第12話 実践(?)②

 目が覚めると、そこは見知らぬ天井だった。

 数秒落ち着き、寝心地の悪いベットに寝転がって居る事を把握する。

 俺は起き上がり、ベットの置かれている寝室と思わしき部屋から、ドアを開けて出る。

 開けた先には、円形状のテーブルと、それを囲む様にして、椅子に腰掛ける、6人の男女が居た。

 お年寄りが2名、中年の男女、小さな子供が二人いる事から、三世帯家族と思われる。


 6人は、俺を見るなり、驚きと歓喜の表情と反応をもって俺を見た。

 どうやら、話によると、俺はこの村『アカシア』の狩場である場所に倒れていたらしい。

 俺は拾ってくれた事に感謝して、何か手伝える事はないかと聞いた。


「ふむ……ああ、そういえば、節子、有馬が怪我して狩りに出れないんだよな? やってもらうってのはどうだ?」

「いいわね! お願いできるかしら?」

「勿論です。やり方とか教えて貰えますか?」


 それから1時間程、とても細かい狩りのやり方を教わった。

 何回か頭の中で復習して、いざ本番、狩りに挑む。


 狩りを始めて3時間、獲物も多く採れて、とても順調に進んだ。

 時間の為、拾ってもらった家に帰ろうとしたその瞬間だった。


「ガルァラァァァァァァァァァァァアア!!」


 鼓膜が破れるかの様な、激しい絶叫が、とても大きな鶏の様な何かによって放たれた。

 木々は揺れ、草は靡き、人々の悲鳴が聞こえた。

 やがて、皆は避難をし始める、どうやらこの鶏の様な生物はイレギュラーな存在な様だ。

 自分も逃げようとしたその刹那、何故冒険者になりたいかの理由を思い出す。


 


 俺は、フユを具現化して、鉄扇を取り出す。

 

「行くぞ、フユ!!」

『いえっさ! ご主人様!』


 俺は、フユを手放し、鶏の懐に入り込もうと、走り出す。

 それを防ぐかの様に、鶏は羽をバタバタとさせ浮かび、その羽ばたきを利用して、風圧による攻撃をしてくる。

 咄嗟の判断で鉄扇を開き、自動で《貫通無効》が発動し、風圧を弾く。

 だが、これで終わりでは無く、鶏は足で踏み潰そうとしてくる。

 流石に対応しきれなかったが、フユが目の前に現れ、その攻撃を弾く。

 がしかし、その一撃でフユの耐久値は50削られてしまう。

 鉄扇はあらゆる攻撃と書いてあるが、その能力は過信できない。

 その為、絶対的保証のあるフユを防御として考える訳だが、そのフユが後19発で沈んでしまうというのは、由々しき事態だ。


 なぜなら、この先頭は持久戦だからである。


 イマイチ攻めきれない鶏と、決定打の無い俺、有利なのは鶏だ。

 攻めきれない要因、盾を壊して仕舞えば勝てる鶏に対して、俺の勝利条件は、この明らかに強い鶏に通じそうな一撃である。

 唯一の攻撃である、《涼しげな一撃》では、確実に倒せない。

 俺は焦りながら、ある一つの選択肢にたどり着く。


 〈一蓮托生〉

 

 ただのFランクの剣をあそこまで強めた、あの技を。

 だがしかし、俺にはその技の発動のビジョンが思い浮かばない。

 だからこそ、俺は命懸けの勝負に出る事にした。


「〈防御壁展開+〉〈防御壁展開+〉〈防御壁展開+〉〈防御壁展開+〉〈防御壁展開+〉……」

 

 俺は合計で、19回使用した。

 380秒間の、無敵時間を作ったのだ。

 この時間内のみ、何も考えず、集中することができる。

 失敗すれば防御手段は消滅。

 まさに無謀な賭け……がしかし、そこまでやらなければ、この鶏にはとても勝てない!


『勝つぞ、フユ』

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