第13話 入門

「お前か、弟子入り希望だな、2の聖様に会わせてやるから付いて来い!」


ここ断食郷は開祖エフリートによって開山された、断食宗門である。大聖を筆頭として2の聖から5の聖までが管理しており、残りの者達は見習いとして修練している。

弟子入り希望の見習いは、まず2の聖の面接によって素質を判断されて、合格すれば入門を許されるのだ。


「2の聖様、サフで御座います。入門希望の者を連れてまいりました」

「入るが良い」、2の聖が答えた。

「アレンと申します、断食入門を希望します」

2の聖はしばらくアレンを見つめた後、口を開いた。

「入門を認めよう、毎日の修練を5の聖に報告しなさい、1日1食の修練じゃ、良いか?」

「問題ありません」

「そうか、では頑張りなさい。下がってよろしい」

「ありがとうございます」


難しいテストがあると思っていたアレンは拍子抜けしてしまった。

「入門おめでとうございます」カミルが言った。 「ありがとう」

「あっしは断食しませんぜ」

「分かっているさ、君は2食食べ給え、修行僧では無いのだから」

「安心しました」

「私は早速山に入る、君はどうする?」

「もちろんお供しまさ、5の聖への挨拶はどうなさるんで?」

「それは夕刻で良かろう」

「分かりました」

5の聖の館はふもとだったので、アレンはそこから遠くない森に分け入って適当な石に坐ると、呼吸を整えはじめました。

入門者は普通、すぐさま空腹との戦いが始まるのでしたが、アレンは空腹慣れしていたので、スムーズに心を落ち着ける事が出来たのです。

兄達と母の顔が浮かんだ、彼等の顔を見たく無いからここへ来たのに。

私が王子だった事があって、魔女と恋に落ちただって、全然分からないや。

アレンは浮かぶ思いを退けるではなく認めていった。


その昔、開祖エフリートがこの山で100日間の断食修業に成功して開眼し、あらゆる神通力を得たそうです。

沢山の弟子が付いて彼を真似るのでしたが、その後100日間断食に成功した者はいませんでした。

アレンは少食を活かしてそれに挑戦するつもりだったのです。

アレンは日々唱えて自分に言い聞かせる文言を作りました。

「私は100日間断食に成功した聖です、私は迷える人々を救済する」

アレンは毎日山に入り、日の出から日没までただこれだけを唱え続けました。


修業第一日目の日没、アレンはフラフラ立ち上がりカミルに声をかけた。

カミルは日中、狩りをして食べたり川で遊んだりして楽しんだ後、アレンの瞑想する横で寝ていたが、声がかかるとスッと起きた。

「カミル君、今日はこれで山を降りよう」

「はい、アレンさん」


二人は山を降り、5の聖の館へ赴きました。

「新入門のアレンだな、私は5の聖のナンダルヴァだ、まず1日1食に慣れる事だ、1週間後それを続けていられたら読み書き、計算、歴史その他の学問修業を認めよう」

「いいえ、食事は今日から要りません」

「なんだと! それでは100日行開始の報告を済ませたと言うのか?」

「いいえ、報告が必要とは知りませんでした」

「それには監視官が必要なのだ。本当にやると言うなら2の聖に報告して監視官を付けて貰うがよい」

「はい、分かりました」

その様な経緯で二人は再び2の聖の館へ向かい山を登りました。

2の聖ソフィールは今日の簡素な食事を済ませて寛いでいました。

「聖様、今朝伺いましたアレンですがお話しがあります」

「何だね?」

「100日行開始の報告です」

「は、?」

ソフィールはポカンとしてアレンを見つめた。

「良く聞こえんかった、何だね?」

「100日行開始の報告です」

「アレンよ、君はよく分かっておらんようだ、説明してあげよう」

「はい」

「この里は5つの階層に分かれておってな、はじめは5の聖から一般的な教養を学ぶのだ。そして4の聖から占術、3の聖から共感術、植物や動物と会話する能力だ、そして2の聖、わしの所でやっと断食の挑戦を始めるのだ」

「そうでしたか、では5の修業からはじめなければならないと言う事ですね」

「そうじゃな」

「それは絶対ですか?」

「絶対では無いが限りなく絶対に近い」

「分かりました」


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