セバスチャンは心配性

アリス&テレス

第1話

 我が名は、ロベルト・ザーハッシュ・ド・セバスチャン21歳。

 牡羊の立派なアモン角がチャームポイントの悪魔族だ。

 自分で言うのもなんだが、美青年である。

 ロベルトと呼んで頂きたい。


 ここオーマ世界の中心には、世界樹オーマが鎮座する。

 世界樹オーマは、世界その物であり、世界樹オーマの恩恵によって、数多くのダンジョンが存在する。

 地下ダンジョン。

 巨塔ダンジョン。

 空中ダンジョン。

 ……

 ダンジョンから湧き出る魔力は、周辺の土地に滋養を与え豊かにする。

 こうしてダンジョンを中心に、独自の文化圏を繁栄させているのだ。


 私の手には今、覇王の卵がある。

 数十年に一度、世界樹オーマの実が熟れ落ちる時、覇王の卵が世界中にばらまかれる。

 覇王の卵とは、異界よりダンジョンマスターを降臨させるダンジョンの種である。


 降臨するマスターは、多岐にわたった。

 高い知能のエルフ・悪魔族等から、下等魔物のゴブリンや、昆虫のカナブンまで。

 異界より招いたマスターの力によって、ダンジョンが育つ。


 だが、その多くは、激しい競争によって朽ちはてる運命をも合わせ待つ。

 魔物が徘徊する自然との競争……

 他ダンジョン間との競争……

 時たま現れる、勇者を擁する人族の侵攻等々……

 世界中で激しい競争が行われる中、我がセバスチャン一族が執事を勤めるダンジョンは、大いに栄えた。


 いよいよだ……

 いよいよ、この私が、自分の仕えるべき主人を手に入れるのだ。


 中央の魔方陣に、覇王の卵を置くと、怪しい光が辺りに満ちる。


「クククク、この時を待ちわびておったのだ、皆、準備は良いか?」


 私のうしろで、数人の影が頷いた。

 魔方陣を囲むように、6人の男と、1人の女が逢魔オウマの時を待ち、整列する。

 いずれも、1人で万の敵を壊滅させる、強者つわもの揃いだ。

 そして、私も含めてここにいる7名は、絶世の美男美女・・・・ばかりであった。


 準備は整った。


 覇王の卵は、内側の圧に抗するように、周りの空間をひずませ、徐々に歪みの範囲を拡げている……


 もうすぐだ……

 もうすぐ、我々が使えるべき主人あるじがここに降臨される。

 我々は、魂の契約によってマスターへの絶対の忠誠を誓い、代わりに大いなる栄華を得るのだ。


 私は、一年前の事を思い出しながら、逢魔の時を待っていた。


 一年前、私が覇王の卵を手に入れたとき、セバスチャン一族に伝わる秘術によって覇王の卵の鑑定を行った。

 私の鑑定眼によると、卵から産まれるのは、人間界から招かれる人族女性マスターであった。

 しかも、1000年に1度の大魔力を持った逸材である。


 私は、覇王の卵の正体を知ってすぐ、人族の女性ダンジョン主のお心を知るため、親戚筋の叔父上に頼ることにした。

 叔父上が勤める大腐界ダンジョンのマスターは、同じ人間界から招かれた女性マスターであった。


 私は、女性マスターの元で新人執事研修を行い、貪欲に人間界の常識を学んだ。

 大腐界ダンジョンでの新人研修は、衝撃の連続で在りながらも立派に勤めを果たした。


 研修中、女性マスターの嗜好を間近で見、配下の選抜方針が決まったのだ。

 戦闘力、知能、料理、美容知識……そして美男子イケメン力。

 マスターに直接仕える栄誉を、才能と美しさの点で厳選した。

 結果、ここに居並ぶ美男美女の顔ぶれとなった訳である。


 少数精鋭。

 もちろん、マスターが女性である事も考慮してある。

 生活の支え要員に、多数の戦闘メイドも用意し、周辺で待機させた。


 いよいよである。

 競争相手である、他のダンジョン主からの妨害工作も考えられる。

 最大の警戒をもって、事に当たらねばならぬ。


 ……時は満ちた。

 まもなく双子の月が重なるとき、異世界への道が開き、逢魔の儀は始まる。

 逢魔の儀によって、1000年に1度の大魔力を持ったマスターが、この地に召喚されるのだ。


 私は喜悦の表情を隠そうともせず、後に居並ぶ者達に振り返った。

 これより、ひた隠しにしてきたマスターの秘密を開帳せねばならない。

 私は、意を決し、宣言した。


「諸君、まもなく逢魔の時が来る。これより召喚されるのは、人間界から招かれた女性マスターだ。くれぐれも粗相の無いように」


 ……ザワッ


 全員に動揺が走った。

 同時に、逢魔の時を待つ列の中から、不平があがった。


「ちょっと待ってくれ」


 ワイルドな青年が立ち上がり、私にくってかかった。


「ロベルトのアニキ、聞いてねーぜ。俺たちが仕える主は、女……しかも人族って本当なのか? だとすれば俺はゴメンだ」


 何人かが同意して、首を縦にふる。


 周りの不満を代表するように声を上げたのは、人狼族のヴァルフ・ガーランド。

 人狼族最強の戦士だ。

 全てのボタンが千切れたシャツの下側を縛り、鍛え抜いた上半身をさらす姿|(ギリギリ乳首は隠れている)からは、ワイルドな性格がうかがい知れるだろう。

 狩人のスキルを持つ野生の戦士だが、少々柄が悪いのが難点であった。

 私が昔、ちょっとタイマン勝負で撃ち倒してから、兄貴と呼ばれている。

 実力至上主義の人狼族で育ったヴァルフには、ひ弱な人族の女性マスターなど認められぬのだろう。


 だが、これから召喚されるマスターを見れば、その口も閉じられるはずだ。

 1000年に1度の大魔力を持つ、マスターが生まれてくるのだからな。


 だが……

 だが、それでも、彼の言ってることは、残念ながら一つの真理であった。

 私自身も苦笑いを漏らしてしまうのはしょうがない。

 我々が育った黄龍大ダンジョン支配圏は、オーマ世界において、最も優れた文明を誇っており、周辺ダンジョンから羨望の眼差しで見られている。


 それに対して、オーマ世界に住まう人族は……

 叔父上が勤める大腐界ダンジョンの女性マスターが、例外中の例外なのだ。

 オーマの人族は、遙か昔に移住してきた種族だ。

 この世界において、人族は非常に遅れた文明の種族であった。


 ゆえに、人族の遅れた文明など取るに足らぬと、配下達が考えるのは無理も無い。

 むしろ未開の地より召喚されてくるマスターのため、我らのすぐれた文明をお目にかけて、学んで頂くのが、我らシモベの義務である。


「皆落ち着け、心配の必要はない」


「どういう意味だ? アニキ」


「くくくっ、例え遅れた文明の人族であろうとも、我らが支え、文明に開化していただくのだ。何の心配があろうか」


 ……ザワッ


 ヴァルフの後ろの影達が皆、ニヤリと笑った。

 どうやら納得してくれたようだ。

 ……だが、ヴァルフのヤツは違った。

 奴だけは、まだ納得してないようだ。私にくってかかってきた。


「しかしアニキ、所詮は人族の女じゃねえか、油断すれば一瞬で滅ぼされるダンジョン間競争に勝ち残れるとは思えねえ」


「ヴァルフよ、案ずるな。マスターは、我ら一族の鑑定秘術によれば、1000年に1度の大魔力を有しておられる」

 ……

「「なんだってっ」」


 一瞬の間が空き、全員の顔が驚愕に変わった。


「ア、アニキ、そ、それは本当なのか?」


「本当だ」


「「「おおお」」」


 1000年に1度の大魔力と聞き、他の者達も驚愕の顔へと変化した。

 皆、期待を込めた瞳で覇王の卵を見つめていた時だった。


 キュオォォォオオオオオオオ…キュオッ…キュオォォォォォォォオオオオオオオオオオオ……


 突然、空気が振動を帯びながら吠えた。

 時が来たようだ。 


「皆の者、間もなく双子の月が重なる。逢魔の儀の開始だ、覇王の卵が孵化するぞ、警戒を厳にしろ」


「「「はっ」」」


 後の影が一斉に立ち上がり、各々おのおの得意のかまえで、他ダンジョンからの襲撃に備える。


 グオオオオオオオオオオ……


 風が雲を呼び、祭壇上空を中心に禍々しい渦を巻く。

 双子の月が重なり、地上に深き者の影が降りると、闇が満ちた。


 ……降臨の時だっ!


 覇王の卵の表面が割れ始めていた。




 覇王の卵が割れ、中身が吹き出す。

 出てきたのは、空間だった。

 幾重にも折りたたまれた空間が、微振動を繰り返しながら拡がる。


 ……オオオォォォォォオオオーン…オオオーン……ユアーン…ユアアアアアン~


 空間が吠えた。

 今この時、覇王の卵を通じて、異世界より新たなマスターが産まれ出流いずるのだ。

 微振動を繰り返す空間が、凄まじい勢いで展開していく。

 我々を囲むように、見知らぬ素材でできた壁と、昼間が如き明るさを発する天井が姿を現そうとしていた。


 通常、覇王の卵から孵るのは、異世界から召喚されるマスターだけの事が多い。


 しかし、これはどうしたことか?

 マスターの魔力が強ければ、まれに身の回りの持ち物も一緒に召喚される事があるのだが、部屋ごとやってくるとは……なんたる力の持ち主ッッ!!


