第5話 勇者になれなかったオレサマ1⃣
俺はステキな不滅の王。
眼にも見えない早技で、どんな敵もいちころなはずだった。
世界もやがて俺のものになると思っていた。
ばいきん。ばいきん。
ばいきん。ばいきん。
そう言って嫌われていた。
俺は凄いんだ。
くしゃみ、はらいた。
かぜこんこん。
虫歯もズキズキさせて泣かせていた。
俺は強いんだ。
どんなえらい王さまも。
ばい菌には敵わない。
そう思っていた。
俺は嫌われるのが当たり前。
避けられるのも当たり前。
殺され死滅させられる運命だと思っていた。
なのに……
俺は知ってしまった。
生きる喜びを。
たとえ胸の傷がいたんでも。
俺は生きているんだ。
そう、生きるってことは嬉しいんだ。
なんのために産まれてなにをして生きる。
その答えを見つけてしまった。
俺は科学者。
見つからない答えなんてない。
今を生きることで、熱く燃える心がある。
自分にも心の炎はある。
だから誰かのように俺が生きる意味を見つけてもいいと思った。
だから俺は自分に問いかけた。
なにが俺の幸せか。
なにをして喜ぶか。
わからないまま死を迎えるのが嫌だった。
俺の夢は、世界を手に入れること。
忘れるな世界が俺にしたことを。
だから、俺は泣かない。
涙がこぼれても誰にもわからないように。
俺は飛んだ。
この大空を。
どこまでもどこまでも広いこの空を。
愛と勇気さえもその気になれば友だちになれるんだ。
時ははやく過ぎる。
光る星は今はないかもしれない。
だから泣くな!
もう一度笑ってくれ!
君が笑ってくれるなら……
どんな敵が相手でも戦えるんだ!
男がひとり。
そこにいた。
男はひとり。
そこにいた。
不滅の王。
そう言われた不滅の王。
その気になれば、この星に住む生物を数日で滅ぼす術を持つ不滅の王。
しかし、それが可能だということを知った不滅の王は、それをしなかった。
世界を滅ぼすってことは、嫌いなやつがすべて死ぬこと。
でも気づいていた知っていた。
それは、自分を嫌う人も好いてくれる人も死ぬ、
そレがなによりもつらい。。
ひとりぼっちになることに意味はあるのか?
ひとりで生きる王になることに意味はあるのか?
世界を手に入れ、ひとりになったとき。
あるものは……
そう、孤独である。
不滅の王は、なにより孤独が嫌いだった。
周りから、意味もなく嫌われ。
自分が生きるだけで精一杯。
なのに生きるということだけで嫌われる。
それがなによりつらかった。
なんども滅ぼそうかどうか悩んだ。
だけど、誰かを殺めてひとりになるのとみんなに嫌われてひとりぼっちになる。
そしてみんなを殺して真の不滅の王になる。
でも結果はみんな同じだ……
みんなに嫌われひとりぼっちになる。
それは知っている世界。
でも、誰かを殺めてひとりぼっちになる世界。
それは知らない世界。
一番怖いのはすべての存在を消して自分一人のみ生きるということ。
お腹はすく。でも不滅の王は死なない。
不滅の王は知らない世界を知るのは怖かった。
だから、みんなに嫌われてひとりぼっちになる道を選んだ。
ときには誰かを裏切って
ときには誰かと手を取り合って。
面白おかしく生きていた。
嫌われても好きでいてくれる人がいる。
仲良く一緒にいてくれる人がいる。
それだけでしあわせだった。
そうしあわせだったんだ。
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