第11話 激戦①

『お待たせいたしました! 今年もやってきました、推薦生VS一般試験主席!!』

「「オオオオオオオオオオオオ!!」」

『それではご紹介します! 一人目は一般試験主席の、史上最年少女冒険者にして、今世代最強と名高い、赤羽夏美! 又の名を〈不死鳥〉!!』


 その司会の熱量に、会場が大盛り上がりする。

 そして、舞台上に、赤い髪を肩にかかるまで伸ばし、黄色い目をその身に宿す、完璧美少女が登場すると、会場は溢れんばかりの〈不死鳥〉コールをする。


『さて、続きまして推薦生のご紹介です! 今回剣以外に、なんと盾を武器として登録しました!! 前代未聞の剣士がここに登場! 上野太一!!』


 その瞬間、会場はシーンと静まって、その後ガヤガヤしだいした。

 主に二つのことだ。

 一つは、単純に誰? と言う派閥、もう一つは、なんで盾? と言う派閥だ。

 そんなガヤりは置いておいて、俺は舞台上に登場し、試合前のインタビューをうける。

 まずは赤羽からだ。

 正直、赤羽が俺の事を馬鹿にしてきたわけでは無いし、現時点ではただの八つ当たりな為、もしもここで特別何かが無ければ、普通に戦って罪の懺悔という意味で盾を使わず正々堂々戦うが……。


「皆さんこんにちわ、赤羽財閥の赤羽夏美です。いつもお世話になっています」


 なるほど、普通だ。

 財閥とかは自己紹介だしなんでも無いだろう、ぼかそうとしてわるかっ……。


「正直、推薦生が来ると聞いてワクワクしていましたが、居たのは盾を登録しているただの愚か者でした、貴重な時間を奪われたので、容赦なくボコそうと思います」


 そう言うと、会場は笑いに包まれた。

 なるほど、俺を笑いのダシにしたか。

 ……許されないな?


「それでは次に、上野太一……さん?」


 司会は、俺が明らかにやばい顔をしてるのを悟ると、少し引きながらマイクを渡してくる。


「最初に言っておきます。〈不死鳥〉さん、俺は貴方をボッコボコにします」


 その言葉に、観客がは? となる。

 そして、当人の赤羽は……いますぐにでも殺すぞと言う目をしていた。

 そりゃ当然だ、こんな公の場で、笑いのダシにした奴に思いっきり馬鹿にされたのだ、恥をかかされたも同然、当然許せないだろう。 

 だがそれは俺も同じだ、いきなり愚か者やらなんやら言われてキレないやつは居ないだろう?

 赤羽は俺がそう言う事を思っているのを察したのか、じゃあこうしようと、提案をしてきた。


「そんなに自信があるなら賭けをしましょうよ! 推薦生は合格した後も何かと待遇がいいでしょう? だから私が勝ったら推薦生の席を頂戴? そのかわり負けたらなんでもしてあげるわ!」


 なるほどな、一見キレてる様に見えて冷静に此方に交渉を持ちかけてきている。

 校内では、財力や権力、その全てが通用しない、冒険者としての位が大事なのだ。

 その時、推薦生と言うのは強い。

 中々入れない場所にも入れたり、生徒会に無条件で入れたり、特典が盛り沢山なのだ。

 当然負けるはずはないと確信しているからこそ、相手が乗りやすい最大限の交換条件、『なんでもしてあげる』を選んだのだろう。

 なるほど、流石は財閥の娘と言ったところか。

 と、そんな風に感心していると、彼女は早くYESかNOを家と言う目でこちらを見ていた。

 まあ財閥の令嬢を好きにできるとしたら行動の幅が広がっていいだろう、と考えた俺は、その誘いに乗ることにした。

 それに満足した赤羽は、試合を始める様に司会に言い、そして……試合の準備が整った。


 お互いに目を合わせ、睨み合い——


『スタート!!』

「剣技——〔雷電炎極〕」

「読めてるわ。フユ!! 行け!!」


 スタート直後から速攻を掛けてきた赤羽に対応できず、盾を構える太一、と言う風に、皆は見えてるだろう。

 どうせただの防御、そう思い突っ込んだのが、赤羽の最大のミスだ。


『フユ、セット1だ』


 俺がそう命令すると、フユは俺の目の前から消える。


「——っ?!」


 一瞬とまどったが、防御を捨てたのを見て、赤羽は自暴自棄になったのだと自己完結した。

 そして、そのまま突進を続け、俺の首めがけてその手に握る剣を横長で狙う。


「残念、その判断は……悪手だっ!!」


 その刹那、突如目の前に現れた何かにやって、赤羽が吹っ飛んだ。


「なに……が……?」


 壁に思いっきりぶつかり、ダメージを受けながらも辛うじて立ち上がった赤羽は、何があったのかと心底不思議そうに聞いた。


「おいおい、何も不思議じゃないだろう? 俺の盾が……お前より大きな力でお前を制しただけだろうが」


 ただの無機物に劣ると言う、最大の屈辱を受けた赤羽は、謎のオーラを体からあふれている様に見えた。

 完全にキレたのである。


「お前だけは……私の名誉に掛けて殺す!!」

「ああ、俺も流石に盾だけ使って勝つつもりは無いからな……本気でぶつかろうじゃないか」


 こうして、最初から大きな衝撃を与え始まった戦いは、第二ラウンドに突入した。

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