこびりついている。残量は疎らだったが、どの色も使うには十分だろう。それを確認した篠宮はチューブを戻す。
「カピカピに乾いてるけど、洗わなくていいの?」
「透明水彩はこんなもんです。どうせ水で溶かすので――出した絵の具を乾かしといて、手間を省くんです。乾かしておけば長持ちしますし」
小学生時代には、絵の具のパレットを洗わなかったら図画工作の先生から小言を言われたものだが、なるほど、そんなものか。ソファの肘掛けに腰を置いたまま畑野が彼女の作業を見守っていると、彼女は準備を進めながら思い出すように会話を継ぐ。
「五年ものなので、流石に質は悪そうですけども」
「ヴィンテージってやつね。或いはレトロ」
「希少価値が付けばいいですが」
篠宮は微かに笑った後、バケツに架けていた筆を握る。
途端、その表情が酷く強張る。しばらく無言で動きを止め、彼女は小さな深呼吸の後に固唾を飲んだ。窓の外に広がる初冬の青空をじっくりと観察した後、唇を噛みながらバケツに筆を入れ、雑巾で筆の水を落とし、その筆でスカイブルーの絵の具を溶かす。
それを混色スペースで広げる彼女は、作業と共に頻りに瞬きをしながら呼吸を整えている。うっすらと、額に汗が滲むのが横から見えた。明らかに無理をしている――止めるべきか。促した手前、自分にはその責務があるだろうと腰を浮かそうとするが、外界を遮断するような、キャンバスと題材に没頭するような篠宮の瞳に思い留まる。
色を整えた篠宮は、そっと筆を持ち上げてキャンバスにそれを寄せる。
しかし、あと僅かで色を乗せられるというその瞬間、ぴたりと静止する。
静寂を纏う室内に、ほんの少しだけ彼女の震える呼吸が響く。筆先が微かに震え、彼女の表情に焦燥や苛立ち、不安や葛藤、悔恨と苦痛が滲んだ。感情がパレット上の絵の具のように、混ざり、滲み、彼女の表情というキャンバスを悲痛に彩る。
自分自身と対峙しようとする篠宮の邪魔をしないよう、畑野は沈黙し続ける。
親の仇を睨むように、獲物を目の前にした肉食獣のように。見れば失明するような、聞けば鼓膜が破れるような激情を筆に乗せるべく、彼女はキャンバスを見据え続けた。
そうして五分ほど続いた静寂を破ったのは、彼女の握っていた筆がバケツに落ちて響いた水音だった。水滴を指先に浴びた篠宮は、しかしそんなもの意に介すことなく、今にも泣き出しそうなくらい悔しそうな表情で前髪をくしゃりと掴んだ。
「……っ」
篠宮は辛そうに顔を歪めて、不甲斐なく情けない己を呪った。血が滲むのではと心配になるくらい強く唇を噛み、俯いた。
無理はしなくていい、お疲れ様――そんな綺麗な言葉を掛けようかとも思ったが、落ち込んでいる訳でも、誰かの言葉を待っている訳でもないことは明白で、故に口を噤む。今の彼女は自分自身と向き合い続けているのだ。下手な邪魔はしたくなかった。
しばらく俯いていた彼女は、やがて、弱々しい笑みを浮かべて畑野を見た。
「……怖くて、仕方が無いです。臆病者だと罵ってくれますか?」
疲れたように呟かれた篠宮の言葉を、畑野は飲み込んで反芻する。
彼女は以前と変わらず、絵を描くことを恐れたまま前へ進めずにいる。筆を握る手は重く、芸術を記す心は怯えて。しかし、だ。それでも今日、進むことは叶わずとも前へ進もうとしたその意思は、ただの臆病で切り捨てていいものではないはずだ。
畑野は少しだけ考えて、微かに笑った。
「臆病だから前へ進むことはできなかったのかもしれないけど、怯えるのは、『それ』としっかり向き合っているから。足は竦んだままでもいい。今日のところは前を向いただけで十分でしょ」
畑野が珍しく篠宮を真っ直ぐに称賛すると、彼女は戸惑ったような表情で畑野を見た。しかし、しばらくしてから、張り詰めていたものが緩んだかのように肩の力を抜いて、その表情を柔らかく緩めた。微かに笑ってキャンバスを見る。
「そう……かも、しれませんね」
少しだけ自分を認められたのだろうか。柔らかい表情で篠宮はそう頷く。
しばらくの沈黙が部屋を包み込むが、今度のそれは、少しだけ居心地がいいものだった。椅子に座ったまま、ぼんやりとキャンバスを眺めていた篠宮は、誰にでもなく語り掛けるように、思い出話を呟いた。
「ただ、写実的なだけなんです。私の絵は」
