第12話 激戦②

『さてと、どうする、フユ』

『セット2とセット3は今の攻撃を見た感じ、通じなさそうです!』

『まじかぁ……』


 さっきから言っている『セット』と言うのは、簡単に言えば命令の塊だ。

 俺はある日見つけてしまった。

 フユの命令に+補正、と言う所に、『重複可能』の文字がある事に。

 ならばと考えた、これは言葉は違うが今は同じな命令を言い、それを特定の言葉を言った時に発動する様にすればどうなるのかと。

 何故そんな事をするか、それは、そうする事によって、一個一個の命令に+補正が掛かるからだ。

 そして、見事成功した。

 セット1は防御と突進対策だ。

 当然モンスターは初期特攻してくる奴が多い、そんな奴対策のセットが1だ。

 主な命令内容として、『俺がピンチになるまではその場を離れる』『俺がピンチになったら目の前に現れる』『相手の速度と力を利用して、弾き返す』これを言い方を変えて命令し続けた。

 そして、今回この様に、初期特攻をして来た赤羽の攻撃を見事弾き返すことができた。

 がしかし、このセット1には重大な欠点がある。

 相手からの衝撃で、耐久値が減るのだ。

 赤羽の先ほどの〔雷電炎極〕は、フユの盾にある様な、スキルとして発動している。

 あの剣の名前は、〈不死鳥の剣〉、最終的に全ての炎系スキルが使えるようになるまさにチート剣だ。

 そして、〔雷電炎極〕が使えると言うことは、間違いなく2段階以上、その場合……最も対人戦で有利と言われているあのスキルが使えると言うことだ。

 おそらく使うだろう。


 そしてその予感は的中した。


「貴方、その目からして私が今からやる事がわかった様ね? でも無駄よ、何処から来るかわからない攻撃じゃ……ご自慢の縦でもどうしようもないでしょう? 見せてあげるわ、〔陽炎かげろう〕」


 その次の瞬間、赤羽は消える。

 そして——


「ハァッ!!」

 

 赤羽の強烈な一撃を、間一髪で俺の目の前に現れたフユガ塞ぐ。

 そして攻撃の塞がれた赤羽は、また消える。


「あら、また耐えたのね? でも、その盾だって無制限で守れるわけじゃないでしょう? 私の様に」


 確かにそうだ、フユの耐久力は現時点で10減っている。

 このままいけば耐久力が切れて、不利になるだろう。

 がしかし、赤羽にも制限はある様だ。

 ならばそれがなんなのかわからないが、それに賭けてみるしかない。


「何言ってんだ、お前の攻撃2回も防いだ超凄い盾だぜ? 制限無しに使えるに決まってんだろ!」


 まずはこちらには余裕がある事をアピールして相手を揺さぶってみる。

 がしかし、交渉術やらなんやら仕込まれて来たからか、あちらのお嬢様はハッタリねと軽く見破る。

 俺はふとため息をつく。


「あら? ため息なんてどうしたの? 本当は余裕なんて無いくせに……いまなら降参で許してあげるわよ?」


 確かに余裕がない、実際、本当に策が無いのだ。

 このまま行ってはジリ貧……本当に降参してしまおうか。


『ダメだよ』


 初めて、初めてフユの厳しい声を聞いた。

 その声には、悔しさや怒り、様々なものが混ざっていた。

 

『たった2ヶ月だけど、ご主人様は本当に頑張ったよ。筋トレ意外にも、沢山頑張ったよね。私を最大限活かす方法、迷宮に関する知識調達、剣の応用方法、あらゆる行動のパターン化による対策。そして私との交流。いきなり盾になった変な亀を、ここまで育ててくれた……。私は私なりにご主人様の力になりたい。ご主人様は私の事を気にして実行に移してない五つ目の作戦があるよね?』

『……っ?! でもそれは、耐久値が0になるかもしれないし、当たるかどうか分からないんだぞ? それにお前は、小さい頃から沢山の思い出を作り上げてきた、大事なペットであり、家族だ。どんな形でも関係ない。だからこそ、やっぱり……』

『大丈夫だよ!! 私だって生半可な覚悟で言ってるわけじゃないし、耐久値が0になっても私は指輪に戻るだけ……だから、お願い。二人で勝とう』


 これ以上問い詰めるのは違うと思った。

 だから俺は、行くぞ、とだけ言って、盾を指輪に変形させて、思いっきり空に向かって指輪を投げた。

 それを見た赤羽は、盾は何処に消えたのかと、先程の攻撃を警戒し、戦闘スタイルを変更する。

 制限時間は先程削ってしまった分があるから大体3分位……。

 

 一息付き、俺は剣を構える。

 それを見た赤羽は、遂に俺が動くのを確認し、警戒を始める。


 俺は地面を蹴り、その場から消え、赤羽に迫った。


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