第6話 課外授業③
赤羽は今この瞬間に、その幼少期から培った知識を持って作戦を決定した。
太一が戻ってくるまでの耐久戦。
笑う道化師の〈巨大迷路の案内人〉には、大きな特徴がある。
それは、迷路をクリアすると、笑う道化師を一撃で消すことの出来る、一回限りの剣が入手可能だからだ。
赤羽は、〈見通す者〉さえ有れば、ゴールは容易だと判断したのだ。
何故赤羽が〈見通す者〉を知っているかと言うと、太一が、今回何かあった時の為に赤羽に自分の武器のスキルを伝えていた為だ。
赤羽は、一つ大きく深呼吸をして、〈雷電炎極〉を発動する。
これには理由があり、実は笑う道化師は遠距離からの攻撃を全て避けてしまう為、近接戦が必須だからだ。
殆どの冒険者は、間合いを詰めるこのステップで挫折して、笑う道化師の被害者の1人になる。
まずは一歩と、赤羽は笑みを浮かべる。
笑う道化師は、そんな赤羽に対して、怒涛の攻めを持って反撃する。
「ギギギ!」
それを赤羽は軽やかに、美しく捌く。
久しぶりの強敵に、嬉しいのか、笑う道化師は喜びの声をあげる。
いずれ笑う道化師は、どこまで出来るかな? と、赤羽を試すかのようにペースを段々と上げていく。
流石に赤羽はキツくなってくるが、ここで折れるわけにはいかないと、気を張り直す。
心が落ち着いたからか、赤羽に余裕が出来た。
その一瞬で、赤羽は深い集中をして、〈一蓮托生〉をより深く繋げる。
そして、それは恐ろしい程に深く、濃く燃え盛るオーラを纏う事になった。
赤羽は、これが大乱闘で酒井らが使っていた120%なのだと実感した。
「特待生のせいで隠れちゃってるけど……私、強いのよね」
赤羽はそう言って、なんとも自信に満ちた目で、微笑みながら、笑う道化師に顔を向けた。
笑う道化師は、楽しくなってきたか、段々と上げるのをやめて、全力を出してくる。
すると笑う道化師は、まるで腕が増えたのかと錯覚してしまう程早くなり、トラックに突っ込まれたのかと思うような威力の攻撃を繰り出してくる。
赤羽はそれに、余裕を持った笑みで捌き切る。
がしかし、そんなには上手くいってくれない。
笑う道化師は、早く攻撃をする事で、切り札を隠していたのだ。
それは、赤羽に見事炸裂……することはなかった。
赤羽は幼い頃から学んだ迷宮の知識から、影からくる不可避の攻撃を読んでいたのだ。
そして今度は私の番だと、赤羽は自分の切り札を使う。
「〈不死鳥〉ッ!!」」
取った! と、赤羽も、その後ろで他のモンスターの対応や援護をしていた颯太達も、そう思った。
だが笑う道化師は、やはり、迷宮で最悪と言われる『バグ』だった。
不可避の一撃は、もう一回放たれた。
後ろの颯太達が駆けつける事は無理だ。
赤羽も流石に、予想外の不可避の攻撃に対応できなかった。
だから笑う道化師は、勝ったと思った。
しかしそれは決して当たる事はない。
「お前の迷路、クソ簡単だな」
最強の盾を持つ男によって。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます