第18話 もうっ! いい所だったのに……
地下に
彼女を
現状では【
つまり、カグヤが居るので後二人となる。
「俺が地下に行って、助け出してきてもいいけど……」
俺の【魔術】を使えば救出は簡単だろう。
時間が掛からない一番、楽な方法だ。
「その場合、他の【
一対一なら負けないけれど――とカグヤ。
確かに、こっそりと行動した場合、バレた時が面倒そうだ。
元々、説得する必要もある。話し合いは必須だろう。
(だから、溜息を
『シンデレラ』と合流するには、先に二人の【
「メイちゃんとユビちゃんにあうのよ」
とはアイラ。どうにも、先程からの様子を見ていると――娘は、この塔で暮らしていた――その記憶があるようだ。
勝手知ったる
【
(いや、
最初はアイラの能力が塔を攻略する鍵だと思っていたのだけれど――
(もしかして【
――ウチの娘、最強説が浮上か?
「『オヤユビ』はいいけれど、『マーメイド』はどうかしら……」
とカグヤは悩む。彼女の話によると人魚姫の方は男性不信らしい。
事情を話すとなると、俺の事も話す必要があるだろう。
「『ラプンツェル』の方がいいわね」
良くも悪くも研究以外には無関心だから――とカグヤは付け足す。
それはそれで
同時に『黒陽計画』を
「そもそも、
今更な俺の質問に、カグヤとウサミは顔を見合わせる。
「わ、わたくしが聞いているお話だと、引き
ウサミが申し訳なさそうに答えた。
「元々の性格もあるのだけれど……アイラを外に逃がしたから、その責任――いえ、
とカグヤは頭を悩ませる。
今の情報だと――引き
そんな俺の様子から察したのだろう、
「アイラをこの塔から逃がすのに、彼女に協力して
とカグヤは語る。『逃がす』とは物騒な話だ。
そんな俺の考えを見抜いたのか――違うわ――彼女は静かに首を横に振る。
「この塔で育てば【魔術師】側の考えでしか、世の中を見る事が出来なくなるからよ……」
とカグヤ。確かに外には【魔境】が広がり、更には日本があって世界がある。
様々な地域で、それぞれの文化を持って人間が暮らしている。
「今はまだいいかも知れないけれど、それではいけない時がきっと来るわ」
その時はきっと、私は守ってあげられない――そう言って彼女はアイラを見詰めた。すっかり母親の顔をしている。
「多分、アイラの能力を知ったら、それを利用しようとする連中が出てくる」
それは【魔術師】かも知れないし、外の人間かも知れない――とカグヤ。
彼女自身、利用されてきた立場だからこそ、分かる感覚なのだろう。
少なくとも、彼女は信じていた者に裏切られ続けてきた。
この世界は彼女の優しさを踏みにじり続けてきた。
それでも、彼女はその経験を愛する娘の
「少なくとも、アイラには仲間が必要よ……」
その
彼女の口調から、それが伝わってくる。
恐らく、アイラはこの塔では祝福されるような存在なのだろう。
【
だからこそ、アイラは【魔術師】達の王になる。
その時、この塔の中だけしか知らなければ、どうなるのか。
今はこの【魔境】に干渉しては来ないが、外の人間の数は多い。
経験から力を持たない人間が、いつ【魔術師】に対して牙を
ある日突然、外の人間の圧倒的な悪意に
娘はそれに耐えられるのか?
同時に【魔術師】達の事しか知らないのであれば――
(選択できる道は戦争しかなくなる……)
争った先にしか彼女の未来がないのであれば、それは
親として出来る事は、彼女の可能性を信じてあげる事だったのだろう。
「私が
そう言って、カグヤは俺を見詰めた。
当然、俺はそんな彼女の手を取り、彼女を見詰め返す。
綺麗な漆黒の
「カグヤ――君が居てさえくれれば、どんな闇も怖くはない……」
「レイ――
お互いにそう言って、自然と唇を重ねようとした時だった。
ブブブッ!――と
(メールだろうか?)
「もうっ! いい所だったのに……」
と頬を
「あ、あのー……カグヤ様?」
申し訳なさそうにウサミが声を掛ける。
(そういえば、居たのだった……)
彼女はアイラを抱っこした状態で、目隠しをするように娘の顔に手を当てていた。
一部始終を見て――いや、見せられていたので顔が赤いようだ。
「お客様です……」
とウサミがカグヤに告げると同時に大きな音を立て、
カグヤとウサミは――やっぱり――という表情をしている。
――いったい、
メールの内容を確認していた俺の目には――親指姫を部屋に向かわせた――と『シンデレラ』からの通知が映っていた。
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