第6話 武器トレーニング
入学式の月曜日まで後二日、平日が終わり土曜日がやって来た。
今日は、新たに手に入れた鉄扇の性能を確かめる事にしていた。
俺は、あの日理事長先生に『ケースがあった方がいいだろう』と言う事で、貰った明らかに高級そうなケースを開き、鉄扇を取り出す。
改めて鉄扇を観察してみる
一言で表すならば、『扇子を鉄で作った』と言う所だろう。
がしかし、この鉄扇は、それだけでは終わらない程……美しかった。
まるでこの世の物とは思えない繊細さと色使い、表現方法のなされた花びらが鮮やかに舞い散る絵、これを名画と呼ばなければ何と呼べば良いという程の出来——まさに神業。
ついつい五分間も見てしまった。
俺はこれ以上は時間が勿体無いと、早速トレーニング、
まずは〈挑発〉だ。
試しにフユに使ってみる。
俺は〈テレパシー〉を使い、今の業態を聞くと、『ご主人様じゃなければ突進しそう』と言っていた。
フユはとても強いが、ランクはまだまだだ。
そういえば赤羽がなんでもすると言っていたのを思い出した。
今度実験に手伝ってもらうのをお願いにしようかなと思いながら、低ランクに対してこれなら高ランク相手にはどうなるんだろうとワクワクする。
次に『鉄下駄』を使用してみる。
覚悟を決めて、最高負荷にしてみた、すると、「うぉっ?!」と声が出るほどの負荷が掛かり、立っていられなくなる。
地面に平伏し、やばいと思った俺は、負荷を0にする。
息を切らし、汗だくなのを考慮して、一度休む。
そして5分後、俺は少しずつ負荷を上げていく。
最初は、そこまで気にならなかった。
二回目は、少し負荷を感じるようになった。
三回目、少しだけキツくなって来た。
四回目、まるで熱を出している時のように、ダラダラとしか動けなくなる。
五回目、全身に錘をつけているかの様な服を感じる、これ以上は先程の様になると思った俺は、ここで使用をストップする。
どうやら完全にトレーニング兼制御装置の様だ。
それを理解した俺は、常時三回目、体調が悪い時に二回目を使用する事にした。
自らに負荷をかけながら、次に〈涼しげな一撃〉を使用する。
これは、フユに受けてもらい、耐久値がどの程度減るかで調査する。
『ごめんな、フユ』
『大丈夫だよ! ご主人様! それに、新たな仲間の事もよく知っておきたいし!』
優しいペットの亀のフユに癒されながら、俺は扇を閉じ、精神を集中させる。
そして、フユの丁度縦軸と横軸が交わる丁度良い場所を——軽く叩く。
するとその刹那、フユが指輪に戻る。
実験も兼ねて、〈見通す者〉を使用する。
するとしっかりとステータスを見れた、成功した様だ。
ステータスを見ると、耐久値が0になっていた。
フユに感想を書いてみる。
『どうだった? そんなに強い衝撃だったのか?』
『んー、確かに衝撃はあったんだけど……どっちかっていうと広がっていった? 感じかな』
つまりこのスキルは、衝撃を広範囲に拡散する効力を持つと言う事だ。
全てのスキルを確認した俺は、鉄扇を仰ぎ涼む。
これは効果か分からないが、普通の扇子より涼しく、心地よい風だった気がした。
そのまま実験を終え、俺は入学式に備え、できる限りのトレーニングをした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます