第10話 ふふふ^_^

 「おぎゃあ!おぎゃあ!おぎゃあ!」

 「おめでとうございます!元気な女の子です!」


 ベテランの助産師さんがタオルにくるまれている娘を私のところまで連れてきてくれる。


 「無事に生まれてきてくれてありがとう!本当にありがとう」


ーー無事に生まれてきてくれて本当によかった!私に似なくて、旦那に似て顔も整っていて素直で本当にいい娘に育ってくれた……


 「スースー……スースー……」

 「フフフ……安心して寝ちゃったわね」


 立会人として来ていた旦那も娘を抱っこする。


 「……おぎゃあ!おぎゃあ!おぎゃあ!」

 「……どうしよう!泣き出しちゃったよ!」


 私に抱かれていて、安心してスースー眠っていた娘は旦那に抱っこされた瞬間に何か気に食わなかったのか助産師さんが抱っこしていた時よりも大きな声で泣き出してしまう。


 いきなり泣き出したことに、普段は寡黙な旦那も珍しく慌てながら声を出して、「大丈夫でちゅよー。何もしないでちゅよー」と赤ちゃん言葉であやすが、「ぎやぁ!おぎゃあ!」と、さらに、大きな声で泣き始める。


 ーーフフっ。普段から、予期していないことがあっても「そうか」で終わらせるくらい動じない旦那が、娘が泣き出した時だけ、赤ちゃん言葉になるのよね。


 見かけた助産師さんが、娘を私の元に抱き抱えて連れて来てくれる。


 「スースー」

 

 娘は再び私の胸の中で眠り始める。


 それから、1ヶ月程して、無事に家に帰る。


 「スースー」

 「ふふふっ。疲れたわよね。初めて、あんなに大勢の大人たちに囲まれて、写真を撮ったりしたんだから。よく休んでね」

 「スースー」

 「ふふふっ」


 眠る娘が可愛くて、頭を撫でていると、娘が私の指を握ってくる。娘の顔を見て見ると、目をぱっちりと開けて私の顔を覗いていた。


 「ふふふっ」


 私の指を握って、じっと私の顔を見つめる娘が愛おしくて笑いかけると、娘も「へへー」と笑う。


 そして、半年もすると、毎日元気よく家中をハイハイして動き回っている。


 「あうあーー」

 「ちょっと!みう!ご飯よ!」


 娘は元気が良すぎて、ご飯の時間になっても家中をハイハイで進んでいく。お気に入りは、玄関で、1日の大半を玄関でぼーっとして過ごしている時もあります。


 「やぁ!どうだぁ。これで玄関へは行けないからご飯にしよう」

 「あうあーー」


 そんなことでは止まらないと言わんばかりに、みうは股の下を通り抜けていく。


 「あ!」

 「だうあー」

 「やられた……しょうがないか。気が済むまで待ってよ」


 最近では、旦那が抱っこしても泣くことは少なくなり、旦那もそれはもう普段は見せないようなニコニコ顔で抱っこする。


 1年が経つと辿々しいところは有りますが、歩いて、家の庭で遊んだり、前よりも活発的に動いています。


 「かーさ!こ・れ!」


 家の庭で遊んでいると、娘は綺麗な緑色の石を持って来て見せてくれる。


 ーー因みに、最初に言葉が喋れるようになって話してくれたのが、私の母さんと呼ぶ言葉だった。実家に帰省して家事をしていた時に、私が「母さん!」と呼ぶと近くにいた娘は、「かーさ」と真似しました。


 その時は、最初に私のことを呼んでくれて嬉しかったのもあったのですが、娘の成長が単純に嬉しくてみんなで喜び合いました。


 その後は、「ばーば」「おと」「ジジ・ぃ」を覚えました。


 娘の成長はとても早く、日に日に成長していきます。娘と一緒に過ごす日々はとても楽しく、あっという間に過ぎていきます。


 3歳を迎える時には、私もパートを始めたこともあり、早めに保育園に行くことになりました。


 保育園では、人見知りすることはなく、同い年の子や年上の友達ができていました。家に帰ってくると友達の話をよくしてくれます。楽しそうに話す娘を見ていると、自然とこちらも笑顔になります。


 娘は、「任せて!」と私が取り込んだ洗濯物を畳んでくれたりと簡単な家事ながらも手伝ってくれるようになりました。


 「母さん?だいじょうぶ?」


 なんて心配してくれる時もあります。


 「ふふふっ。大丈夫だよ」


 (ああ。私は幸せ者だな。こんなにも優しい娘が生まれて来てくれたんだから。それに、寡黙だけど思いやりの深い旦那にも出会えたし、本当に幸せだな)


 ここで映像は終わる。


 映像が終わると、照明がついて天の使いが現れる。


 「お疲れ様」

 「……お疲れ様です」

 「佐藤が映像を見る前に説明したと思うけど、この後は家族にあって、最期の挨拶をしてから、天国に案内する間に、少し先の家族や大切な人たちの未来を見てもらうことになってるけど、それでいいかな?希望ならこのまま天国に案内することもできるよ。最期の挨拶が辛いって人も中にはいるから……だから、少しでも悔いが残らないように遠慮せずに希望を言ってほしい」

 「……家族にあって、最期にお礼などを言いたいです。伝えたいことがいっぱいありますから……特に娘には伝えたいことや謝りたいことがいっぱいです」

 「わかった。では、いくよ」


 私の周りに神々しい光が集まり、私を包み込んでいく。


 つづく……  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る