第9話 課外授業⑥

 ドアを開いた先には、ピエロの衣装を見に纏った、笑う道化師がいた。

 がしかし、先ほどとは明らかに違う点があった。

 巨人かと錯覚してしまう程、大きくなっていたのだ。

 デカデカとした腹に、大きく膨らんだ胸、たんまりと肉のついた腕と足。

 そのデカさは、太一を野球ボールとするなら笑う道化師はスイカと考えて貰えればわかるだろう。

 兎に角、その大きさは先ほどまでとは比べ物にならないものになっていたのだ。


「この船岡山の迷宮のボスである、デブ公爵と合体したと考えるなら、〈地響き〉と〈超耐久〉、そして〈我を見よ〉が使えると想定して戦うべきね」

「ああ……だとしたら、とんでもなくキツイな」

「一応聞くけど、どうしてかしら?」

「……この戦いでは、さっきの様に無の状態になる事ができない。理由として、〈我を見よ〉があるからだ。コイツは自動発動で、全ての集中を自分に向ける。つまり、無の状態にならないって事だ。そうなると、笑う道化師の暗示をモロで喰らう事になる。残念ながら笑う道化師の攻撃力は、合体によって〈地響き〉で超強化されてるから、一発でも相当キツイ。で、当然暗示は防御にも使えるって考えると、攻撃もしづらい、のくせに〈超耐久〉、まさにクソゲーだ」

「詳しく説明ありがとう。……私達は何をすればいい?」

「兎に角アタック」

「「「了解」」」


 そうして、攻撃を仕掛けようとしたその刹那、大きな地震が起こった。

 迷宮内でカルパスが起きるなど聞いたことがない、つまりこれは、笑う道化師の力だ。

 探してみるとすぐに分かった、先程の一撃は、笑う道化師が足を振り下ろした衝撃によるものだったのだ。

 だがしかし、ここで大きな疑問点が残る。

 あの巨体で、この数秒の間でこんなにも大きな動きができるのは何故だ、と。

 そんな事を考えていると、笑う道化師が、その巨体からは到底不可解なスピードで、太一に突っ込んでくる。

 そしてここで、太一による一つの仮説が立つ。

 笑う道化師は、自己暗示をしているのではないか? と。


 ここで一旦能力をまとめてみよう。

 まず『暗示』、これは思い込ませることによって、威力や速度、認識などに変化を加えることができる。

 その次に『地響き』、これは足を思い切り地面に振り落とし、揺れを起こすと言うもの、がしかし、先程の地震は地響きではなく素だと思われる為、スキルを使ってきた瞬間が勝負の要になるだろう。

 そし次に『超耐久』、これは単純に硬くなるだけである。

 最後に〈我を見よ〉、これは強制的に注目を集める常時発動スキルで、こちら側の集中を切らすのが厄介な部分である。


 ここまで纏めても、太一は勝てるビジョンが思いつかない。

 正直何度やっても負け、勝てないのではないかと思い始めていた。

 がしかし、勝てなければ、時間経過で様々な理由から死ぬ。

 ならば、立ち向かうしかない。

 太一は、必死に頭を回しながら、集中を切らそうと必死に攻撃を仕掛ける笑う道化師の攻撃を避け続ける。


「チッ、絶対に葬り去ってやるから、覚悟しろよピエロ野郎!!」

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