第5話 課外授業②

 「ここ……どこだ?」

 

 太一が目を開けると、そこには高層マンションも顔負けの高さを誇る壁が立ちそびえていた。

 自分を取り囲むように、3枚の壁が有り、一方向だけ無い、そんな意味のわからない空間。

 何故こんな事になったのか? それは30分前程に遡る。

 

 太一はもはや無双状態だった。

 敵が現れた瞬間に〈見通す者〉を使用して、囲まれた場合は、鉄線の〈涼しげな一撃〉を使用、現在の熟練度は10を超えており、どのくらいの威力になってるかと言うと、トラックが思いっきり突っ込んでくるレベルまで強くなっている。

 モンスターはトラックに突っ込まれたところで死んでくれないが、急所に当たれば別だ。

 例えば、いくら腕や胴体が殴られても平気だが、顎などをやられれば一発で気絶してしまうだろう。

 〈見通す者〉で気づいたが、モンスターには核と言うものがある。

 この核は、直接される以外に、一定以上のダメージが、体に蓄積された時に破壊される。

 この核は、とんでもなく小さい為、普通は見つけられず蓄積量で狙っていくのだと思うのだが、〈見通す者〉で見えてしまう太一は、それを一発で叩くことができる。

 よって太一は、どんなモンスターも一発で潰していった。

 

 だからといって、太一も決して油断していたわけじゃ無い。

 だがしかし、少しばかり余裕を持ってしまったのだ、その分気が抜けた。

 だから、“バグ”の前触れに気づけなかった。

 太一が瞬きをしたその刹那、たったそれだけの時間だが、太一達を絶望させるには十分な時間だった。


「ギ……ギア…………〈巨大迷路の案内人〉」

「?! まさか……バグNo.7、笑う道化師……!? だとしたら! おい、俺から離れろ!!」


 記憶通りならば、笑う道化師のスキル、〈巨大迷路の案内人〉は、飛ばされる人数が少ない方が有利だった筈である。

 そんな事は知らない颯太達は困惑するが、唯一理解した赤羽は、死力を持って遠ざける。


「最新部で合流しよう!!」

「了解」


 そして、笑う道化師の〈巨大迷路の案内人〉が完全に発動し切る。


 そして、太一は消えた。

 がしかし、笑う道化師は消えることはなかった。

 そう、これが笑う道化師の能力。

 どう言うことかと言うと、笑う道化師は、必ず1人を巨大迷路に送る能力を持っており、これは、笑う道化師に近い程喰らいやすい、つまり、『先頭を行くトップアタッカーを奪われる』と言う事だ。

 そして、このトップアタッカーを奪われたまま、残されたメンバーは笑う道化師と戦わなければならない、飛ばされる人数が数ない方が良いのは、笑う道化師にたった一人で立ち向かうなどと言う地獄を見る可能性があるからだ。

 飛ばされた先は巨大迷路、この迷路は、飛ばされなかったメンバーが、笑う道化師に負けた時点で崩壊して、飛ばされたメンバーは死ぬ。

 つまり、笑う道化師は、『トップアタッカーを奪い』『残ったメンバーを潰す』と言う、なんとも卑怯な手段を使ってくるクソピエロなのだ。


 何故Cランク程度にこの敵が、と赤羽は歯軋りをする。

 バグは、迷宮の難易度によって様々変化する。

 例えばCランクとAランクを比較すると、Cランクでは、バグの出現率は僅か10%であるのに対して、Aランクでは、50%と、なんとも理不尽な難易度に跳ね上がる。

 バグの強さも跳ね上がったりする。

 幸いにも、Cランクは弱い部類だ。

 だがしかしバグはバグ、楽に勝てる相手ではない。


 赤羽は、ギュッと剣を握りしめて、鋭い視線で、笑うピエロに立ち向かう。


 一方太一は、とんでもない大きさの迷路を〈見通す者〉でチートをしながら、着々と進んでいった。

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