第13話 実践(?)③

 俺は、巴ティーの〈一蓮托生〉を、繊細に、より深く、集中し、思い出す。

 巴ティーは、目を閉じ、とても集中している様に見えた。

 つまり、〈一蓮托生〉は、深い集中状態で発動できる技?

 俺は、雑念を捨て、極度の集中状態になる。


 ……

 

 ………

 

 …………


 ……………



 ダメだった。

 どうやら、集中がスイッチになり得る訳では無い様だ。

 残り280秒。

 100秒も使ってしまったが、得られた成果もあった。

 先程ダメだったと言ったが、何か、沸き立つ物を感じた。

 集中した時に得られる物とは何だ……、無だ、一才の邪念が無い、一切の『壁』がないんだ。

 そうだ、〈一蓮托生〉の意味は何だ、行動を、運命を共にする事だ。

 壁が無い状態では、装備との意思が繋がり易くなる……だからこそ先程沸き立つ物を感じたのだろう。

 ならば簡単だ。

 何故か? 俺とフユは、恐らくこの世のどんな武器よりも、深く繋がっていると、絶対の自信があるからだ。


『フユ、俺は今から賭けに出る。だけどこれは無謀じゃ無い。お前を信じた。絶対的な確信を持った賭けだ。でも、これはまたお前を危険に晒してしまうかもしれない、それでも、乗ってくれるか?』

『勿論だよ! ご主人様! あの日、赤髪の人に押し負けた時、悔しかった……、だからこそ、この戦いだけは負けたく無い!』


 それを聞いた俺は、絶対の自信を持って、耐久値を50のみ残し、〈防御壁展開〉を解除した。


「……〈一蓮托生〉——ッ!!」


 俺は、祈りすらせずに、只、スキルが発動するその時を待った。

 そして、その時は来た。


 俺を覆う様に青いオーラが溢れ出し、同時に、フユにも凄まじい程の青のオーラが溢れ出した。


 鶏の足が、迫ってくる。

 それをフユで防ぐ。

 がしかし、フユの耐久力は、1ミリも減っていない。

 俺は鶏の近くへと駆け出す。

 フユも付いてくる。

 鶏は何としてでも止めようと、足や羽ばたきだけでは無く、翼を直接ぶつけてきたり、地ならしをしてきたり、仕舞いには炎まで吐き出したが……全て、1ミリも耐久値を減らす事なく、フユで防ぎ切った。

 そして、遂に、鶏の目の前まで迫った。

 途中から逃げていた鶏も、疲れて立ち止まっている。

 がしかし、鶏は内心安心感があった。

 何故なら、俺に有効打が未だ存在していないと思っているからだ。

 だがそれは、完全な勘違いだ。

 0を1にするのは、とても苦労する。

 反対に、1から2にするのは、簡単だったりする。

 深く繋がり合うのが、どんな状態なのか、心境なのか、俺は知っている。


「鉄扇、一言すら話してない、そもそも心があるのかわから無いけど、お前に関する歴史や本、使い方とか、色々調べたよ、めちゃくちゃ興奮した。そんなお前を、今ここで、使いたいんだ。お願いだ、力を貸してくれ!! 《一蓮托生》——ッ!!」


 その願いが通じたのか、鉄扇に青色のオーラが纏わる。

 鉄扇から僅かながら温もりを感じた。

 俺は、鉄扇に、感謝を伝えた。

 深呼吸して、鉄扇を閉じる。

 鶏は、逃げても追い付かれる事を悟り、守りの体制に移る。

 大きな翼を、鶏は、初めて防御として自らを守る様にする。

 俺は、最後まで戦い抜いた鶏に敬意を抱き、せめて一撃で倒そうと、深く深く集中して……その一撃を放つ。


「〈涼しげな一撃〉」


 ————————ッ!!!!!!


 その一撃は、鶏の翼を貫き、その巨体に、とても大きな風穴を開けた。

 鶏は、満足した様な顔で消えて行き、やがて極光を放つ。

 俺はその光に包まれ、意識を失い——


「は、早すぎないか?」


 教室で目覚めた。

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