「クククククッ、見よ、この魔力量っ!」


「「「なんとっ!」」」


「我々のマスターは、元居た場所……自分の周りの空間ごと降臨してくる魔力量だぞ」


「「「おおおお」」」


 次第に、空間の展開が進み、空間微振動が収まってくると姿がはっきりとしてくる。

 部屋の中央では、小柄な人族の女性が座った後ろ姿が形作られてきた。

 肩の下まで伸びた黒い髪。

 黒く長い髪を押さえるよう、大きな白く丸い耳飾りが存在感を示す。


 ……あれ?

 両耳の白く丸い耳飾りから、音曲が聞こえる気がする。

 気のせいか?

 いや、そんな事はどうでも良い、それよりも気になるのは、御髪だ。

 御髪おぐしが少々痛んでいるのが気になる……が、問題は無い。

 メイド・・・達が手入れすれば、輝くような艶のある黒髪に戻るだろう。


 続けて観察を行う。

 マスターの前には、布団? をかけた机が在った。

 布団をかけた机の前に座る姿は、今私の斜め後ろで警戒をしている東方出身の武術指南役テッシン殿が、時々やっているセイッザの座り方であった。


 テッシン殿は、我々の中で一番の年長者だ。

 よわい40になる壮健の魔法剣士である。

 東方の着物に身を包み、後ろ髪を紐で縛った髪をたなびかせる姿は、武の体現者と言うべき姿であった。

 今も敵勢ダンジョンからの襲撃に備え、必殺の技、時空斬剣をいつでも放てるようにカタナの柄を握っているのだろう。

 後方から、ビリビリと空気を振るわすほどの殺気を放っている。


 マスターも、セイッザをしている事から、何らかの武道を嗜むのであろうか?

 うむ、誠に頼もしい限り。


 私は、さすが1000年ダンジョン王たる風格に畏敬の念を得ながら、マスターの座り姿を見ていて気がついた。


 ぬううう……なんだコレは?

 観たこともない布地?


 マスターの身を包む服は、我々の見たことのない素材でできていた。

 身体の動きを邪魔すること無く、伸び縮みしている素材だ。

 どうやら、伸縮が自由な素材なのか。

 色は、鮮やかなえんじ色。

 肩から腕にかけて白い線が2本伸びている。

 簡素だが、見たことも無い意匠を凝らした服だ。

 服は、腰の辺りで上下二つに分かれている。

 マスターが動くのに併せて、チラチラと背中の素肌が見えていた。

 素肌が見えるのは感心しないが、動きやすさを考えれば合理的な服装であった。


 ふ…不思議な服、そして素材……

 異世界の人間族の文明も、意外と侮れないかもしれない。

 ……これは、心してかからねばならぬ!


 私は、気を引き締め、他の文化面についても、いくつか気になる点を観察した。

 マスターは、我々から後ろ向きになり、布団をかぶせた机に向かって何かやっている。


 布団を掛けた机を観察すると、机の上に布団。

 布団の上に天板を乗せているようだ。

 私は、その布団机の意味に気がついて驚愕した。


 ぬうッッ……な、なるほどな!

 机の上から布団を掛け、その上に板を置けば、文字を書くのも簡単だ。

 それに布団があれば、冬でも寒さを気にせず仕事に集中できる……

 何という創意工夫だ。

 さすが我らがマスター。


 私は、マスターの住んでいた世界の技術工夫に思いを寄せ、気を引き締めようとしたときだった。

 私の右斜め後にいるはずの、ハイエルフ族の魔道士リクル・コモンが叫んだ。


「何だ、これは?」


 リクル・コモンの鈴鉱の響きのように透き通った声が、部屋中に響いた。




 突然の大声で、部屋に緊張が走る。


 すわっ敵襲かっ!


 私はすぐに、最後方で警備をしているテッシン殿に声を掛ける。


「テッシン殿!」


「ロベルト殿、大丈夫でござる。後方は先のオーマ空間が拡がっておりまするが、危険は迫っておりませぬ」


「そのまま警戒をっ」


「御意!」


 後方の警戒は、テッシン殿に任せ、声の主へと振り返る。


「リクル、どうした?」


「ロベルト殿、こっこれをっ」


 魔道士リクル・コモンが、右側の壁を指さしていた。

 金髪碧眼のエルフ族らしい美しい顔立ちが、大きく歪んで壁を睨んでいる。

 容姿と同じぐらいの美しい指の先が射すのは、壁一面に設置された本棚。

 しかも、本棚の中には、びっしりと本が詰め込まれている。

 いずれも謎の光沢を帯びた本である。

 大きさも様々。

 手のひらサイズの小さな本から、大きな薄い本まで様々な本が詰まっていた。


「バッ…バカなっ! こっこれ全てが本だとっ!!!」


 魔道士リクルが立ち上がり、本棚の中から一冊の本を抜き取ってめくっている。

 驚愕に見開かれた目。

 痙攣する長い耳。

 美しい唇からは、震える声が漏れる。


「こっ、これは……」


 リクルは、他の本も出して確認している。

 その表情は固まり、金色の長髪から飛び出した長耳がピクピクと震えていた。

 彼ほどの魔道士になると、エンチャントドラゴンの咆哮を前にしても、動揺することなく、正確に魔術を構築できる胆力を持つ。

 だが、それがこの動揺。


 リクルの奴、この耳の動きは、よほど興奮していると見える。

 それほどの本なのか?


