第25話 メイちゃんは綺麗なままだよ
「いいえ、わたしは逃げたのよっ!」
怖くて、逃げ出したのっ!――と
「それでいいんだよ」
と返す。続けて、
「俺も姉さんも、メイちゃんには助けられた」
だから、あの時は逃げてくれて嬉しかったんだ――と俺は笑う。
あの時の俺には世界が――姉さん以外の人間すべてが――敵だった。
いつか力を持ったら、すべてを殺そうとさえ思った事もある。
けれど、五月姉さんと出会えたから、
「俺にとっては、姉さんと同じ位、メイちゃんの事も大切なんだ」
一人にさせてゴメンね――と俺は謝る。
すると五月姉さんこと『マーメイド』は声を上げて泣いた。
今日はこういう事ばかりだ。
三人も女の子を泣かせてしまった。
(いや、モモを入れると四人か……)
けれど、心の中では泣いていたのだろう。
俺はメイちゃんを抱き締める。彼女の身体は
やがて落ち着いたのか、彼女は冷静になり、ピタリと動きを
そして
「そろそろ、乾かした方がいいと思うんだけど……」
出来れば、俺の服もね――と俺は
彼女はコクリと
「水も
俺は天井を見上げる。【魔力】の回復にはカグヤが必要だ。
さっきは遠慮して、最低限の【魔力】しか
「あのねっ! しぃくん……」
と『マーメイド』が呼ぶので、
「今は『レイ』って名乗ってるよ」
オバケの方のね――と俺は少し、お
ブブブッ!――『
状況を想像して、思わず笑ってしまう。そんな俺に対し、
「レイ、わたし――汚れてしまったの……」
彼女は悲しげな表情で言葉を
「それにねっ……人も沢山、殺して――」
俺は再び、彼女を抱き締めた。
外で色々と見て来た。犠牲になるのは、常に弱い立場の人間。
――女子供、それに年寄りだ。
俺達を見捨てて逃げた彼女は、罰を受けたと思っているのだろう。
でも、そんな事は誰も望んではいない。
「メイちゃんは綺麗なままだよ――それに人なら……」
俺も沢山、殺した――と告げる。
誰かがある日、世界を変えてしまったのだ。
だから、これは誰の
「カグヤと俺の娘――『アイラ』と『名付け』をしたけれど――メイちゃんに
俺の
「あーちゃんは、しぃくんの子供だったの⁉」
と彼女は
「メイちゃんと別れた後、連れていかれた施設でカグヤと会ったんだ」
俺の説明に――そう、なの?――とメイちゃんは戸惑っていた。
まだ俺が捕まった時の事を気にしてるらしい。
「アイラは人間の本質的なモノが分かるみたいなんだ……」
だからね――俺は『マーメイド』の頭を
確か、姉もこうしていた
「アイラが
俺は
「ありが……とう」
と
次に俺を見詰めた、その瞳には強い意思が戻っていた。
周囲では崩れた天井の破片が宙を舞い、少しずつ修復されているようだった。
不思議な光景だ。
けれど、それは『オヤユビ』の【魔力】が回復した事を意味するのだろう。
「きゃあ~っ!」
と
【魔力】が少ないので勘弁して欲しい所だけど――
カグヤが世話になっているので仕方がない。
俺は落ちてきたウサミを【魔術】で空中に浮かせる。
それとほぼ同時に、今度は巨大なモノが降って来て、床へと突き刺さった。
紺色の水着――旧スクール水着――姿の『オヤユビ』だ。
水はほぼ無くなっているので、地面から下半身が生えた状態になっている。
残念ながら、今の俺には助ける【魔力】がない。
「パーパ、メイちゃん! なかよしなのよ♪」
アイラが笑顔で俺と抱き合っている『マーメイド』の周りをクルクルと浮遊した。
「まったく、心配してきてみれば」
とはカグヤだ。漆黒の剣を空中に出現させ、階段のように使って降りて来る。
周囲が薄暗いため、天井から射す光が彼女を照らす
その様子はまさに天から降りて来る女神に見えた。
俺は『マーメイド』から離れると彼女を受け止めるため、両手を広げた。
カグヤは
俺は難なく受け止めた。すると、
「お待たせ♡」
と彼女は
「ゴメン、もう限界なんだ」
そう言って俺はカグヤの
やはり、接触すると効率がいい。
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