第三節 課外学習
第1話 課外授業説明
「……以上が明日の時間割だ、さて……そろそろお前らが楽しみにしている、課外授業……基迷宮攻略について話そう!」
「「……っ!!」」
刹那、教室は興奮と緊張で満たされる。
鏑木は、良く食いつくなぁ〜と言う顔をしながら、説明を開始する。
「迷宮の恐ろしさやらなんやらはお前らを洗脳するレベルで教えて来たが、改めて復習だ。まず今回攻略する迷宮の難易度を言ってみろ」
すると、生き生きとした男子生徒が挙手をして答える。
「Cです!」
「そう、その通りだ。パーティーを組んで、しっかりと攻略しようとすれば、それこそ敵では無いが……例えばはぐれてソロ探索にでもなれば……と言う事だ。Cランク迷宮のCは、冒険者の間で、challengeと言う意味が込められていると言われている。これは、本腰を入れてプロを目指そうとした冒険者見習いの、最初の壁である事を表している。皆、気を抜かぬように!!」
「「はい!!」」
鏑木先生お得意の喝入れで、クラスにやる気が満ちる。
「開始までの期間、我々教師陣は、今までの数倍……いや、千倍の厳しさで指導していく! だがしかし、それで満足するなよ? 自主鍛錬も忘れるな! 有名な家庭教師でもいい、本を読んでもいい、ひたすら剣を振るうでもいい、要は、お前らは迷宮に挑むと言う覚悟を持ってこの期間を過ごしてほしいと言う訳だ! わかったか?!」
「「はい!!」」
先程と同じように、鏑木の喝によって、全員のやる気は有頂天まで登っていた。
「ここまでのやる気があるなら、もはや心配は要らないな、ではHRを終了する。くれぐれも、体だけは壊すなよ」
そう言って、鏑木は教室を出ていく。
これより、放課後が始まる。
太一は、教室から退出して、保健室へ向かう。
三回ノックをして、中に入ると、保健室同盟の颯太と間宮、新たに加入した苅野……そして、今にも死にそうな表情でベットに横たわる斉川が待っていた。
「雑談兼見舞いに来ました。……斉川先輩、マジで大丈夫ですか?」
「ダメよ……私もうダメ!!」
「……一応怪我は完治してるんですよね?」
「こ、こ、ろ、の、き、ず、よおおおおお!」
「は、はいぃ」
「良い?! 私の拳は、あらゆる潰しちゃいけない所を潰して来た、それが私の生きがいなの! あんっなに潰しがいのありそうな化け物逃して、さらに刀であしらわれて何も抱かずにゴートューザ保健室ってどーゆー意味?! とりあえずお前の潰す!!」
「させてたまるか?!」
斉川の拳が、悲劇を引き起こそうとしたその刹那、それをパシッと音を立て、拳を受け止める……酒井の姿があった。
「落ち着け変態」
「チッ、酒井ィ、テメェが一番気に食わない!! 一年生の時、主席代表スピーチで早速潰してやろうとしたら、テメェ御自慢の旗で逆に吹っ飛ばしてくれたなぁ!! 今ここでリベンジしてやろうか!!」
「やれるもんならやってみろ」
先程までもう立ち直れないレベルで落ち込んでた斉川は、それまでが嘘のように元気に、活発に、酒井のアソコを狙い激闘を繰り広げる。
酒井はそれを、適当にあしらいながら、太一の方を向く。
「上野、後で特別教室来い、お前に〈共鳴〉を教えてやる。約束通りな」
太一は、目の前の壮絶な戦いのせいで、唖然とし、言葉を発せずにいた。
酒井に話しかけられている事に気づいた太一は、激しく頷きながら、はいと答えた。
「じゃ、待ってるからな……、いい加減にしろっ!!」
酒井は、いい加減めんどくさくなったのか、斉川の腹にパンチを打ち込む。
斉川は、まるで少年マンガかのように、「ガハッ!」とか言って気絶する。
「保健室で怪我人を出さないでくださ〜い!」
「悪りぃ悪りぃ」
時雨がぷんすかしていると、酒井は手を合わせてごめんなさいとジェスチャーしながら、保健室を出て行った。
「さ……がぁ……い゛……かく……ご……しとけ……よ!」
完全に白目を剥きながら、尚も執念の思いで言葉を吐く斉川に、俺はとてつもない恐怖感と、この人だけは敵に回しちゃいけないと心からそう思った。
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