「どれどれ……」


 私が覗き込むと、最初に原色で書かれた表紙絵が目に入った。

 表紙絵には、上半身裸でやたら目の大きい男が2人、こちらに流し目をして立っている。


「な……?」


 魔道士リクルは、私の疑問を無視して本の中を開いた。

 中には、異国の文字が大量に綴られていたので、やはりコレは本である。

 恐るべき事に、どの文字も同じ大きさでつづられ、全て流麗りゅれい筆致ひっちをしていた。


「ぬぬっ、いったいどれほど優秀な書生が、これだけの数の本を写本したのだ? しかも本の表紙に絵まで書いているとは……」


 魔道士リクルが唸った。

 唸りながら、本を握りしめている。

 細く長い指先が力を込めすぎたのか、元々の白さよりさらに白くなっていた。


 リクルが驚くのも、もっともだった。

 我々が育った黄龍大ダンジョン都市には、いくつもの図書館がある。

 ここには、中堅の図書館をしのぐ蔵書量が揃っていた。

 個人が所蔵するにしては、あり得ない蔵書量。


 いにしえに聞く大賢者なら、個人で本を集める事があるのかもしれない。

 だがしかし、人族の文明レベルでは、あり得ない話しだ。

 いや、そもそも今目の前に有る物を本と呼んで良いのか?


 本棚を見れば、どれもこれも原色の文字で背表紙を飾っている。

 よく見ると、背表紙にまで小さな挿絵が描かれていた。

 私の知っている本は、分厚い皮装丁と、宝石や金銀で飾られた物だった。


 こっこのような本など、見たことも無い……


 それに、本棚の下部には、大量の薄い証文の類いが詰まっている。

 薄い証文の数から言えば、マスターは、かつて何らかの文官をしていたと推測される。

 薄い証文の背表紙を、指でツツツとなぞっていた時気がついた。


 なッッ!!

 この薄い証文にも色が付いているだと!?

 証文の類いに、このような華美な色が付いている訳などない。

 も、もしかしたらこの薄いのも、全て本なのか?

 ……いや、あり得るッッ!

 マスターが強大な大魔力を持っているのは、この知識ゆえ。

 恐るべしッッ!!!


 マスターは、いったいどれほどの知識を蓄えているのか、想像すらできなかった。

 私が驚愕に我を忘れていると、さらに反対側から声が上がる。


「ロッ、ロベルト殿っ、こちらをご覧あれっ!」




 私が選び抜いた配下候補の中で紅一点、女騎士で、プリズムオーク族のセリーナ・ガリア嬢が、ミスリル製金属甲冑に隠しきれない豊満な肉体を包んだ姿で、私を呼んでいた。

 私が振り返ると、そちらの壁一面に絵が飾ってあり……愕然となった。


 なっ何だこれは?

 ……お…同じだと……

 同じ絵が…何枚もだとおッッ?


 そこには、上半身をはだけさせた二人組の優男(これも目が大きい種族)が、こちらに流し目をして立っている絵が、寸分違わない大きさ、形で、幾枚も飾ってあった。

 私は、あまりの驚愕に、心の声を口に出してしまった。


「こ、この絵師の技巧……凄まじい腕前……マスターの住んでいた文明はいったいどれ程のものだったのか?」


 ツンツン、ツンツン。


 私が驚愕をしていると、服の裾を引っ張る者がいる。


「ううう、ロベルト様、ボクにも分からない技術がいっぱいで、何だか怖くなってきちゃったよお」


 そこには、怯えた少年の姿をした、カワウソ族のコツメ丸がいた。

 まだ齢10の若輩者だが、幻術と変身を得意とし、水辺の王である水竜ですら、集団で倒してしまう勇猛なカワウソ族の若きプリンスだ。

 緊張すると変身が解け、少年の姿から、耳と尻尾が出てしまう悪い癖がある。


 そして、彼最大の特技は、魔道錬金術を基礎とした発明であった。

 技術者としての目線で、この部屋の異様さが分かるのであろう。

 現在コツメ丸は、丸い耳と尻尾を出したまま、泣きそうな顔でこっちを見ていた。


「これ、コツメ丸、しっかりせよ、マスターの前で醜態を見せてどうするか」


「ううう、ごめんなさい」


「カワウソ族の次世代の長たる者がなさけない。しっかりせよ」


「ううううう……だって……あの光を見てくださいよお」


 私は、コツメ丸の指さす上を見た。

 そこには、天井に据え付けられた光源があった。

 丸い円盤状の物から、光が発している。

 魔道具の、光版のようだが、我々の居住区に普通に有る物のはずだ。


「どうした、コツメ丸。あの魔道具に何か問題でも?」


「ち、ちがうんですう。あの魔道具から、魔力が発生してないんですう、魔道具じゃ無いのに、あんなに明るい光をだすなんて」


「何っ? バカなっ」


 私は、慌てて天井を見上げなおした。

 コツメ丸も、泣きそうな顔で、同じ光源を見つめている。


 確かに、魔道具でなければ、あれほどの光を発生させる技術とはいったいなんであろうか?


