第5話 未完成
「柔らかく力強く 君を包める僕になりたい」
浜崎あゆみさんの『Sweet scar』のうっとりするようなメロディで脳をいっぱいにしながら身体を揺らして踊りを踊っていた。
そこは真っ白いカーテンが4つのベッドを仕切る病室。だけど、私以外はいない。
あれから2年、四半世紀を過ぎたわたしにもたらされた結果は「統合失調症」という診断名だった。
わたしは、保護入院という形で強制入院した。あれからバイトを2回転職しコンビニのバイトを1年続けた時のことだった。自分が強制入院させられるほど常軌を逸する狂気に満ちていたことは自分でも気が付いていた。わたしは入院を嫌がって看護師や医師に抗議したし、退院を訴えるための手続きもした。それは、自分が精神異常者という事実を受け入れられないという単純なことではない。娘の悩みを聞いてくれない愛せなくなり始めた親から逃れ生き延びる方法は、自立し自活できるようになる他は考えられなかった。だから、統合失調症という事実を安易に受け入れたら、わたしは永遠に親に支配されると思ったからだ。
26歳春、市民文化会館でダンスの発表会を控えた、物見し夢の夢の間に、
起きた出来事だった。
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