第5話 オアシーズの街

ーー カムイ 


あの村で井戸を掘った時に貴重な鉱石が沢山取れた。

村長は水のお礼にと全てをくれたが僕だけ得をした気がして少しばかり後ろめたかったので灌漑用水をセットで敷設しておいた。

この国は水さえ得ることができればとても裕福な国に生まれ変われると思う、王様にあったら山を削る事を真剣に話してみようかな。


ここから3日ほどの距離にそこそこ大きな街がある、交易で栄えている町だ。

そこもご多幸に漏れず雨が降らないが、オアシスがあるため街として栄え始めた歴史がある。


3日の後その町オアシーズに着くと街は寒々とした感じで寂れていた。宿泊先を探し街でも大きめの宿泊先を訪れた時に店主に聞いてみた。

 「旅をしながらこの街にきたんですが、ここは交易で栄えていると聞いてきたんですが人があまりいませんがどうかしました?」

と聞くと、

 「ええ、この街唯一のオアシスが干上がり始めたため人が離れ出したんです。」

と困り顔で話してくれた。


そこでオアシスを見に行くと、先日の村に作った灌漑用水用の泉位の大きさだがその半分も水は溜まっていない。濁りも見えるので湧き水が枯れ始めた可能性がある。

土魔法を働かせ地下の様子を調べるとこの泉の水は、深さ100mほどの岩盤が割れて水が湧き出していることが判ったがその岩盤が何かの原因で塞がれつつあるようだ。

さらに地中深くを探査してみると地下300mの所付近に大きな地下水脈が見つかった。


次の日僕はこの町の教会に立ち寄ると神父に話を聞いた。昨日の宿屋の主人と同じような話であり、町中が節水しながら暮らしていると言う。

そこで新たな水脈まで井戸を掘り泉を豊かにすることができると話すと。そんなことが可能なんですか?と急に真剣に詰め寄るのでこの先に村でも同じ事をして来ましたのでと話すと

 「その話は本当だったんですね。昨日その村から来た者がそう言う話を領主様にして帰ったと言う事で事実確認に人をやったと聞いたばかりなんです。」

と話をし、それが本当なら町長と領主様を呼んでくるので「改めてお話ししてくださいませんか」とお願いするので了承すると6日後にと日取りを決めて来た。

しばらく時間ができたのでこの街で病人などの治療をしながら待っていると事件が起きたのです。


ーー 砂漠の魔物 サンドスネークの襲来 ー


この世界には魔法と共に魔物が存在する。砂漠の国サハラ王国でもそのことは同じ、ここで多いのが毒系の蛇と蜘蛛やサソリと言った虫系の魔物で巨大化するのが特徴である。

神父に会った2日後、街の南の砂漠からサンドスネークの群れが襲来して来たと情報が流れると、兵士や冒険者が集まり始め緊張が街を包み始めた。

僕は召喚魔法で空の神獣「雷鳥」を呼び出し様子を見に行かせた。

僕と神獣の間には魔法的なつながりがあるため雷鳥の見たものがそのまま僕の頭に映像として映し出される。


街から南1km程のところにサンドスネークの群れが街を目指して進んでくるのが見えて来たその数50ほど、サンドスネークは長さ10mから30mほどの大蛇で毒を持つ厄介な魔物であるが意外とその肉は美味しい。


兵士の数はおよそ200冒険者は150ほどこの数では、サンドスネークの群れには少なすぎる。

教会の神父が宿を訪ねて来て

 「使徒様にはお願いがありまして来ました。既にお聞きと思いますが魔物の群れがこの街に向かって来ておりこの街の兵士と冒険者では心許ない状況です。できますなれば聖騎士のお力添えをお願いできませんでしょうか。」

と協力を願い出て来たものだった。

すると聖騎士のエストレーナが

 「カムイ様、貴方様のそばを離れて街の防衛に助力することにご許可をお願いします。」

と頭を下げ頼み込んだので

 「エストレーナ、当然なことです。でもね一つだけ間違えています。僕から離れるのではなく僕の横で討伐するのです。」

と答えると暫く理解できなかったようだが

 「カムイ様も防衛に出られるので?」

と思わず呟くので

 「防衛?違います討伐のため先頭に立つのです。」

と言い切ると

 「ええ!それは危険では・・」

とあわてるエストレーナを抑え、神父に対し

 「安心して良いですよ、僕の力の一端をお見せしましょう。」

と言ってスタスタと宿を出て街の南側に歩いて向かった。後からエストレーナがついて来た。


街の南側の防壁に着くと街から約200m程のとこまでサンドスネークの群れがきており、先行の防衛力の約200ほどの混成部隊が魔物と戦い始めた。

サンドスネークはその巨体に似合わず、砂に潜ったり素早く移動しながら毒のブレスを吐くため、あっという間に防衛線を食い破られていた。このままではこの街の防壁も1日も持たずに食い破られる可能性がある。

最前線を見に来ていた町長とその隣の貴族、多分ここの領主であろうが心配そうに成り行きを見ている。魔物が街まであと100m先まで迫って来たところで僕が魔法を行使する。