 私も、混乱していた。


 が、それにしても勇猛なカワウソ族のプリンスが、なんたることか。

 例え、未知の技術が目の前にあっても、怯えすぎである。


「コツメ丸、それでも勇猛なカワウソ族か」


「ううう、だってえ……」


「ロベルト殿、お待ち下され」


 コツメ丸の情けない泣き言を割って、会話の中に入ってきた男がいる。

 吸血鬼族の若き貴公子 ビィヨン・ドラクリヤ。

 身体を自由自在に霧に変え、神出鬼没を誇る吸血鬼族である。

 高位貴族であるため物腰がとても優雅だが、何時もの氷のような表情が、今は焦りの色に支配されている。


「ロベルト殿、コツメ丸が恐れるのももっともだ、こ、このような光景、あ、あり得ぬ」


「ビィヨン、我々が今置かれている状況は、想定を超える事態だ。我らがあるじの実力を慎重に見極めねばならぬ、落ち着け」


「し、しかし、ロベルト殿、いくら何でもこれはっ」


 ポンッ!


 動揺をしていたビィヨンの肩を叩く者がいた。


「落ち着きな、ビィヨン」


 動揺をしている吸血鬼のビィヨンの肩に手を置くのは、人狼族のヴァルフ。


 さすが人狼族の戦士だ、動揺の欠片も見せぬとは。


 私は、人狼族の戦士の頼もしさに微笑んだ。

 ……だがこの時、私も動揺して気がつかなかった。

 ヴァルフの尻尾は、両股に挟み込まれていた。

 ヴァルフもまた、激しい動揺に襲われていたのであった。


「その通りだぜ、ビィヨン、お前らしくもねえ」


「くっ、私としたことが、その通りだなヴァルフ。取り乱してすまん」


 2人の強者つわものが、お互いを励まし合う。

 人狼の最強戦士と、吸血鬼の貴公子。

 普段の彼ら2人は、ライバル関係だ。

 お互いに勝負を挑み合い、何度も引き分ける好敵手であった。

 その2人が励まし合っている。それ程の緊急事態なのだ。

 私は、好ましい物を見る目で、好敵手同士の2人を見ていたが、今はそれどころでない。

 今の私の役目は、ここに居る全員の動揺を鎮めなければならない。


「皆、落ち着け、我々はまだ、マスターにご挨拶すらして居らぬのだぞ」


 ハッとなる一同。

 その通りであったのだ。

 まだマスターは、我々に一瞥すらくれてなかったのである。


 我々の動揺を余所に、強大な魔力を見せつけるマスターは、相変わらず後ろ姿だけで我々を畏怖し続けていたのであった。




 異世界から、部屋ごと降臨してくる強大な魔力量。

 そして未知の文明レベル。

 この場で、新しいマスターに異議を唱える愚者など居なくなった。

 我々は、何度も練習してきた通りに、マスターに平服した。


「おおお、新しきダンジョンの支配者、マスター、ようこそオーマ世界に」


「「「一同お待ち申し上げておりました」」」


 我々は、平服してマスターの後ろ姿にご挨拶をした。

 ……

 が、反応が無い。

 マスターは、布団をかぶせた机に向かって、なにやら一心不乱に作業をしている。


「もし、マスター、我々の声が届いておりませぬのでしょうか?」


 もう一度問いかけたが、返事を返してくださらなかった。

 ……

 私たちは、不敬ふけいと思いつつ、マスターの手元を覗き込んだ。

 布団をかぶせた机の上に、光る板が置いてある。

 その光る板に、肌色の何かを一心不乱になって描き込んでいたのだ。

 マスターが、ペンを走らせるのに合わせて、変化する光る板。

 ただ、そのペン先の細さに対して、変化は数倍の太さで変化していく。

 あり得ない技法で、色絵が見る見る動いていく。


 ショーオックゥゥ~~ッッ!


 知らぬッッ、知らぬぞこのような魔術道具。

 今起きている光景は、いったい何なのか?


 自分の中の魔術知識を総動員して、理解しようとアモン角が発光するほど考えた。

 その光景を、周りの配下達が、驚愕の表情を浮かべて覗き込んでいる。


 マスターのこの行動……凄まじい集中力で何らかの魔法を行使なさっている……では、一体何をなさっているのか? ……


 …ッッ!

 そう言う事かァッッ!!


 私のアモン角が、強い光を放った。


 マスター様はお怒りなのだ。

 この行動……

 我々の不敬に気がつき、我らを誅する為の魔法式を練り上げられているのでは?

