朝起きたらペットの亀が最強の盾になってる件
キムチ鍋太郎
プロローグ
第1話 朝起きたら亀が盾になっていた
『ご主人様! おはようございます!』
「おお……おぉ……なんといったらいいか……、おはよう?」
まだ高校生だが、間違いなく言える。
俺は生涯でこれ程驚く事は二度と無いだろう。
なぜか? それはペットの亀が、朝起きたら突然横幅70cm、縦幅150cmの巨大な盾に成っていたからだ。
自分でも言ってて良く分から無くなるが……話は10分程前まで戻る。
高校生になったら早寝早起きを心掛けようと以前より志していた俺は、習慣付けの為にと中学三年生の終盤である今から、既に始めていた。
そうして俺は4時30分ピッタリに、予定通り起床する。
実は少し厨n……イタくも有る俺は、カッコつけるかの様に布団を突き上げる様にして蹴り、勢い良く起き上がる。
だがこれをカッコいいと言う者も、馬鹿にする様に笑う声も無い。
それは朝方だからと言う事もあるが、ここが俺の部屋というのも有るだろう。
そして綺麗に布団を畳み、着替え、ベッドから離れた後に、手を上に組み背伸びをし、気持ち良さを感じながら、気が緩んだからか、声をだしてあくびをする。
眠気故か、いつもより小さな歩幅でカーテンへ向かう。
そして、ガッと音を立てて、勢いよくカーテンを開けた。
すると、ちょうど日が出切った頃だった。
冬の東京都は大体この2、3分前くらいが日の出なので、この位の時間におきると、綺麗に出きった状態の太陽が見れる。
4:30起きをチョイスしたのもこれが理由だったりする。
しばらくして、朝日に満足をすると、俺は綺麗に透き通る透明なガラス戸の持ち手に手をかけ、ゆっくりと開ける。
そうして、広めのベランダに出る。
ベランダに出た理由は、ペットである亀に会いに来るためだ。
亀の名前は、前はヘビガメ、今はフユと呼んでいる。
名前が違うのは、元々祖父が飼っていた亀なのだが、祖父が死期が近いと医者に言われると
『ワシが死んだら、ヘビガメはお前に渡す。その時、これだけは忘れるな、命名を必ずしろ、そしてそれはお前がしろ』
とだけ言い、祖父はこの世を去り、その為、半強制的にこの亀を飼うことになったので、言われた通り名前を考え、『フユ』と呼ぶことにしたのだ。
名前から察してもらえると思うが、フユは雌である。
ちなみにだが、フユの引き取りは嫌と言うより、むしろ嬉しい事だった。
俺とフユは小さい頃から一緒であり、フユは祖父ともかなり古くからの付き合いで、実質家族と言っても変わらない、大切な存在だった。
会えるチャンスは祖父の家に行くときだけだったので、自宅で飼えると言うのは嬉しい相談だった。
がしかし、嬉しい事ばかりでは無く、悲しい事もあった。
なんと、フユは今年で80歳を超えており、老衰によって余命が段々と少なくなって来ているのだ。
だからこそこの様に、今更かも知れないが、毎朝フユとの何気無い交流を楽しみに朝を迎えるのだが……
文字通り、どこにもいなかった。
水槽の中で毎日穏やかに過ごしているフユの姿が、見当たらないのだ。
がしかし、代わりに明らかに異質な物が水槽の近くに有るのが分かった。
小学生の頃RPGに熱中した事があり、見覚えがあった装備の一つ、『盾』だ。
防御力を上げたり、軽減したりしてくれる『盾』である。
迷宮攻略は剣で突っ切るのが王道でゴミとまで酷評される『盾』である。
そして——
立派な甲羅を持つ『盾』である。
俺がまさかな……? と疑問や驚愕に染まっていると、突如頭の中にノイズのような物が流れ、刹那意味があるようで無いような謎の雑音の様な叫びが聞こえた後、可愛らしい声が響く。
『ご主人様! おはようございます! 気づいたら水槽から飛び出していたんですけど……今私どんな状況ですかね?』
恐らく頭の中に直接話し掛けて来ているのだろう、『迷宮攻略トップチーム』もそう言うモンスターに偶に出逢いますと言っていた為、納得はした。
納得はしたが理解は出来無かった。
こうしてこれは夢だと現実逃避の様に後方に倒れ込む。
普通なら頭から行ってとんでもなく痛い筈だが、その時は何故かベッドにダイブしたかの様な気持ち良さがあった。
そして眠気と混乱のダブルコンボで、俺は無事睡魔に敗北し、無意識の世界へと再突入……
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