第4話 神様公認のお昼寝

 アイシャ

 力  E

 体力 E

 器用 E

 俊敏 E

 知力 E

 精神 E


 適性 お昼寝士

 職業  ─

 技能  ─


 一般的にギルドカードと認知されているこのカードには、その者のステータスと持つ技能、スキルツリーなんていうものも記されているが、今この時に必要なのは適性でありこれからの生活において各個人が意識しておくべきものである。


 内容を見せつけられた司祭はひざから崩れ落ち、周りからはドッと笑いの波が押し寄せる、そんな中でアイシャは1人両腕を掲げてやってやったとばかりに勝ち誇っていた。


 その後はアイシャのグループ分けをどうしようかと頭を悩ます司祭たちに


「あ、いいです。お構いなく」


 そう言ってアイシャは片手を挙げ「じゃあっ」と、さっさと聖堂を後にしたアイシャ。


 それを司祭たちが追ってみれば、いつもの大きな木の下で早速横になってしまったのを見て「適性がお昼寝なら……これでいいのか……」と納得してしまった。




「アイシャちゃん、起きて起きて」


 既に日が傾き始めた午後にサヤがアイシャを起こしに来てくれる。


「ん、おはよー」

「おはようじゃないよ」


 サヤはあれからの事を話してくれて、同時にアイシャの事も心配だったなどと教えてくれた。


「それはありがとうね」


 アイシャが笑顔でそう言えばサヤは満足そうにニッコリとする。


「つまりサヤちゃんはこれから毎日素振りをして過ごすわけだね」

「いや、アイシャちゃん省略しすぎだよ。だいたいそんな感じだけど武道館に集まって練習するんだよ」

「お昼寝館はどこ?」


 武道館があるならお昼寝館もあるだろうなんて考えはどこからくるのかと、サヤは小さなため息をついた。


「アイシャちゃん、私のカード見せてあげる」


 サヤ

 力  D

 体力 D

 器用 D

 俊敏 D

 知力 E

 精神 E


 適性 剣士

 職業 剣士見習い

 技能 剣術初級


 寝ぼけているばかりのアイシャに自分のギルドカードを見せたのは、もう少しやる気を出して欲しいというサヤの気配りだ。


 アイシャが退場したあとの聖堂では、お昼寝士という適性とその全てが最低というステータス、枯れ木のような何も見えないスキルツリーまでもが話題となって嘲笑され、ある意味みんなの励みにもなっていた。


 ──どんなに悪くてもあれより下はない、と。


 司祭たちは勝手にギルドカードの内容を他人に教えたりはしない。それはアイシャ自身が寄ってくる子どもたちに見せびらかしたものだ。


 アイシャにとってこの内容は別に恥ずかしい事ではない。むしろこれからも変わらぬ日々を手に入れられた事が嬉しくって仕方ないくらいなのだ。


「サヤちゃん、技能ってどうやって手に入れるの?」

「カードのスキルツリーっていうのからだよ。ここの……ほら、これを指で触ればいいんだよ」


 サヤのカードにはツリーらしく木の形をしたその根っこのところに“剣術初級”の文字があってそこが赤く判子をついたようになっている。


「ふーん、これの……どこ」

「ど、どこだろうね……ふしぎ」


 アイシャが分からなくて見せたスキルツリーはやせ細った枯れ木のようで、その根っこには何もなかった。



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