 いや、そうに違いあるまい。


「いい、いかん、貴様ら、今すぐマスターにお詫び申し上げるのだ。マスターはお怒りだ」


 我々は、慌てて剣術指南役テッシン殿に教わった東方に伝わる最大級のお詫びの姿勢ドゲエィザを行った。


「マスター、数々の不敬申し訳ございませぬ、我々シモベ一同、マスターの為命を捨てる覚悟。なにとぞお許しくださいませ」


 その時であった。

 マスターが動いた。


 我々の思いが届いたのだ。


「ふ、ふわわわわああああああああああああああ」


 初めてマスターが、口を開いてくださった。

 我々は、喜びに胸をときめかせながら顔を上げると、両腕を天に突き上げる姿のマスターがそこにあった。


 ……?

 こ、これはいったい???……

 ……はっ! そうかっ!!!

 ……くう~~~ッッ!!!


 私は、瞬時に悟った。


 こっ、このお姿……マスターは、天をつかみ取ろうとしているのだぁッッ!!

 天上と天下、唯、我より尊き者無し。

 天を掴むのは自分であると、宣言なされておられるのだ。

 なんたる自信。

 マスターは、オーマ世界にある全ダンジョンをその手に収めるつもりなのだ。

 こ……これは気を引き締めて掛からねば、マスターに置いて行かれるぞ。


 私が、忠誠心を新たにしている後ろでは、居並ぶ者達も、歓喜に震えながらマスターを見つめていた。

 そして……


 ……パタンッ


 マスターは、そのままの姿で後ろに倒れ、私と目が合う。

 と、同時に、その口が小さく開いた。


「ファッ……」


 マスターが、小さく声を出した。

 そして、私とマスターの間で、お互いに見合ったまま沈黙が訪れた。


 倒れたまま私を見つめるその姿は、まだ幼く、化粧の欠片も無い。

 下手にゴテゴテと飾り立てたオーマの女共よりも、好ましい女性である。

 東方の呪術民具コッケシ人形のような平たい顔が、何とも安心を与える。

 それに、まだ成長途中なのだろうか、薄い身体をしているのも高ポイント。


 ふむ、悪くない。

 少々幼いようだが、成長すればそれなりに見れるようになろう。

 それに肌が少々荒れているようだが、メイド達に磨き上げさせれば済むこと。

 叔父上の勤める大腐界ダンジョンの誘惑から、私の純血を守ってきた甲斐があろうというもの。

 私の純血は、マスターのためにいつでも捧げる準備はできている。

 さあ、早く私達にご命令をくださいませ。


 私は、今後の計画を考えながら、口を開けたまま私の目を見つめるマスターのご命令を今か今かと待っていた。


 これがマスターと、私たちとの最初の出会いであった。




「フワw★○×△□……」


 突然の事だった。

 マスターが、叫びながら飛び起きた。

 マスターは、意味不明の呪文を唱えながら、先ほどまで触っていた光る板に手を伸ばし、何かの操作を行って光を消す。


 ん?


 今、光が消える前に一瞬、絵の全体像が見えた気がした。


 男同士が接吻をしていた?

 いや、見間違いか?

 片方は髪が短く胸の薄い女だったのだろう、男にしては体格が華奢過ぎる。

 第一、あんな目の大きい種族など居ない。

 ……私の見間違いだ、そうに違いない。


 私は、頭を振って気の迷いを振り払い、伝えるべき事を伝えた。


「驚かせて申し訳ございません、我があるじたるダンジョンマスター。重ね重ねのご不遜をお許し頂きたい。私達がこの場にまかり出ましたのは、ダンジョンを統べる我がマスターに仕えるためでございます。なにとぞ我らが忠誠心をお受け取りくださいませ」


