第7話 俺は冒険者になる②
箱の中身は、薄茶色の封筒と、透明な一本の剣が入っていた。
俺はその剣がそれはもう気になって気になってしょうがなかったが、この薄茶色の封筒から開けることにした。
何故なら、俺には剣に対する専門的なる知識が無く、下手に取り扱って壊す訳には行かないからだ。
その為、薄茶色の封筒から、説明書やら何やらが無いかを確認する事にしたのだ。
すると案の定折り畳まれた書類が入っていた……それと10万円が。
これが何の10万円か、俺はすぐに分かった、そう、冒険者の登録費用だ。
実は冒険者育成学校は、ギルド登録費用の10万円を払うだけで、入学金や授業料等は払わなくて良いのだ、つまりこの10万円が実質的な入学金である。
この透明な剣の正体も、何となく察して、手紙の内容を確認した。
予想通り、そこには、『冒険者育成学校 推薦状』と書かれ、なにやら難しそうな契約内容的な物が書かれていた。
これでこの透明な剣の正体は確定した。
これはギルド独自開発の剣で、冒険者育成学校推薦者にだけ配られる特別な物であり、その性能は、持ち主に一番合った剣に変化する、と言う物だ。
変化をさせる為には、冒険者育成学校に合格する必要がある。
ちなみに、不合格だったり、一年間変化しないままだと自動的に破壊されるので、悪用の心配は無い。
これを見て、俺は本気で悩み始めた。
推薦状と言うのは、誰だけ金を持っていても、知名度があっても、ほぼ手に入らない。
入手方法は一つだけ、プロチームに所属する冒険者に認めてもらう事だ。
それもただのプロチームでは無い、実績のあるプロチーム所属冒険者にだ。
何故金があっても知名度があっても手に入らないかと言うと、彼等が一回の迷宮攻略で稼ぐ額は300億で、サラリーマンの生涯年収の10倍なのだ。
その状態で今更『お金をあげるから推薦状をくれ』なんて話に乗るはずがない。
知名度はどうなのかと言うと、有名なプロチーム所属の冒険者は、ファンが大勢いる為、推薦状を上げてまで無理矢理増やす必要は無いのだ。
第一、推薦状は幾ら凄い冒険者でも、生涯一度しか渡せない為、何処ぞの金持ちや有名人に安易に渡せる物ではない。
つまりまとめると、プロ冒険者は金や知名度が十分な為、必要が無く、推薦状の価値はとんでもなく高い、と言う事だ。
まあそれでも、余りにも莫大な金額や、知名度に押されれば入手できる為、『ほぼ』入手でない言う表現になるのだが。
そう言う訳で、この推薦状の方は重い、何せ自分に合った剣を入手出来て、さらに冒険者育成学校への入学が楽になるのだから。
散々考えた末、箱を一旦閉じた。
やはり決めきれなかった、だが、このままでは行けないと、何かキッカケがほしくて、俺はギルドで貰った鑑定書を見る事にした。
もう俺には、これくらいしか判断材料に出来る道具がなかった。
封筒を開け、折り畳まれた紙を取り出し、開く。
一番上に、『上野太一様の武器番号1624783、名称『盾(仮)』の鑑定結果 2100/10/13』と書かれており、最後にギルドの印鑑が押されていた。
恐る恐るその内容を見ると、そこには——
〔名前〕フユ
〔ランク〕F(S)
〔レベル〕1
〔親密度〕100(MAX)
〔耐久力〕100(時間経過で回復、1時間に10回復)
〔スキル〕
『忠誠』主人の命令によるモーションに+補正(常時発動)
『完璧なる主従関係』主人の命令によるモーションに+補正(親密度MAX時使用可能)(常時発動)
『テレパシー』主人と会話する事ができる(常時発動)
『亀は万年』潜った迷宮の数が多い程、耐久力がアップする。又、主人と苦難を乗り越えたりすると耐久力や、極稀にランクがアップする。(常時発動)(特殊+技能有り)
『防御壁展開』特殊ステータス、『耐久力』を10消費し、自分を中心とした、半径2.5mの筒状の防御壁を展開できる。展開された防御壁は、20秒間展開し続け、その後消滅する。防御壁は、『貫通無効』が付与され、あらゆる攻撃を防ぐ。(任意発動)
『貫通無効』あらゆる攻撃を通さ無い。(常時発動)
『指輪化』大きな盾を、コンパクトな指輪サイズに変更する事ができる。任意で盾に戻せる。(発動時、『テレパシー』と『亀は万年』以外のスキルが無効化)(任意発動)
簡単に説明すると、俺と会話する事が出来て、鍛えれば鍛える程強くなって、あらゆる攻撃を防げて、1時間に1回、範囲攻撃にも対応できる盾という事だ。
なるほどこの盾チートか。
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