第45話 小話 アヤトの素朴な疑問

 ベッドの中での睦み合いが終わると、アヤトはいつも余韻の抜けきらぬ様子でぐったりし、眠そうな表情となる。

 俺は行為中はつい夢中になりすぎてしまうから、無理をさせているのかもしれない。どこか傷つけてはいないかと、事後には必ずアヤトの全身を確認するのだが、当のアヤトは眠そうな顔でゆるりと笑って「大丈夫だよ」と言う。

 その後、アヤトの身体を濡れタオルで拭い清めるのは俺の役割だ。

 お湯で濡らし固く絞ったタオルで、アヤトの全身を優しく拭う。なめらかな肌に残るまぐわいの痕跡を丁寧に拭い清めてゆく作業は、なかなかに楽しいものである。

 その夜も、薄い腹に残った二人分の体液を丁寧に拭っていると、眠そうな目で俺の作業を黙って見ていたアヤトが、どこか遠慮がちに口を開いた。

「……ルーク、イク時いつも中に出さないよね。それって、なんで?」

 中に出さない、とは、この白濁液のことを言っているのだろうか。たしかに、なるべく中に出さないようにはしているが……。

「それは、中に出すとアヤトの身体に負担が掛かるからだよ」

 精液が腸内に入ると、まれに腹を下したり、魔力酔いを引き起こしたりするらしい。(書物で学んだ。)

 しかし、完璧に外で出せているかというとそういうわけでもなく、何度か我慢できずに中で暴発させてしまったことがある。その際はアヤトには大変申し訳なかった。幸いにも下痢をしたり体調を崩すことはなかったようだが、なるべく我慢して、中には出さないように頑張っている。

「それってさ、俺が、孕んじゃう、から?」

「え、はら……?」

 アヤトは頬を染め、左手の甲で口元を隠しながら、恥ずかし気に潤んだ瞳で俺を見つめ、質問してくる。

「だって、ルークは勇者だし、魔力つよつよで性欲もスゴいし、ここは魔法の世界でしょ? 男同士でもそういうことがあるかもって本で読んだし」

「いや、いくら何でもさすがにそれはあり得ない」

 男同士の睦み合いで孕むなどという現象は、見たことも聞いたこともない。どういった書物にそのような情報があったのだろうか。というか、アヤトは普段一体どんな本を読んでいるんだ? 

「中に出さないのは、アヤトの体調を守るためだ。孕んでしまうことはない」

 俺が説明すると、アヤトは少しつまらなさそうに口を尖らせ、

「なぁんだ、そっか。俺、ルークとならできちゃってもいいかもな、なーんて思ってた」

 と言う。

「……アヤト」

 今の言葉は反則だ。

 その瞳も、恥じらうような表情も、最強に可愛がすぎる。

 一旦落ち着いていたはずの下半身が、急速に怒張を強め始める。こんな可憐な姿を前に、我慢できようはずがない。

「是非、試してみよう。もしかしたら不可能が可能になるかもしれない」

「え、え? ルーク? な、ちょっ、まっ」

「ああ、アヤト。俺もアヤトとの子なら沢山欲しい……」

「ルークっ、んっ、あッ、あぁッ、あぁんっ」


 その夜は、しつこく求め過ぎてしまい、アヤトをぐずぐずに泣かせてしまった。

 翌日の筋肉痛のアヤトからは「しつこ過ぎ」「やり過ぎエロ勇者」とさんざん責められた。 

 反省している。





 


 

 

 

 

 


 

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