第3話
結果から言うと、二〇二〇年、私の婚活は大失敗に終わった。何で?と当時は思ったものだ。
こちらが突き付けた、条件が悪かったのかも知れない。私と結婚するなら、弟とも同居してもらうと言っただけなのだが。それと弟の学費も全額、負担してもらう。これが絶対条件だ。
とある男性からは、「俺と弟と、どちらが大切なんだ」と聞かれて、「弟に決まっ
あるいは野球の話で盛り上がれなかったのが原因かも知れない。私は東京出身なので、応援するなら巨人であった。そもそも私は野球に大した関心も無い。
結局、私は弟
当時は婚活の敗因が分からず、何が悪かったのかと
弟から馬鹿にされるやら、
ややあって、『
「若いわぁ……犯罪的な若さだわ」
初対面で、そう言われた私は何だか面白くて、花子さんの
「広島弁じゃないんですね、花子さん。ああ、本名は別でしたっけ」
「うん、広島に
声がいい。ずーっと
ファミレスで
「
花子さんは
私も少しずつ、亡くなった両親の事や、一緒に住んでいる弟の事を花子さんに話した。将来の不安から、婚活に挑戦して敗北した
「私は、
「不純な動機ですよねぇ、弟の学費の事しか考えてないんですから。今は仲良く話せる人が
「いくらでも話なら付き合えるけど、私でいいの? 十才、上よ。貴女には年寄りすぎない?」
「花子さんがいいんです。年齢だって、その……」
これを言っていいのか迷ったが、私は続けて
「……私の、お母さんに近くて。事故で亡くなった時の年齢が、ちょうど、花子さんくらいだったから」
花子さんを初めて見た時、雰囲気が、母親に似たものを感じた。そう自覚した時、私は彼女と長く一緒に居たくなっていた。これも不純な動機というものだろうか。
急に目の前で、花子さんが泣きだす。
「いいのよ……いいのよ。『お母さん』でも『ママ』でも、『花子さん』でも、好きなように私の事を呼んでね……」
泣きながら彼女が言う。私は失敗した婚活を思い出して、私のために泣いてくれた男性は
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