第27話 帰還と新しい家族

ーー 帰還そして・・次の旅へ



ゼスト王国の後始末を終えた僕は、エストレーナとゆっくり歩いてセンターターク王国を目指した。

「使徒様、この様に二人でゆっくり旅をするのも良いですね。」


と、エストレーナが僕に言う、僕は

「本当だね、理由がアレじゃなければ本当に良かったんだけでね。」

と言いつつ自宅までの旅を楽しむことにした。



国境を越えセンターターク王国内に入った森の中で、声を聞いた。

「誰か・・助けて・・ください・・。」

消え入りそうな小さな声を。



声のした方に歩きながら気配を探ると、一人の少女が何かを胸に抱いて大樹の空の中で、うずくまっているのが分かった。

大樹に着くと僕は、そっと声をかけた。

「僕を呼んだのは、君かい?どうしたんだ?」

と、すると少女は身体を起こし僕を見ると

「貴方が私の願いを聞いてくれるの?」

と尋ねるので


「君の願いはなんだい?」

と聞けば、胸に抱いていた毛玉の様な何かを差し出し

「この子を助けて」

と言った、それは小さなケットシーと呼ばれる猫型の妖精族の子供だった。


「怪我をしている様だね、僕にかしてごらん」

と受けとり、鑑定魔法で状態を確認すると


・ケットシー 女  10歳  毒による衰弱  頭部に裂傷


と表示された。


僕は、解毒魔法と回復魔法を使いケットシーを癒してゆく、

「もう大丈夫だよ、君もお腹空いているだろう?」

と言いながら、収納から温かい食事を取り出し少女の前に差し出すと

「ありがとう。」

と言いながら、食事を食べ始めた。


後はエストレーナに任せ僕は、少女が歩いてきた方向に少し確認してみることにした。



ーー 魔物を操る呪い



数キロほど森を進んだ僕は、ケットシー3体の死体を見つけた。

何も毒を飲まされ切り殺されていた、あのケットシーの仲間だろう。

土に穴を掘り、埋葬すると冥福を祈った、すると不思議なことが起こった。


ケットシーの霊体が3体現れこう言い出した、

「あの子を助けてくれてありがとうございます。

我らは呪いの力で魔物を操る一族です。

ゼスト王国の兵士に捕まり、あの子をを人質に無理やり

魔物にスタンピードを起こすように脅され、スタンピードを起こすと毒を飲まされ殺されたのです。

一緒にいる子は、以前からあの子と仲良くなった遊んでいたハーフエルの子で

傷ついたあの子を助けようとしていた良い子なんです、

二人をどうかよろしくおながいします。」

と言うと霊体達は、空に光りながら消えていった。


「こんなことまでしていたのか、あいつらは!」

向ける先のなくなった怒りに僕は、

「この様なことは二度と許さない」

と心に誓ったのだった。



少女の元に戻ると、エストレーナが

「これまでの経緯を聞いていました、使徒様の方は何かございましたか?」

と聞いてきたので、お互いの話を合わせるとほぼ間違いないことがわかりさらに、ケットシー一族はこの子以外居なくなった事が分かった。


少女については、ハーフエルと言うことで集落を追い出されこの森に流れ着いていたもので、身寄りはないと言う。


僕は、二人を僕の家族として迎えることにした。

「新しい家族だ、エストレーナはお姉さんとして面倒を見てくれよ。」

と声をかけると、満面の笑みで「勿論です。」と答えてくれた。


その日は、森で野営をし二人の体力が戻るのを待った。




ーー 新たな家族と旅をしよう



「君の名前は・・ミル、そして君は・・アーヤ。」

とケットシーとハーフエルフに名前をつけると、二人に光が降り注ぎ何らかの加護が付いたことがわかった。


「はい、ご主人様私の名はミルです。」

「はい、・・ご・主人様・私の名は・・アーヤ・・・ありがとうございます。」

と二人は言いハーフエルフのアーヤは、泣き出した。


彼女は、名前すら付けてもらえず、10歳になった年に追放されたそうだ。


天涯孤独になった二人に僕は、

「今日から僕らは家族だよ、僕はカムイお兄ちゃんだ。そしてお姉ちゃんはエストレーナと言うんだよ、良いね。」

と言うと頷く二人、僕らは家族になった。



その後、いろんな話をしながら僕らは旅を続けたのだった。



ーー 王都が見えてきた、初めての人族の街



2週間ほどかけて僕らはセンターターク王国の王都にたどり着いた。

「アレが僕らの家がある王都だよ。

美味しいものも沢山あるし、楽しいことも沢山あるあるはずだから

今日から一緒に暮らしながら見つけてゆくよ。」

と言いながら二人に手を引いて歩き出した。



王都に入り家に向かうと、多くの人族と街並みに二人は驚きの連続。

「使徒様、お帰りなさいませ。これ食べてください。」

「ありがとうございました、使徒様。」

「わー、可愛い。使徒様の新しい家族ですか?」

街中で人々に声をかけながら歩くと、アーヤが

「カムイお兄ちゃん、どうして使徒様と呼ばれるの?」

と聞いてきた、そこで僕は


「僕は創造神様に加護をいただいたんだ、だから皆んながそう呼ぶのさ。」

と答えると見えてきた自宅を指差し

「ここがお前達の新しい家だよ、部屋を決めようかね。」

と言いながら扉を開け中に誘った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る