 私が平伏をして忠誠の誠心を見せると、マスターは硬直をしている。


 さもあらん。こうしてダンジョンに召喚されたマスターの中には、自分の状況を認めることが出来ず、自らダンジョンを滅ぼすマスターすらいる程だ。

 ソレも含めて、我らシモベがこれから支えていかねばならぬのだ。


 顔を上げると、少々御髪が乱れてしまったのか、マスターが慌てて自分の手で髪をなおしている。


 これは、いけない。御髪が痛んでしまう。

 すぐメイド達を呼ばねば。


 私は、手ぐしで前髪を下ろす作業に没頭するマスターに声をかけた。


「マスター、そのようにすると御髪が痛んでしまいます」


「フェ?」


 抱きしめるようにマスターの両手を握り、髪へのダメージを止めた。

 私は、キョトンとしてるマスターの耳元で、メイドの存在を教える。


「マスター、身の回りのお世話は、我らの精鋭メイド・・・達にお任せ下さいませ」


「フエエエ?」


 叔父上の勤める大腐界ダンジョンでの研修から、人型女性ダンジョン主様の嗜好を研究した結果、最高のメイドを用意した。

 マスターの喜ぶ顔を想像すると、自然と私の頬に笑みが浮かぶのもしょうがない。


「メイド達よ、すぐにマスターの元へはせ参じよッッ!!」


 私が叫ぶと、外に待機していたメイド達が、ダンジョン側の入り口に整列をした。


「フエエエエエエエエエ?」


 腕の中でマスターが、歓喜の声をあげた。

 さもありなん。

 黄龍大ダンジョンの小中学校から選りすぐりの美少年ばかりを集めた、少年メイド隊なのだ。


 その服装も、大腐界ダンジョンでの研修で学んだ知識でこだわっている。

 全員、上半身は黒の蝶ネクタイのみ。

 下は、黒のブーメランパンツ。

 黒ニーソックスに、黒の革靴。

 髪型は少しオニオムに似たオールバック。

 全員、個性を消すためのメガネ装備に、口は菱形に開けさせている。

 と、言った、完璧な装いである。


 その時、マスターの瞳が、ギラリと光った。

 と、同時にマスターの、微かな声が聞こえる。


「……アノ…ダケ……」


 マスターが、何かを呟いていた。

 だが、声が小さすぎて聞こえない。


「デビルズイヤー」


 私は、右耳に手のひらを当て、小さすぎる声を拾おうとデビルズイヤーを使った。


「…ショタノハダカ チクビハアウト……フフフッ服を早く」


 服を早くとの声だけがハッキリと聞こえた。

 マスターからの初命令である。

 私は、すぐさまマスターのご命令に従った。


「その方たち、今すぐ服を着て参れ」


「「はーい」」


 少年メイド隊が元気に、ダンジョンの更衣室へと走って行った。


 マスターのご趣味には合わなかったようだ、この辺りは今後の研究課題だな。

 私は、心のチェックリストに新たな印を付けた。




「ん?」


 少年メイド達が走り去ると、ギラギラと輝かしたマスターの目が、別の場所を見ていたのに気がついた。

 ……? マスターは、どこをご覧になられているのだ?


 私が、マスターの視線を追ってそちらを振り返ると、吸血鬼のビョンと人狼族のバルフの二人が、交互に唇と耳がくっつく距離でヒソヒソ話しをしていた。

 私のデビルズイヤーはすぐさま二人の会話を捉えた……


「おい、さっきの観たか?」


「観た、男同士で接吻をしていた絵だったぞ」


「バカな、見間違いではないのか……」


「いや、しかし」


 マスターがギラギラとした目で、ひそひそと会話をしている吸血鬼のビィヨンと、人狼のヴァルフの姿を睨んでいる。


 ……こ…れ…は……はっ!

 いかーんッッ!!!


 私はすぐに悟った、マスターはお怒りであると。


 馬鹿者共め、マスターの目は爛々と貴様らの事を見つめておられるぞ。

 お怒りであられるのが分からんのか、情けないッッ!!

 先ほどの少年メイド達の失態で、我々への印象は悪化しているのだ。

 呑気に、顔と顔をくっつけて私語をしている場合か。


 私の焦りがマックスへ達しようとした瞬間、最悪の獣の鳴き声が、この場に響いた。


「デュフッ」


 デュフシの鳴き声!?

 しかも、マスターの近くでッッ!!


 その場にいた全員が、バネのように跳ね起きた。


「デュフシだッッ!!!」


 私の叫び声に、全員臨戦態勢に入った。


 ……神獣デュフシ。

 普段は温厚な神の遣いの水生獣だが、発情期になると異常な攻撃性をみせる。

 そして、丁度双子の月が重なる二の月は、デュフシの発情期であった。

 今聞こえたのは、デュフシが発情したときの鳴き声で間違いない。


 最悪ッッ!!!


「御免! 後でいかようなる罰をもお受け致しますが、今はご容赦をッッ」


 私は、肉の盾になるべく、マスターの小さな身体を抱きしめて覆い被さる。

 マスターが目を白黒させているが、一秒を争う緊急事態だ。


「リクル、攻勢結界ッッ! 最大数の多重掛けでだ」


「承知っ!」


 リクルはすでに、エルフ族の美しい髪を振り乱して、攻勢結界を張っていた。

 他の者もマスターを守るべく、自分の武器を抜きマスターの周りを囲んでいる。


「テッシン殿、デュフシの気配は?」


「解りませぬ、拙者の魔力探知でも気配が読めぬ。敵は余程の隠蔽魔術を使ってデュフシを送り込んでおりますぞ」


「くっ、皆聞いたな、先ほどの鳴き声は、発情期のデュフシの鳴き声だ。発情期には、巨大な顎で、エンチャントドラゴンすら噛み殺すと言われている神獣デュフシ。これほどの隠行術を使う刺客、ただ者ではないぞ」


「「「はっ」」」


 魔術探知に引っかからなくとも、臭いは消せない。

 ……ならば、獣系の2人の嗅覚だッッ!


