第10話 課外授業⑦
太一には、実は策がある。
だかしかし、それは、この素早く大衝撃と言う混沌の中、出来る所業ではない。
せめて、一瞬でも隙が有れば、どうにかなるのだが……。
太一はダメ元で、赤羽に頼み込んでみる。
「なあ赤羽、一瞬隙を作ることは出来るか?」
「愚問ね。出来るわけないでしょ」
「そうだよな……とりあえず耐えるぞ、まだ終わったわけじゃない」
「そうね、頑張るわよ!!」
そうして、全員が一斉に笑う道化師に突っ込む。
赤羽は、素早いその剣で、衝撃による風圧などを斬り、道を作る。
そしてそれを、太一、颯太、間宮、苅野、が抜ける。
太一がフユで押し寄せる攻撃を守りながら近づき、赤羽が合流し、総攻撃を放つ。
がしかし、笑う道化師は一歩下がり、地面を勢いよく踏み、衝撃を起こし、太一達は吹っ飛ばされる。
笑う道化師の顔は変わらない、不気味な笑顔を浮かべたまま。
まるで、こちらの攻撃を嘲笑うかの様に。
やはり一瞬だけでもいいから、隙が欲しい。
そう考えていると、先程までふっとばされた衝撃で地面に倒れていた赤羽が起き上がる。
「さっきの事なんだけど、貴方のご自慢の盾でも投げればいいんじゃ無いかしら?」
「いや、それは防御を失う……失敗したら終わりだぞ?」
「じゃあ他に、策があるのかしら? このままでは、全滅するないと、私は思うわ」
確かに、赤羽の言う通りだ。
しかし、太一には、どうにも決めきれなかった。
なぜなら、今特攻できているのはフユの防御があるからで、失敗すれば、特攻すらできなくなり詰むからだ。
だがそれ以外に何があるのだろうか? このまま、意味のない特攻をして、耐久直だけ減って、はたしてそれに意味はあるのだろうか?
太一の下した判断は、自らに出せる限界のパンチでフユを殴り、セット1によって大きく、素早く、吹っ飛ばし、笑う道化師の注意を引く事だった。
見事笑う道化師はフユに釘付けになった。
太一はそのたった一度のチャンスを見逃さない。
「〈涼しげな一撃〉」
まず、右足に打ち込んだ。
鉄扇の熟練度は既に30を超えている。
故に、それは隕石がピンポイトで突っ込んできたかと錯覚する様な、化け物武器まで育っていた。
笑う道化師は巨体の為、拡散する衝撃はとても大きくなる。
がしかし、笑う道化師は尚もこの程度かと余裕の表情を浮かべている。
太一はそれを無視して、別の場所にもう一発ぶち込む。
それも余裕の表情で受ける笑う道化師だったが、次の瞬間、苦悶を浮かべる。
「〈涼しげな一撃〉〈涼しげな一撃〉〈涼しげな一撃〉〈涼しげな一撃〉……」
何が起きっているのか、それは、〈涼しげな一撃〉が進化した事による新たな特性が関係しているのだ。
それは、〈連鎖〉。
二つの衝撃がぶつかり合うと、そのぶつかった点から新たに〈涼しげな一撃〉が発動する。
この特性を利用して、太一は、何百発も打ち込むことによって、『永遠に終わらない〈涼しげな一撃〉』を完成させたのだ。
その目論見は見事成功し、笑う道化師は遂に立ってる事もまま成らず、『ドォン!』と音を立てて、床に倒れた。
生きて帰れる事、バグを倒せた事に、赤羽、颯太、間宮、苅野が喜ぶ。
太一も喜ぼうとしたが、これはまだ終わっていないと、太一は知っていた。
そう、この迷宮のボスは倒されると、平均的な成人男性程まで小さくなり、元の姿の時のパワーのまま攻撃してくる。
つまり、元の姿の動きづらさを無くし、小さくなる事で攻撃の的を減らす。
その様に変化するのだ。
合体したのなら、そうなる筈だ。
予想通り、笑う道化師は、段々と小さくなる。
変化が終わった笑う道化師は、ピエロの衣装を着た、筋肉質な成人男性の様な姿になっていた。
「凄いなぁ! でもぉ、これで終わりぃ。楽しいショウはこれで終わりぃ!!」
「ああ、終わりだな。テメェがな!!」
こうして、笑う道化師とのラストバトルが始まった。
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