第3話
死んだ男は、テッドという奴隷商。秘書が差し入れた煙草が原因で部屋に火がつき、消すことができず、また、部屋から逃げ出すことが出来ずに死んだようだ。煙草を差し入れた秘書とそれを許した黒騎士団員に厳重注意がされたが、根本なことを言うと、煙草を許可している黒騎士団の体制自体がよくなかったと思う。
そんなことはあったが、事故による焼死として処理することが決まった。
黒騎士団詰所に怒鳴り込んでいた元奴隷達は、今度は野次馬として騒いでいる中で、ふと気になる人間がいた。俺が詰所に着いた時と入れ替えで出ていった出入り業者の一人が野次馬として戻ってきていたのだった。
火事の現場に犯人が戻ってくる心理は、防衛的露出行動として、心理学でも認められている行動らしい。犯人の心理になると現場に何かしら残していないかが常々不安になるようで、安心するために戻ってくるといった心理らしいが、今回気になった人物を含め、念のために鑑定眼を使っておくことにした。
結果から言うと、怪しいスキルは持っていたため、俺は、ミリアにその人物の調査をいらいする。並行して、過去視眼の先輩の奥さん(俺の元上司)に頼んで、スキルを使ってもらうことにした。
上司のスキルは、「魔眼」と呼ばれるもので、読んで字のごとく、魔法の痕跡が見えるというものだ。ただし、見える範囲は狭く、虫眼鏡で見ているようなレベルらしい。元の世界の指紋や声紋の様に、こちらでは魔法を使った形跡や残留魔力が魔紋と言われ、個人を特定する証拠に出来る。
元上司自体もテッドの死亡は不可解で、納得できていないため、事故か他殺か知るためにも眼を使ってくれた。
痕跡が残っていたのはテッドの死体の周辺にあり、おそらくテッドが煙草に火をつけるのに使ったであろう炎魔法の痕跡だろうと推測された。
もう一ヶ所、部屋の外側部分(普段、誰も使わないため、痕跡が残るわけがない場所)に誰かわからない痕跡があったのだった。ただし、その魔紋はジンが燃えた時の服の残骸物にも残っていたものと同じらしい。
そして、ミリアの方も調査を終えて、戻ってきた。気にかかったあいつはクリーニング屋さんらしく、現場に残っていた魔紋が一致したようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます