第2話 昔話①

 俺は心の底から悩んでいた。

 この盾をどうするかである。

 あれから5分後位に、脳に雷でも落ちたのか、凄い衝撃を喰らい、俺はすぐさま起きた。

 すると目の前に盾は無く、俺は盾の上で寝ている事に気づいた。

 予想するに、元フユだった何かと思われる盾に対してそんな文字通り重荷を背負わせる訳にはいかないと、漫画なら『バッ』と言う効果音が描かれそうな程勢い良く飛び起き、大丈夫なのかと心配して盾の方に顔を振り向ける。

 すると目の前の盾に変化は無いのだが、又二度寝の前の様に脳に直接話しかけて来る。

 前回の様な雑音やノイズが無かった為、謎の安心感を感じながら恐らく盾から送られて来てるであろう言葉を一つ一つきちんと聞こうと目を閉じて集中すると……


『……ふっふふ……ふ、そんな集中しなくてもはっきりと聞こえますよ……ふふっ……』


 必死に笑いを堪えられて。 

 それはもう悔しくて、何がおかしい! と俺は言い返した、が、それは音にはならなかった。

 なんと自分からフユに対しても直で会話が出来る様になっていたのだ。

 これには流石に驚いたのか、フユが賞賛のメッセージとして拍手を送ってくれたが、それに応える程、状況が状況では無かった。

 正直、どう言う反応をすれば良いのか分からない。

 何故かと言うと、ズバリ盾の価値が現在の日本、いや、地球全体で皆無だからだ。

 盾の価値について説明する為に、まずこの世界について話そう。

 

 ——1900年12月31日23:59分——

 日本国民は新たなる20世紀を迎えるその瞬間を、期待や興奮を膨らませ待っていた。

 そして時計の針が59秒を差し、人々がカウントを取り最後の1を言い終えようとしたその瞬間——

 世界同時多発大地震が起きた。

 世界中で起こったと言うのが分かったのは、この地震が終わってしばらくして分かったことだ。

 この地震がどれほど酷かったか、体験した人に話を聞くと、

『その頃はNTK《日本通信協会》等を放送するテレビの存在すら無く、ラジオもギリギリ無かった為、この地震が如何に危険な物かを知らせる事は出来ませんでしたが、地面が割れ、住宅街は形すら残っておらず、立っている事すらままならないこの惨状を見た私達は、これは確実に『どうしようもない』と言う事を察しました』と語っていた。

 この地震は後に分かった事だが、震度7強を超えていたのだ、つまり何が言いたいか、対策不可能の大地震が来たと言う事だ。

 更に今と比べて耐震等は弱く、と言うか無いと言っても変わりのない1900年では、もはや詰みだった。

 人々は『人類は終わった』『文明は残らない』『これが地獄か』と口々に嘆き、やがていつまでも終わらない地震の恐怖と絶望で潰れ、誰もが気を失った。

 

 がしかし、人々が目を覚ますとそこにあったのは、大地震前の風景だった。

 これは世界全てがそうだった。

 人々は余りの非現実的な一連の流れを、夢を見ていたのだと勝手に結論づけようとしたが、それを否定するとんでもない物が発見された。

 突如、今まで全くもって名前も形も、存在すらしなかった『迷宮』と言う物が、全世界に大量発生したのだ。

 何故これが大地震を肯定するかと言うと、迷宮の存在するその周りだけ大地震を受けたかの様な酷い損傷が見え、迷宮の中は大地震に直撃した世界の末路の様な内装になっているからだ。

 つまり、迷宮は地震によって発生したと見て間違いないと、そう考えられたのだ。

 そして迷宮の他にもう一つ、各国に『聖剣』とその下位互換の剣が七本発見された。

 研究の結果、この聖剣、及び下位互換の剣(これより劣化剣と呼ぶ)は、迷宮に居る『モンスター』と言う存在に対して、唯一ダメージを与えられる事が判明した。

 そして『モンスター』は、地球では発見されてない……恐らく存在しないと今では結論づけられている未知のアイテムと劣化剣を倒すと落とすと言う事が分かった矢先、政府は、国内で最も優秀と思われた一人に聖剣を、その他ポテンシャルが高いと思われた七人に劣化剣を渡し、迷宮攻略を進めた。

 ここから、世界の方針は様々別れた、今回は俺の住む日本の歩みに着いて話そう。

 話は戻るが、聖剣を持つ物は『神剣』そして七人は『神の使徒』と呼び、八人の事を『八英雄』と呼んだ。

 その八英雄は、順調に迷宮を攻略していったが、ある日事件が起きた……

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