第26話 審判の日

ーー  審判の日


ゼスト王国では混乱状態に陥っていた。

特に王家と高位の貴族の間で。


何故なら、センターターク王国に手を出して、失敗をしでかしたのだ。

しかも今回、魔物のスタンピードを起こし。それをセンターターク王国に向けてけしかけ、疲弊したところで、軍隊を出して占領しようと画策したのだ。


しかし、魔物数万を一人の男が殲滅し、我が王国に天罰を下すと言い放ち、期限を切って関係者を解放している。


その者は、以前マリンゴールド王国に攻め込もうとした際にも、計画を潰した「使徒」と呼ばれる若い男と言う。


その使徒と呼ばれる者は、規格外の魔法を使う男で、天変地異クラスの魔法を自在に使うと言われている。


この話を聞いた国王は、初め全く信じていなく今回の作戦にも、絶対の信頼を持っていたが、その結果がこうだ。


今回、魔物が全て討伐されなおかつ関係者が拘束され、ゼスト王国の関与がバレた。


ゼスト王国との関係がバレた以上、ゼスト王国としてどう対応するかが問題となっている。

もし噂通りの力を持っていたならば、ゼスト王国は滅亡するのを待つばかり。

と言うことになるため、一つは、軍備を強化して防衛をしようという者と。

一つは、こちらから攻め込み力ずくでセンターターク王国を占領しようと言う者。

もう一つは、第一王子が唱える、民を避難させ王家と高位貴族のみで戦うと言う案。

の3つがあり、どれにするかで揉めているのである。


最後の決断は、国王に委ねられた。

「その者が言った期限は3日後、攻め込むも時間が足りない。

 ならば防衛に徹しその後反撃を行う。

使徒と言ってもたかが一人の小僧、軍隊で対応すれば何するものぞ。

皆のもの、戦の準備じゃ!」


と激を飛ばして鼓舞した。


その姿を見た第一王子は、

「この国も、もう終わりの様だ。 少しでも民の命を助けるために避難に尽力しよう。」

と決意し、独自にセンターターク王国隣接の民から随時避難する様に、王都民にも同じように言い渡したが、信じる者はいなかった。


そして、期日の日が訪れた。



ゼスト王国王城を守る兵士は、総勢10万。

王城を取り囲む様に陣を敷き、邪魔な王都民は王都外に移動させていた。

朝日が昇るとセンターターク王国側から何かが飛んできた。


「報告します!南西方向から飛来する物あり、数は2体。」

との物見の報告、次第にはっきりとする報告。


「報告します!ドラゴンゾンビ1体と神獣と思われる雷鳥1体が接近中。」

「報告します!それぞれに人一人が背に乗っています。」

と言う報告の後は、聞くまでもなく目の前に現れていた。


弓矢で攻撃を試みるも遥か上空のため、矢が届かず手詰まり状態。


そこにドラゴンブレスが放たれた。

ドラゴンゾンビのブレスは、腐食攻撃のブレスで、人ならば干からびる様に命を失い、建物や武器なども触れればボロボロになって朽ちてゆく。


そこはもう戦いではなく、一方的な殲滅であった。


途中から逃げる兵士に、雷鳥が稲妻の攻撃を雨の如く打ち出し、30分もしないうちにゼスト王国の兵は大半が戦える状態でなくなった。


ボロボロになった、城壁と王城に使徒と思われる男の魔法が発動した。

空から無数の星が落ちてきたのだ。


「ドゴーン!ドゴーン!」


と地面に星が落ちて叩きつける音が鳴り響き、周囲には激しい地響きと土煙が舞い上がった。


音が消え、土煙が収まると、そこには王都の姿は無かった。

あるのは、ただ土塊だけで兵士の姿さえ分からないほどの変わり様だった。


その時、ゼスト王国はこの世から消し去られたのだった。

王都民を避難させていた、第一王子は、その廃墟を見て

「神に唾する者の最後とはこうも無惨なのか」

と呟いた。


その後、ゼスト王国跡地は、「神の直轄地」又は「神の怒りを受けた地」、と呼ばれ。


この地を治める者は、その後数百年現れなかったと言われている。

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