使う魔法は水と氷魔法、当然魔物たちは砂の中に逃げることが予想されるので事前に周りの砂の下を固い石で固めている。

突然の水に砂に潜って逃げようとするが地面が硬く潜れないそこに氷魔法で一面を凍らせる。

サンドスネークは体温が下がると身動きができなくなる、半分氷漬けの状態の数十匹のサンドスネークの頭を聖騎士エストレーナが剣で切り裂いてゆく。

5分もしないうちに50ほどのサンドスネークの屍の山ができたところで僕は街中に戻る。


ーー オアシーズの街を所領する領主ドランクス伯爵 ー


冒険者ギルドからもたされた情報は耳を疑うものだった。

砂漠の魔物サンドスネークの群れがこのオアシーズの街に向かっていると言う。

その数50ほど、普段サンドスネークは群を作らないのに50もの数が襲ってはこの街は滅びてしまうのも時間の問題である。

この街の兵士は200、冒険者は150ほどこれでは災害級の事案には対処できないしかも逃げる時間さえない。

第一防衛隊として混成部隊を布陣してみたがあっという間に突き破られ、まさにこの街の命運も尽きたかと思ったその時。何処からか大量の水魔法がサンドスネークの群れに降りかかった。

水を苦手とするサンドスネークらは砂の中に逃げようとするが、何故かもぐれないそこに大規模な氷魔法が発動しサンドスネークの群れの動きが止まる。

すると1人の聖騎士が城壁から飛び出してサンドスネークの頭を次々に切り裂き討伐してゆきあっという間にサンドスネークの屍の山に変わった。


この街は助かったのだと分かった瞬間私はその場に座り込んでしまっていた。

するとそばにいた町長が

 「あれは、使徒様に付いている聖騎士様だ」

と興奮したようにわたしに話しかけて来た。

そこに教会の神父が現れサンドスネークの屍を見ながら

 「使徒様は奇跡をふるわれた様ですね」

と呟いたのを耳にし

 「神父よそれはどう言うことだ、これは今この街に訪れている使徒様の身技というのか?」

と問い詰めると神父は頷くと

 「先程、魔物の群れがこの街に向かっているとお伝えしたところ「使徒様」は先頭に立ち討伐しますとこちらに向かわれたのです。」

と言うではないか。それでは先ほどの大規模な魔法は「使徒様」と呼ばれる者の奇跡の行使なのか。

この街を守れたことよりも災害級の魔物の急襲を何でもない様に僅かな時間と人数で消し去る「使徒様」に恐怖を感じていた。


ーー 冒険者ギルド キルド長 爆炎のカーガイル ー


この街も不幸が続きそして災害急の魔物で終わるのか。赤竜の革鎧を着込みながら俺は職員に指示を出す。

 「いいか、多分この街はサンドスネークの群れが直撃すれば1日持たずして滅ぶ。北門を解放し住民を避難させたのち門を閉め魔物をここに封じ込めて少しでも時間を稼ぐのが俺らの最後の仕事だ。最後まで生き残れよ。」

手早く手配させ住民を送り出した俺は南の城壁へと急ぐ。途中で12・3歳ほどの少年とすれ違う呑気な顔で街中を歩いている、

 「お前!早く逃げねえか。」

と怒鳴りつけると

 「逃げる必要はないよ、魔物は討伐済みだから」

と言いながらニコニコしながら歩き続ける少年、「まさか」と思いつつも足を早めて城壁に登るとそこからサンドスネークの群れの屍の山が見えた。

 「何が起こったんだ!」

思わず近くにいた兵士に聞くと

 「女神の奇跡です。」

と言いながら神に祈りを始めた、さらに近くに領主の姿を見つけ慌てて近付き

 「領主様これは誰が・・・」

と屍の山を指差したところでサンドスネークにトドメを刺していた聖騎士の格好の騎士1人が歩いて街中に向かうのが見えた。

 「まさかあの聖騎士が1人で・・いやいくら何でも無理だ。」

と思わず呟き領主を見ると

 「ギルマスよ、この街は救われた様だ。見ていたワシでも信じられない光景であった。」

と言いながら城壁から降りていった。


 「凄かったですよ、魔法でサンドスネークの群れを足留めすると氷魔法で動きを止めその後は聖騎士様が首を跳ね落として終わりでした。」

と町長が興奮した様子で討伐の様子を教えてくれた。

俺は直ぐに近くの冒険者に、街の住民を呼び戻すことと怪我人の収容を命じた。


ーー 冒険者ギルド近くの救護施設で ー


魔物の防衛に当たった200ほどの兵士と冒険者には少なからずの怪我人が出ていた。死者は出ていないが重症なものも多く別の意味で戦場の様な状況であった。

そこに1人の少年が現れ次々に怪我人を治してゆく、怪我人らはさっきまで死にかけていたものまで何事もなかった様に怪我が消え信じられない風に自分の体を確かめている。

全ての怪我人が治ると少年は何処かに立ち去っていった。

すると誰からでもなく

 「女神様有難うございます。」

と祈る声と姿が広がってゆく、一面祈りの会場となり静けさがその場を覆う。

そこに戻って来たギルマスが

 「怪我人たちは何処へやった?」

と職員に尋ねていく

 「怪我人はここにいるもので全てですが」

答える職員にギルマスが

 「死にかかった奴やかたわになった者が少なからずいただろうが!」

イライラした様に問い詰めるが職員は同じことを繰り返す

 「ですから、ここにいる者がその怪我人です。さっき少年が治していったんです。」

と答える

 「少年!」

思い当たったのかギルマスは、ギルド内に入っていった。

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