第14話 大聖メノン
「てやんでい! どうしてこうも人間は決まり事が好きなんでしょうねえ、アレンさん」
「そうだねカミル君、ただ断食修業は危険な修業ゆえ段階が設けられているのだろうさ」
「なるほど、それはそうとアレンさん、腹減りましたね」
「そうだね、しかし私は修業中だから君は食べて来るがいい」
「いや、だって100日間断食の許可は下りなかったんでしょう?」
「うん、私の修業を決めるのは他の誰でもなく私自身のはずだから、このまま断食修業を開始するよ」
「はー、そう言うもんですか。
じゃあ、あっしは食べに行きますぜ」
「そうだね、私の分まで楽しんで来てくれたまえ」
カミルは一瞬アレンを心配したが、食欲の方が勝ったのでサッサと食堂にかけて行きました。
アレンはカミルを見送る事なく再び森に分け入って瞑想を始めたが、ここ数日間の疲れもあって石の上で寝入ってしまいました。
どの位の時が経っていたか、誰かがアレンの肩を揺すりました。
アレンが目を覚ますと、目の前に自分より少しだけ歳上と思われる青年が立っていました。
「見かけない方ですが、こんな所でどうなさいましたか?」
「寝入ってしまった様です。私は今日この断食郷に入門しましたアレンと申します」
「そうでしたか、私は同じく修行僧のメノンと言います。夕食は食べましたか?」
「いいえ」
それからアレンはこれまでの経緯をメノンと言う青年に話して聞かせました。
青年はとても感心して、噛み締めながらアレンの話しを聞き終えるとこう言いました。
「素晴らしいです、貴方の修業の成功を応援しましょう。ただこの山は夜は非常に冷え込みます故、どうか館の中でおやすみ下さい。夜が明けたらまたここで瞑想なさると良いでしょう」
「分かりました。話を聞いて下さりありがとうございました」
「こちらこそ」
と言い残し、青年は去ってゆきました。
アレンは青年の助言に従って、5の館に戻りました。
カミルが先に寝ていたので、その隣で寝る事にしました。
夜明け前、アレンが館を出ると一人の男がうやうやしく頭を下げて、彼を出迎えました。
「おはようございます、アレン様でございますね」
「はい、昨日入門したばかりのアレンです」
「100日間修業のお供をさせて頂くエンゲメネーと申します」
「は?100日間修業は昨日認められませんでしたよ!」
「いいえ、2の聖のソフィール様の命により参じておりますので間違いありません」
その時、朝日を背に別の男が現れました。
「アレンさん、おはようございます」
昨晩の青年でした。
エンゲメネーが振り返って、驚いて深々とお辞儀をしました。
「エンゲメネー君もおはよう!」
「あ、おはようございます」
「修業の件ですが私が許可したのです」
アレンが驚いて目をクリクリさせていると、エンゲメネーがこういったのでした。
「あぁ、そうか知らないのですね、この方はこの里の第一人者で大聖のメノン様ですよ」
どう見てもソフィールより30は若く見えたが、実は30歳年上だったのです。
修業の神通力によって若者に見えていたのです。
「アレンさん、私は貴方の魂の経歴を見通せるのです。残念ながらソフィールはそれが見えないので、貴方を他の輩と一緒にしてしまい、大変失礼をいたしました。貴方様は100日間修業を開始する資格がお有りです。私は恥ずかしながら75日までしか成功しておりません。貴方が成功した暁には、喜んで大聖の位をお譲りいたしますので、健康に留意しつつお励みください」
「そういう事でしたか。しかし一つだけ教えて下さい」
「何でしょうか?」
「修業中に死んだ場合、真の世界に於いて罪に問われますか?」
「そのことでしたら心配ありません。修業は聖なる目的故咎を問われないと伝えられております」
「そうですか、分かりました。私は必ず達成します」
「頼もしいです」
「アレンさーん!待って下さいよー!」
寝坊をしたカミルが血相変えて館から飛び出して来ました。
「カミル君おはよう! 修業が許可されたよ」
「そうですか、良かったですね」
「うん、さぁ行こう!」
アレン、狼のカミル、監視官のエンゲメネーは、大聖メノンに見送られて山に入ってゆきました。
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