「コツメ丸、ヴァルフ、臭いでの探知はどうだ」


「ダメですう、臭わないですう」


「アニキっ、こっちもダメだっ」


 なんと言うことだ、臭いででも探知できないとは……

 ならばっ、最後の手段だ。


「ビィヨン、最終奥義、血界喰霧ブラッディストリームを使えっ」


「了解……私と攻勢結界外の少年メイドの命、今この時のためッッ」


「スマン、少年メイドはいくらでも替えが効くが、貴様の命は何物にも代えがたい……が、それでもマスターをお救いするのが先決。貴様の命を捧げる時だっ!」


「承知ッッ!」


 吸血鬼ビィヨンが、最終奥義の封印を解くために詠唱を始めた。

 ビィヨンの命と、外の少年メイド達の命は失われるが、覚悟の上だ。

 こんな近くまで、神獣デュフシを近づけた我々の失態であった。


 私が覚悟を決めて、その身をこわばらせた時、私の頭をテシテシと叩く者が居た。


「ゴニョゴニョコニョ」


 マスターであった。




 マスターが、私の頭を掴んで何かおっしゃっておられる。

 ……が、声が小さい。

 私は、マスターの口の側まで耳を近づけた。


「ゴニョゴニョゴニョ……」


「えっ? なになに、さっきのはデュフシではない、勘違いだ……え、どう言う事ですか?」


「ゴニョゴニョ……」


「気のせい…私が言うのだから間違いない……と、はあ」


「ゴニョゴニョゴニョ……」


「だから、最終奥義みたいなのは辞めてくれ……と、仰せられているのですね。はっ、仰せの通りに……ビィヨン、血界喰霧ブラッディストリームの詠唱を直ちに止めるのだ」


 ビィヨンが詠唱を止め、私に確認を求めた。


「……よろしいので?」


「よい、マスターのご命令だ、今すぐ止めろ」


「はっ」


 最終奥義血界喰霧ブラッディストリームの発動は回避された。

 だが、まだ危機が去ったと確信がもてないため、この場に居る全員がピリピリしている。

 私のアモン角も点滅発光したままだ。

 我々は、いつでも動けるように警戒をしながら整列をした。


「改めまして、マスター、我々は主様にお仕えするため、マスターをこの地へと召喚いたしました。なにとぞ我々の忠義をお受け取り下さい」


「ゴニョゴニョゴニョ」


 デビルズイヤー!


 私は、心の中でデビルズイヤーを唱えたが、無駄であった。

 声が小さい。

 しょうがないので、いそいそとマスターの顔元までにじり寄って、話しの内容を聞き取った。


「ゴニョゴニョゴニョ……」


「いえ、違います、降臨です。マスターの居た世界では、異世界召喚と言われるのですか」


「ゴニョーーーゴニョゴニョー」


「え、元の世界に戻れないのか……ですか? 無理です」


「ゴニョッゴニョ」


「いえ、ですから、無理な物は無理なんです」


「ゴニョゴニョォォォオ、ゴニョゴニョォオオオオオオ……」


「え? ニュウコウガアアアア、ニュウコウガアアア? 意味が分かりません」


 なぜマスターは、困っておられるのであろう?

 私にはサッパリだ。


「ゴニョゴニョ、ゴニョゴニョゴニョニョ」


「サークルに迷惑がかかる? はあ、そもそも心配する必要はありません、マスターは、すぐにオーマ世界全てを統べる王になられるのです。これから、我らがオーマ世界で心躍る素晴らしい生活が待っております、どうかご安心ください」


「ゴニョゴニョゴニョ……」


「いえ、終わってません、始まったばかりですが?」


 私が、マスターに丁寧なご説明を差し上げた。

 だが、マスターは、さっきからチラッチラッと後ろを気にしている。


 何を気にされているのだろうか?


 私は、マスターの気にされた方向を確認した。

 ドアだろうか?

 少し狭い金属製のドアが見える。

 もしかしたら、この部屋の出入り口かもしれない。

 私の視線に、マスターも気がついたようだ。


「……」


「はい? 後ろのドアは玄関ですか?」


「……」


「ええ、もう繋がってません。元の世界とは隔絶されてしまいました」


「……」


「ですから、終わってません、これから始まるのです」


 私は笑顔で答えた。

 だが、マスターは机に突っ伏して動かなくなってしまった。


 ……マスターは、混乱をなさっているのだろう。

 が、いずれオーマ世界全てを支配する王となる御方。

 早く現実を受け入れて貰いたい。

 我々は、マスターのために全力を尽くす所存なのですぞ。


 我々シモベ一同、マスターのお力になるため心を決めた時だった。


 ピンポーン


 謎の音が、部屋の中に響き、謎の声が聞こえてきた。


「ちわー、宅急便です。指定時間物のお荷物届けに来ましたー」



こんな感じで物語が始まるのだが、正直ここから先は色々ボロが出て怒られそうなので終わりです。

ごめんなさい。


おわり


明日また別の小説アップします。そちらもよろしくです

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セバスチャンは心配性 アリス&テレス @aliceandtelos

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