第6話 義忠の誠心誠意
家臣の運の幸は主を助けることもある。
「何・・!すぐに一郎(かずろう)さまの元に行かねば!」
そう言って私、新田寺起位守義忠(にったじのきいのかみよしただ)が立とうとすると門南(となみ)は「待て」の手をして
「お前はここにいるんだよ!お前の誠心誠意がどのくらいのものなのか量るいい機会じゃねえか。」
門南の訳のわからない発言に私はますます身体中に力を入れた。
「さっきお前が祈った神は金子誠神、自らに祈ったものが誠心誠意仕える主の命を守る神だ。主に誠心誠意をもって仕えられない人物がオレに誠心誠意を見せれるわけがねぇ。だから量るいい機会だっつたんだ。」
おい、という門南の一言で門南の家人たちは私を囲み、門南も部屋から出ていこうとしたので
「では、一郎さまが無事であったのなら門南、君は一郎さまに助力してくれるのかい?君の言っていることはそういうことでもあるんだよ?」
交渉の初心に戻って相手に対する譲歩の要求を行って門南の心を揺すぶろうとした。しかしそういわれても門南は顔色を一切崩さず
「ああ協力してやる。何ならオレの全財産、家人を投入してやってもよい。だが鹿目親(かめちか)の奴がくたばったという報せがきたならオレはすぐさまお前の首をはねて知地政(ちぢまさ)のもとにお前らが謀反を起こそうとしていたという密告とともに送る。あいつは息子を討ったことの正当化ができるだろうからオレを歓迎するだろうよ。」
そう言い残して部屋から出ていった。
「・・今からでも、祈り直せないかなぁ~。」
「無理です。」
「ですよね~。」
私の願いは門南の家人に一蹴された。
合姪(おうてつ)の不止鹿目親の別荘
「ふわぁ~。」
「真面目に警護を行ってください、兄上。」
自分、写師浮史守敬政(うつらしのうきしのかみあきまさ)はそう、兄、写師似法守刃切(うつらしのじっぽうのかみはのきれ)を注意した。
「お前は鹿目親のことを大成するお方だ、と言った。しかし俺には相変わらず庶民の女にすらフラれるぐらい冴えない男にしか見えぬ。間違いだったのなら今すぐおれの方からおれたち兄弟は抜ける、と言っておいておこうか?」
面倒ごとには関わりたくないが自分自身の意思でやめたということにはしたくないので弟の意見にしておこうという兄上の思惑が見え見えである。
「賊が入ったぞ!」
この賊が自分たちを救うことになるのを自分はまだ知らない。
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