彼女の言葉に引き寄せられるように、畑野はリビングの机の上に置かれているフグの絵を一瞥した。とても小学生が描いたとは思えない上手な絵で、もしも畑野の親戚の子供がこんな絵を見せてきたら、芸大の費用を出しかねない。
だが、彼女はそれを『写実的なだけ』と呼んだ。
篠宮は微かに黄色を帯びたキャンバスの奥に何かを見る。
「『芸術』って、何だと思います?」
「……さあ。人の心を震わせるもの?」
文芸に触れる人間でありながら即答をできない自分を、複雑な心境で俯瞰する。エンタメ作家だから仕方が無いだろうと言い訳していると、篠宮は筆を見詰めて語った。
「人や出版社によって言っていることは多少異なりますが、突き詰めれば、どれも美を追求する活動だったり、精神を満たす行為だったり――つまるところ芸術というのは、現実と乖離したどこかに、その本質が存在するということなのでしょう。私は、芸術とは『現実の延長線上に存在しないもの』を、『現実に落とし込むこと』だと認識しました」
篠宮は仄かに陰りを帯びた瞳で、青い空を一瞥する。
「キュビズムはその最たる例でしょう。近代絵画の父達より産み落とされた怪物の卵は、ピカソという、同じく怪物の手により孵化して、今日まで教科書にその名を刻みつづけています。フォーヴィスムもそうでしょう。多角的視点を単一視点で視認するべく分解、再構築をしたり、心というバイアスを通して世界を見たり。見たままのものを描かず、心や世界をそこに乗せるからこそ、そこに絵画の芸術があるとしました」
普段の彼女からは想像できない、苦しそうな表情で語られる美術の世界。同じく芸術と一括りにしたところで、文芸や絵画、彫刻に音楽、舞踏だって。全く異なる歴史を歩んできたそれらは同じ指標で測ることはできない。
しかし、そんな畑野でも彼女の言いたいことは漠然と理解できた。心の中で結論を察すると同時に、椅子に座ったまま膝を抱えた彼女が、こぼす。
「――写実的なだけの絵は、写真でいいじゃないですか」
畑野はもう一度、フグの絵を見た。とても写実的で、よく描けている。
だが、技術はあっても、それは芸術ではない。
畑野はあの晩、楼海から告げられた篠宮の絵の評価を思い出す。
『技術はあります。技法をよく学んでおり、写実的で丁寧な絵を描きます。繊細な色遣いも、同年代の子達と比較すれば高く評価されることでしょう。でも――』
――そこに、心が宿っていない。
初冬の晩、静かに告げられた天才画家『楼海』の言葉を思い出しながら、畑野は彼女の苦しそうな顔を見た。
『絵に宿せる心が、そういった感性が抑圧的な環境のせいで磨かれてきませんでした。或いは、誰にも認められなかった経験がそれを恐れさせているのかもしれません。どちらにせよ、彼女の絵には致命的に中身が欠けています』
出会った時の畑野を試す言葉とは違う、画家としての楼海の忌憚ない意見。彼女は篠宮の絵を、高度なAIを保有したロボットのそれと語った。中身が無いと。そして、篠宮自身もそれを深く理解しているから、彼女は絵を描くことを恐れている。
彼女はきっと、その感性を磨いていくことで画家として成長していけるのだろう。だが、彼女が本当にそれを望んでいるのかは分からず、加えて言うのであれば、彼女の心は既に絵を拒絶している。完全な別離の瀬戸際だ。
ぼんやりと、膝を抱えたまま考え込む篠宮の姿を眺めていた畑野は、居ても立ってもいられずに動き出す。
パン! と両膝を叩いてソファの肘掛けを立った後、ポケットからスマートフォンを取り出した。急な音に篠宮が驚いて跳ね、目を丸くして畑野を見た。
「せ、先輩?」
色々と悩むことも大事だ。だが、ジッと見詰めていても同じ視野、同じ道で進もうとするだけ。障害を乗り越えるならそれでもいいだろうが、越えられない壁は迂回したっていい。そのためには、時に息抜きと称して散歩をするなどの別のアプローチを模索する必要がある。文芸と絵画、土俵は違うが、クリエイターとしても畑野は先輩だ。
しばらくスマートフォンを弄って色々なウェブサイトを巡回した畑野は、一分と経たぬ内に目当てのものを見付ける。そのページに記載された情報をじっくりと確かめた後、満足したように頷いて、怪訝そうにこちらを見詰める畑野に視線を返した。
「篠宮。ちょっと付き合いなさい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます