第24話 謝る必要なんて、何処にもないよ……
――〈亡霊視点〉――
「ああ、
『
ただ、俺の――〈
簡単な
「こっちは大丈夫だから、安心してくれ……」
とカグヤに伝え、通話を終える。
想定してはいたが『オヤユビ』との戦闘で、床が限界寸前だったらしい。
通常であれば、放って置けば自動で修復されるのだろう。
しかし、
そのため、本来の機能を十分に果たせていないようだ。
結局、タイミング悪く床が崩れてしまった。
下の
場所は植物園だろうか? 天井の明かりが無くなった為、周囲は薄暗い。
取り
ウッドデッキ――いや、バルコニーになっているようだ。
恐らく【魔術師】達が植物園を見渡しながら食事をするのだろう。
最初は実験用かと思っていたが、観賞が目的のようだ。
それよりも、俺の【魔力】が
「さつ――」
俺は気を失っている女性――『マーメイド』――に声を掛けようとして、思い
(失敗だったかな……)
と思い
けれど、
つい懐かしさで嬉しくなり、気が
まあ『名付け』を行ったのがカグヤなら、本名を知られた所で安心だろう。
彼女より強い【魔術師】を俺は知らない。
それよりも、俺が名前を呼んだ事が原因で、彼女は取り乱してしまったようだ。
足を
「あぁんっ、うぅぅんっ……!」
と
「気が付いた? 姉さん――いや、メイちゃんか……」
アイラが彼女の事をそう呼んでいたので、俺もそう呼ぶ事にした。
男性不信と聞いているので、必要以上に近づかない方がいいだろう。
一方、
「しぃちゃん、なの?」
と口にした。
「そうだよ、メイちゃん」
俺は目線の位置を合わせる
同時に――プッ――と吹き出す。
「『マーメイド』なのに
相変わらず、メイちゃんはドジだよね――と俺は苦笑した。
話したい事は山ほどあるけれど、今は我慢しよう。
「だって、もう会えないと思って――」
そう言って『マーメイド』は黙った。
恐らく、この場に俺の姉が居ない事を
「大丈夫、姉さんも生きているよ……」
そんな俺の言葉に、彼女は――ホッ――と胸を
水に
その女性らしい、
多くの女性は、あまり彼女の横に並びたがらないだろう。
「
俺の言葉に彼女は頬を赤くし、胸を隠したけれど、
見て欲しい――という訳でもなさそうだ。
それよりも、
彼女とは幼い時、一緒に旅をしていた。
逃亡生活と言った方が正しいかも知れない。姉は俺が【魔術師】だいう事に気が付いて、住んでいた街を逃げるように出たのだ。
今にして思うと『モモ』の
あのまま街に居ては、俺が殺されると感じたのだろう。
俺は手を引かれるがまま、姉と森の中を
その旅の途中で彼女――五月姉さん――と俺達は出会ったのだ。
彼女も俺達と同じ理由で逃げていたようのだろう。
俺と姉さんは倒れていた彼女を見付けて介抱した。
二人は気が合うようで、
俺としては、姉が二人になったようなモノだ。
その頃の俺の【魔術】は、自分の身体を軽くする程度のモノだった。
他には小さなモノを動かす位で、まったく役には立たない。
一方で五月姉さんの【魔術】は液体の流れを操作する事に
水を出してくれたり、洗濯物を乾かしたりと重宝したのを覚えている。
だから、彼女の【魔術】を使えば、
水分だけを衣服から取り除けばいい。
人間に応用すると大変な事になりそうだ。
「早くしないと風邪を引くよ」
当然、俺は
ただ、あまり彼女を見るのも失礼だろう。
「変なメイちゃんだな……」
そう言って俺は彼女に背を向けた。
「でも、生きていてくれて良かったよ――実はあの後……」
施設に連れていかれて――と俺は彼女と別れた時の話をする。
けれど突然、背後から彼女に抱き付かれた。
透過する事も出来たけれど、それはしない事にする。
ジャージ姿なので、彼女の水分で俺までびしょ
「泣いているの?」
俺の問いに、
「ゴメンなさい……」
彼女は謝った。俺は苦笑すると、
「謝る必要なんて、
それより、カグヤ達と仲良くしてくれてありがとう――と告げる。
彼女が俺に謝る理由は簡単だ。
結局、子供だけで、いつまでも逃げ切れる訳がない。
彼女はその場から逃げて、俺は捕まってしまった。
それだけの話なのだ。
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