第12話 狼のカミル
森の精霊の話はようやく終盤に近づいていた。
「わしは天界の長から啓示を受けた。遠い未来、ヤントスが人間として生まれこの森にやって来る、その時森の強き動物の中から選んで、彼を守る人間にする様に、とな」
オオカミは。その言葉にとびついた
「なるほどな、そんで俺がその動物に選ばれたって訳だ。」
「そうだ」
「ありがてぇ、じゃあ早く俺を人間にしてくれ!」
「良かろう」
森の精霊はこの日の為に授かっていた霊力によってオオカミの周りに旋風を巻き起こした。
オオカミは霊力によって、たくましい人間の若者に変身した。
鼻のキズは精悍さを醸し出していた。
ウラハンからの贈り物として、武具と防具一式も旋風によって届けられたので、言われるともなしにオオカミはそれ等を装着した。
「俺は何と名乗れば良いかな?」
オオカミは森の精霊に尋ねた。
「カミルと名乗るがよい」
「カミルか、いい名前だ、ありがとよ」
カミルは人間に変身した自分の身体を眺めたり、その手で顔を触ったりして、満足そうに笑みを浮かべていた。
一連の物語を黙って聞いていたアレンが口を開いた。
「私がその王子だと?そんな話は知らない。私は貧乏農家の三男坊なのです」
「それは無理もない事です、人は生まれる時に忘却の泉を通り抜けて、それまでの数えきれない生涯を綺麗サッパリ忘れてから生まれて来ると言うのですから」
森の精霊は更に続けてこう言った。
「これから貴方は山で修業なされて全て思い出すでしょう。あるいはサンドラーチェ様に会ったら気付きがあるやも知れませんな」
アレンは釈然としなかったが、議論する気も無かったので先に進む事にした。
「オオカミの事は助けてくれてありがとう。私は断食の聖様に弟子入りする為に山へ向かいます」
「分かりました、お気を付けて。遂にこの日が来て私はとても光栄に感じております」
森の精霊はそう言うと、静かに森に溶け込んでいなくなりました。
アレンが軽く会釈して山の方へ向き直り歩み始めるとカミルがこう言った。
「アレン様、私がお守りします」
カミルは勝手にアレンに付き従う事になりました。
アレンは気にせず進み、1行は昨晩の門の所までたどり付いた。
門番頭のサフが威張った感じで立っていた。
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